前作、『時間は存在しない』につづく量子力学最先端の本です。
前作より哲学的でわかりづらく感じましたが、もはや、物理学は哲学を補完するための学問であるということが分かりました。
天才物理学者と言われる著者ですが、哲学や文学の素養も十分で、古今東西のそれらを引用しながら、量子物理学を解説してくれます。
観察する者とされる者、つまり二つのものがあり、それによってすべては存在することになるというのです。
一つのものとして存在することはない。色即是空であるというのが量子力学。
例えば、時速5キロで歩いている人は、地面との関係で時速5kmであるけど、地球の自転を考えれば秒速400mくらいで移動しています。さらに太陽の周りを秒速20kmで回っていて、銀河の中心から見れば……
というように、速度も見る者が違えばすべて違って見えてきます。
前作の『時間は存在しない』では、地球の中心に近い足元の方が、頭より時間の過ぎる速さが遅いと指摘されていました。
この世に確かなものはなく、関係性がなければすべては空なのです。
普通に生きていく限り、考える必要もない量子力学ですが、これを知ってしまうと、小さなことは気にしない、大きなことも気にしないメンタルになれそうです。