田中雄二の「映画の王様」

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『嘆きの天使』

2019-05-23 07:19:32 | 映画いろいろ
『嘆きの天使』(30)(1981.12.2.東急名画座)



 『モロッコ』(30)『間諜X27』(31)はテレビで見たが、マレーネ・ディートリッヒの出演映画をスクリーンで見たのは今回が初めてのこと。そして、スクリーンに映し出されたモノクロのディートリッヒは実に美しかった。否、美しいというよりも、そこには魔性を感じさせる妖しい魅力があった。いわゆるファムファタール(運命の女)というやつで、まさにこの映画にはぴったりだった。

 厳格な教師(エミール・ヤニングス)が若い踊り子に惚れて、奈落の底まで落ちていくというスキャンダラスな話に加えて、自慢の脚線美を強調する網タイツ姿のディートリッヒがすさまじい。これが30年代に作られていたとは驚きである。

 この映画は、ディートリッヒが監督のジョセフ・フォンスタンバーグとともに、ドイツ時代に撮ったものだが、なるほどこの後、ハリウッドに招かれただけのことはあると感じさせられた。今、80年代を生きる二十歳そこそこの俺が見てもそう感じるのだから、製作当時にこの映画を見た人々にとっては、ショッキングですらあったのではないかと推察する。

 そして、たとえ、この映画を現代流にアレンジしてリメークしたとしても、決してオリジナルを超えることはできないだろう。あの時代、ディートリッヒ、モノクロ画面があってこその『嘆きの天使』なのだから。名作と呼ばれる映画は、作られた時代を象徴しながら、同時に年月を越えて現代にも響くものを持っているのだ。
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