芥川賞受賞作。
自動販売機の管理会社で、に三十歳の誕生日に離婚をしようとしている主人公と、仕事の相棒であるバツイチ女(もうすぐ昔振った男と再婚する)の絡みを描いた話でした。
離婚とか再婚とか、確かに緊張させられますが、よくある話過ぎるし、自動販売機の管理の仕事も特にこれと言って驚かされることがなかったので、文章がうまいだけの本という感じでした。
同時収録の『安定期つれずれ』は、禁煙パイポで禁煙に挑む定年後のオヤジと、妊娠して夫を置いて実家に帰ってきた娘とのやり取りをえがいていました。こっちは、この作者は自分より年下なのに、定年後の夫婦の描写などリアルだと思いましたし、心情的にもよく書けているので不思議なくらいでした。
これらの作品の底辺に流れているのは、人間は自然に成長していくものだという気持ちのような気がします。
誰の世話になるわけでもないのに、少しずつ成長していく過程を静かに描くのは、小説として最低限の使命をとくとくと果たしているようで、読後感は爽やかです。