
国道9号線を山口県から島根県に入るとほどなく朱色の大鳥居が迎えてくれる。その鳥居をくぐり坂道を下りると、そこは山陰の小京都ともいわれる津和野の町だ。
中国山地の小さな盆地、津和野は1年を通じて霧が深く、谷間から流れる濃い霧の中に包まれ、ロマンティックな雰囲気が漂う町、とネットで紹介されている。
町に踏み入れて目につく、そして誰もが知っている朱色のたたずまい、高台に建つ太鼓谷稲成、通称「津和野のおいなりさん」は有名で年間を通して訪れる人が絶えないという。
1773年、ときの藩主亀井矩貞によって建立された。一般的には稲荷のなりは「荷」と書くが、津和野は「成」と書く。願望成就の意からなったといわれ、日本で1つ、ここだけという。
大きな注連縄をくぐる。願望成就を信じなにやら祈る前期高齢者の仲間はいつになく真剣、これが本当の姿かも知れない。
この前参拝したのはいつか思い出せない。境内から見下ろす赤い瓦屋根の続く街並みは変わっていなかった。遠くに見える山口線をSLが走ることを期待したがこの日は運休日とか、無計画な行楽だからとあきらめる。
霧雨模様の日和に負けず各人それぞれがデジカメを思い思いに使い「市美展」用の作品作りに挑戦、沈黙のときがしばらく続く。訪れた目的のひとつでもあった。傑作が撮れたとは誰も言わない。
昼食は津和野駅構内が見える客席20あまりの小さな和食店で「いろいろ蕎麦」を食べる。具沢山な和蕎麦はなかなかの物だった。
(写真:稲成境内から見た街並みと霧雨にかすむ大鳥居)