
濃霧注意報が今朝の早い時間に出ていた。ウオーキング時間、濃い霧のせいもありいつもより街灯の明るさが目立つ。小雨も混じり傘をさすと弱い雨音がする。シャツはすぐにしっとり。今朝は皆さんお休みか、ひとりも出会わない。ドラマなら何か起きそうな場面設定だ。もう少しで家に帰りつくころ。
どこからか「うぉー」という「悲しそうで、うめく」そんな弱い声が途切れ途切れに聞こえる。見回すと歩道橋へ上る階段の中ほどで、欄干にもたれかかった人の姿が見える。が、すぐに崩れ落ちたように見えなくなった。5時を回ったころ。酒酔いかと思ったが、何か感じが違う。そばの交番はパトロール中で不在。
歩道橋の下へ駆け寄った。階段の上り口に女物の靴が揃えて置いてある。「もしや」、急いで駆け上り「どうしました」と声をかけた。階段にうずくまるようにしていた人が驚いたように顔を上げた。まだ若い。「大丈夫です」と立ち上がり、素足で靴とは反対側の階段を急いで下りた。逃げるように感じた。ジーンズの膝から下はずぶ濡れ。「靴は」と声をかけたら「置いています」と靴の方へ回っていった。
これだけの、ほんの数分にも満たない歩道橋で起きた顛末。声と足どりは普通に感じたが、顔を上げたときの「我に返ったような驚き」は普通ではない、そんなことを思いながら残りの道を急いだ。
(写真:霧にかすむ錦帯橋畔のホテル)