英雄伝は軍事に関係するものがほとんどでしょう。
この本は幕末に生きた勘定奉行 川路聖謨の文官の生き様を描いて言います。
文官とて、人生をかけて戦っていることには変わり有りません。
一歩間違えば、植民地となり果てる日本の現状に、ロシアやアメリカとの交渉を一歩も引かずやりとげる丹力とはどこからでてくるのか。
頭脳と機転と体力もさることながら、人への尊敬や感謝、激論を交わしながら駆け引きをする相手との友情など、複雑な人間関係を受け止め流す力が求められるのです。
自分との闘い、真の謙虚さとは何か、教えられる書となります。
吉村昭は、武人より文官、外科医より内科医に焦点を当てた作品が多くあります。地味で時間はかかりますが、普通の人には、こちらの方が役立つのではないでしょうか。