『星のない男』(55)
最近、植草甚一さんが監督のキング・ビダーについて書いた一文を読み、カーク・ダグラス主演の『ガンヒルの決斗』(59)を再見したことも重なって、この映画を再見してみた。
ある町の牧場で働くことになった流れ者のデンプシー(ダグラス)と弟分のジェフ(ウィリアム・キャンベル)が、公共の牧草地をめぐる争いに巻き込まれていくさまを描いた西部劇。カークが、バンジョー片手に歌を披露し、曲芸まがいのガンプレーまで見せる。
前半は、ビダーが余裕たっぷりで撮ったような感じで、喜劇調のところもあり、こちらも楽しく見られるのだが、その調子が最後まで続かないのが残念。
これは、極度に有刺鉄線を嫌うデンプシーの神経症的な性格を強調する半面、彼と対を成すべきジーン・クレイン演じる女牧場主の性格描写が中途半端で、荒くれ男たちの間で体を張って生きる彼女の存在が生きてこない人物描写のバランスの悪さに原因があると思われる。(サービスの入浴シーンは別として)。
それ故、リチャード・ブーンのいかにもの敵役や、クレア・トレバー十八番の、酸いも甘いも噛み分けた酒場女という、脇役の方が際立って見えてしまうところがあるのだ。ただ、汽車を使って放浪するホーボーや、土地をめぐる有刺鉄線の存在を知るという意味では興味深い一作ではある。
パンフレット(55・日本映画宣伝社)の主な内容
解説・物語・スタア・アルバム(カーク・ダグラス、ジーン・クレイン、クレア・トレヴァ)・フランス通信
パンフレット(55・外国映画社)の主な内容
解説/この映画の監督キング・ヴィダー/物語/キング・ヴィダーの印象/カーク・ダグラス/ジーン・クレイン/クレア・トレヴァー/作品目録