坊っちゃん文学賞受賞作。
坊っちゃん文学賞と言えば、松山市が主催する地方文学賞の最高峰ですね。
しかし、役場が主催しているので、それが出版社が本にすることは稀です。
新潮文庫が収録したからには、かなりのレベルが期待できます。
読んでみたら、期待以上の出来でした。
著者が高校三年生の時に書いた『魚のように』と『花盗人』の2本が収録されており、どちらも心地よい緊張感のある時間を描いています。
田舎町から出たことがなく、人生経験も知識としての材料も乏しい中で、大人も十分に楽しめる作品を書けるとは末恐ろしい才能だったと考えられます。
ネタがないと嘆いているクリエイターは、日々の観察が足りないだけだと証明している作品です。