田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『大いなる別れ』

2019-05-28 17:43:11 | 映画いろいろ
『大いなる別れ』(47)(1980.8.29.日劇文化)



 インターナショナルプロモーションによって、製作から33年たって初公開されたハンフリー・ボガート主演作。監督はジョン・クロムウェル。失踪した戦友の行方を捜していた復員兵のリップ(ボガート)は、友がかつて殺人罪で告発されていたことを知り、事件に巻き込まれていく、という推理仕立てのハードボイルド劇だが、時折ユーモラスな描写も見られる。

 またもや、ボギーお得意の、キザをそれと感じさせない独特の雰囲気に魅せられた。共演のリザベス・スコット(初めて知った)もなかなか魅力的だった。ボギーのマッチの擦り方も印象に残ったが、『カサブランカ』(42)同様、しゃれたセリフも決まる。

「女は黙って美しく」「あんな女に惚れたら夏に雪が降る」「俺はハードボイルドだからな」…。

 原題の「Dead Reckoning=デッド・レコニング」の意味を調べてみたら「相対的自己位置推定法」とあった。つまり「船や自動車などが、スピード、方向、距離などを総合して、自分の位置を知るための方法」なんだそうである。この映画の場合は主人公自身の位置確認のことを指すのかな。

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『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』

2019-05-28 08:12:58 | 映画いろいろ
『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』(11)(2012.4.21.MOVIX亀有)



 ジョージ・クルーニーの監督・出演作で、民主党の大統領予備選を舞台にした“シドニー・ルメット風”のポリティカル(政治)フィクション。トランプ大統領来日に合わせての放送か。

 胸に理想と野望を掲げ、有力候補となったペンシルベニア知事(クルーニー)の広報官として働く若者(ライアン・ゴズリング)を主人公に、彼が直面する政治の現実と、裏切りや愛憎が渦巻く人間関係をスリリングなタッチで描く。ゴズリングの変貌ぶりが見もの。両陣営の選挙参謀役のフィリップ・シーモア・ホフマンとポール・ジアマッティがさすがにうまいところを見せる。

 邦題の“スーパー・チューズデー”とは、米大統領選挙に向けて、複数の州でその予備選が同時開催される日を指すが、原題は「THE IDES OF MARCH」とある。何かと思って調べてみたら、「3月15日に気をつけろ」というジュリアス・シーザー暗殺にまつわる故事に由来するという。つまり、映画で描かれるさまざまな政治がらみの策略を、シーザー暗殺のそれになぞらえたわけだ。
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『アラジン』

2019-05-28 06:09:54 | 新作映画を見てみた


 「千夜一夜物語」の「アラジンと魔法のランプ」を原案に、自分の居場所を探す貧しい青年アラジンと、自由に憧れる王女ジャスミン、そしてランプの魔人ジー二―の運命を描いたディズニーのアニメーション映画『アラジン』(92)が27年ぶりに実写映画化された。アラジン役にメナ・マスード、ジャスミン役にナオミ・スコット。

 興味は、実写化した甲斐があるものに仕上がっているのか? アクション系のガイ・リッチー監督の手腕は? ジーニー役をアニメ版のロビン・ウィリアムズに代わってウィル・スミスが演じたが…といったところにあった。
 
 結果、CGを多用した派手なアクションと魔術の描写、エキゾチックなロケーションにリッチー監督らしさが感じられてなかなか面白く仕上がっていた。また、本来はラッパーでもあるスミスが歌う「フレンド・ライク・ミー」は、さすがに乗りがいい。というよりも、アニメ版のウィリアムズが目立ち過ぎて、主役のアラジンとジャスミンがすっかりかすんでいたのと同様に、今回もスミスの独壇場になっていた。

 アラン・メンケン作曲の挿入歌の配列は「ア・ホール・ニュー・ワールド」をはじめ、オリジナルと変わりはないが、今回はジャスミン(スコット)が歌う新曲「スピーチレス」が追加された。

そして「王は男でなくともよい」「女性にとって結婚が最良の方法ではない」というニュアンスを含んだこの曲にこそ、オリジナルのアニメ版から27年という歳月を経た故の、女性の生き方の変化が象徴されている。いわばこの曲が今回の核なのだ。
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