『天井桟敷の人々』(45)(1981.12.1.スバル座)
入場料金が半額になる、年に一度の映画の日にマルセル・カルネ監督の『天井桟敷の人々』を再見。以前、NHKで放送された時は「犯罪大通り」と「白い男」の前後編として2週にわたって放送されたので、全体のイメージが散漫になったところがあったのだが、この3時間余りの大作は、やはり映画館で満員の観客と一緒に、時に笑いながら、あるいは感動しながら見るべきものであった。
1820年代、パリの犯罪大通りを舞台に、女芸人ガランス(アルレッティ)と、彼女を取り巻く俳優のフレデリック(ピエール・ブラッスール)、伯爵(ルイ・サルー)、白塗り芸人のバチスト(ジャン・ルイ・バロー)の関係に焦点を当てながら物語は進んでいく。
まず、戦時中に作られたにもかかわらず、そのスケールの大きさに目を見張らされる。そして、多彩な登場人物を配して、芸術を志す者に愛を絡めて描く魅力的なストーリー、時折見られるユーモア、バローの見事なパントマイム、対照的な女の魅力を発散するアルレッティとマリア・カザレス…。
カルネの確かな演出、ジャック・プレベールの見事な脚本、優れた映像、美術、音楽、演技の総合体として、芸術の頂点の一つのに達した映画がここにあるという感じがした。
再見の上に立ち見で、おまけに予定もあったので、前半だけ見て帰るつもりでいたのに、見事に引き込まれ、結局予定を変えて最後まで見てしまった。
【今の一言】この映画は、今見たらもっと心にしみるかもしれない、という気がする。見直してみるかな。