ナチス占領下のパリで、劇場の地下に隠れ住むユダヤ人の夫を持つ女優(カトリーフ・ドヌーブ)を中心に、演劇の灯を守る人々の生活を描く。フランソワ・トリュフォー監督のこの映画の面白さは、ドヌーブが“女優”を演じているところと、地下の夫と地上の妻、地上の妻と若い俳優(ジェラール・ドパルデュー)、そして舞台上で2人が演じる恋人役という、三つの関係が互いに影響を与えながら、同時進行していく多重構造にある。
これは、同じくトリュフォーが『アメリカの夜』(73)で、現実のスタッフやキャストの姿を追いながら、劇中映画 『パメラを紹介します』が出来上がっていく様子を描いたのと通じるものがある。