むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『人はなぜ戦争をするのか』フロイト (光文社古典新訳文庫)

2022年08月26日 | 読書
『戦争における「人殺し」の心理学』を読んだときに、フロイトの2大欲動論が出てきたので、確か学生時代によく読んでいた本に出てきたと懐かしく思えて、その手の本を読んでみました。
本書は、アインシュタイン(相対性理論の人)が、人類が戦争の災厄から逃れられる方法は無いか精神分析学からのアプローチを望んだ書簡への返答からはじまります。
人が自己破壊的な戦争に走るのは、人間には元々、自己を破壊しようとする欲動があるのではないかと言うのがフロイトの考えです。
人間(その他の生物も含む)は、元に戻ろうとする欲動(怪我や病気の状態から健康な状態へ戻ろうとする欲動)が確かにあります。生きようとする欲動です。
それがあるなら、さらに元に戻ろうとする欲動もあるのではないでしょうか。
つまり、有機物である我々には、無機物に戻ろうとする欲動が無意識の底の底にあるはずなのです。
つまり、それが死の欲動であると言うのです。
人間は、死の欲動と生の欲動とのバランスの上で、正常に生きていられるわけで、何らかの自体でバランスが崩れると死へ向かって行こうとするのです。
この死の欲動の存在を否定する心理学者も多くいますが、存在を肯定することで助かる人々もいることも確かなのです。
そうなると、戦争の災厄から逃れる術はないように感じますが、人の知恵とそこから育まれる教育に一部の望みを託すしかないのかもしれません。
これは、未だ答えの出ない問いであり、人類の産んだ物理学と精神分析学の2大天才がタッグしても、抽象的な概念から抜け出せない難しい課題でもあるのです。


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