「教えさせてもらう」という鉛筆の書き込みを橙色の楕円が2重3重に囲んでいるパソコン講座の古いテキストが出てきた。
パソコンの利用を普及させるボランティアの会に入会し、いつかは講師をやりたい、と思いながら講座サポートを続けていた。半年を越えてしばらくして「講師をやってもらいます」と役員さんから指名を受ける。
先ず初心者向け内容の2講座を担当する。自分なりの進行方法と話の内容を準備、講座リハーサルで講師適性チェックを受けた。こうして向かえた初回のテキストに心構えを書き、橙色の丸印をつけたことを思い出した。
あれから数多くの講座を担当した。講師ということに慣れたためか、受講者のアンケートで「ここは直そう」と思うことはあるが、格別の感慨を抱くことは少なくなっていた。古いテキストは「初心忘れるべからず」という言葉を思い出させた。
「初心忘れるべからず」とは「常に志した時の意気込みと謙虚さを持って事に当たらねばならない」また「学び始めた当時の未熟さや経験を忘れてはならない」(広辞苑)と諭す。
テキストの余白にはびっしりと話すことをメモ書きしている。慣れもあって最近はメモが少ない。心しているつもりでも「慣れ」に浸たっているぞ、と古いテキストが諭してくれた。ファイルしているテキストのトップに置き換え反省の糧にしよう。
(写真:初回講師のテキスト)