田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『終電車』

2019-05-16 16:41:50 | 映画いろいろ
『終電車』(80)(1986.9.17.)



 ナチス占領下のパリで、劇場の地下に隠れ住むユダヤ人の夫を持つ女優(カトリーフ・ドヌーブ)を中心に、演劇の灯を守る人々の生活を描く。フランソワ・トリュフォー監督のこの映画の面白さは、ドヌーブが“女優”を演じているところと、地下の夫と地上の妻、地上の妻と若い俳優(ジェラール・ドパルデュー)、そして舞台上で2人が演じる恋人役という、三つの関係が互いに影響を与えながら、同時進行していく多重構造にある。

 これは、同じくトリュフォーが『アメリカの夜』(73)で、現実のスタッフやキャストの姿を追いながら、劇中映画 『パメラを紹介します』が出来上がっていく様子を描いたのと通じるものがある。
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声優口演『キートンの探偵学入門』

2019-05-16 13:56:50 | 雄二旅日記



 取材で訪れた六本木ミッドタウンで、羽佐間道夫さんらの声優口演『キートンの探偵学入門』(24)のポスターを見つけた。
https://mouvement.jp/series/2019/05/07/39778/

 「声優口演」は10年ほど前(2007.10.30.)に一度見たことがある。その時のメモを。

 先ごろ、ポール・ニューマンの吹き替えについてのインタビューをさせていただいたご縁で、渋谷オーチャードホールに羽佐間道夫さんプロデュースの「声優口演」を見に行った。サイレント映画であるチャップリンの『犬の生活』(1918)『キートンの探偵学入門』に羽佐間さんたちが声をあてるというもの。映画の前に山下洋輔カルテットの生演奏(『私のお気に入り』『五つの銅貨』『スターダスト』など)があった。

 映画の方は声優さんたちの力量のすごさをあらためて思い知らされた。今回気が付いたのは、チャップリンとキートンの違いは、共演者たちとの交わり方、というか生かし方にあるということ。チャップリンは相手の芸も利用して自分を引き立てるのだが、キートンは一人で浮いていて孤独な感じがする。まあどちらもすごいんだけど。

 

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『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』

2019-05-16 08:58:28 | 仕事いろいろ

 昨日の「歴史秘話ヒストリア」は「五・一五事件 チャップリン暗殺計画」と題して、チャップリンと日本人秘書の高野虎市との関係を描いていた。



 高野さんについては、20年ほど前に『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』(毎日新聞社刊)というムック本を編集した際に、実際に彼と会ったことがある淀川先生からたっぷりと話を聞くことができた。淀川先生はチャップリンと高野さんの関係を「夫婦みたいなもの」とし、高野さんがポーレット・ゴダードの浪費癖に怒って秘書を辞めた裏には「嫉妬があったのかもしれんね」と推理していた。

 『~チャップリンのすべて』は、『20世紀の大スター100撰』『20世紀 世界のアイドルスター100撰』『20世紀映画のすべて 淀川長治の証言』に続く第4弾。淀川先生に思い切りチャップリンのことを語っていただき、それをこちらが原稿としてまとめるという、楽しくもなかなか骨の折れる仕事だったが、これがシリーズ最終作となった。今となってはその経験は貴重な財産になっている。

 チャップリンと高野さんと五・一五事件については、『チャップリンを撃て』(日下圭介)と『五月十五日のチャップリン』(川田武)が、推理小説の形を借りて詳細に描いている。



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