
雨上がりの山裾の小道を歩いていた。ただ歩くのではなく、茂った雑草の中になにか珍しいものはないかと探しながら歩く。名前を知らない小さな花が咲いている。白い蝶々がそんな花に次々と止まっては飛んでいく。そこに少し大きな蝶々がきたら逃げるように飛び去った。なにかがあるのだろう。
覆い重なるように茂った雑草が広がっているところに、ぽっかりした空間があった。不思議に思い覗いた。赤い色の小さな玉が空間の奥に広がっているのが見える。久しぶりにみる野いちご、正しければ草イチゴという種類とは子どものころの記憶。周囲の雑草に囲まれ人目につかず繁殖したのだろう。
子どもの頃にはアルミの弁当箱と鎌をもちとりに出かけた。遊び範囲の山や川土手、畑のほとりなど申し継がれて知っている場所では必ずとれた。とり終わると野いちごの入った弁当箱を回し、とりたてを食べながらしゃべったことを思い出す。その頃は気づきもしなかったが、そんな遊び行為も今でいう絆に連なっていたのかも知れない。
見えるそれはあまりに幼すぎる。写真だけ撮って実はとらずにそこを離れた。それにしてもかなりの株が育ちかけている。人目につかないように、雑草を少し折り曲げておいた。