みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

村上春樹「東京奇譚集」も面白く

2005年11月09日 | 
村上春樹「東京奇譚集」、読んでしまった。変てこな事件が起こる5話の短編。前口上が巧みで、話に引き込まれる。
村上さんの湿り気のない独特な文体、時折現れるユニーク比喩や機の効いたアフォリズム、そういう魅力は本作でも健在。5話の中では「偶然の旅人」が一番好きかな。

一応、強引にピアノ的に紹介するならば、5話のうち2話に、ピアノ登場。
(・腕のいいゲイの調律師、・楽譜は読めないけれど、どんな曲でも耳コピできるピアニスト)

「偶然の旅人」は心理学?で言うところの共時性がテーマで、遠藤周作が不思議な現象について、あれこれ書いていた新聞のコラム「万華鏡」も思い出す。
自分は、虫が知らせるとか、海外旅行先で幼馴染に再会するとか、そういう不思議な体験はないので、オカルト的なことを肯定も否定もしないのだけど、まぁ、よくわからない宙ぶらりんなものがある方が、健全でいられるんじゃないかなぁ・・・。

あと旧作で大好きな短編「蜂蜜パイ」と同じ登場人物で語られる話もあって(村上さん、心憎いなぁ)、そちらも読み返してみたくなる。

気に入った一言(「偶然の旅人」の調律師さんの一言)は、

「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、かたちのないものを選べ。」

コメント
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