国道のほとりの刈り取られた雑草の片付けをしていた。その手元に、風に吹かれて小さな丸まった木の葉がころころ転がってきた。よく見ると木の葉でなくミノムシの巣だった。道の向こう側に立っている木の枝から落ちたのだろうが、どんなアクシデントに遇ったのだろう。風に運ばれて畑の広がるこちらに渡ってきた。よく車につぶされなかったものだ。
ミノムシ(蓑虫)について知っていること。小さな枯れ枝や枯れ葉を固めて袋のような巣に住んでいる。枝からぶら下がっていて、虫と呼ぶのは蛾の幼虫。巣は強固にできており、それを引き裂くのは子どもの力では無理だった。その強固さを生かして手持ち袋が作られていた。漢字で蓑を使っていることから、雨具のそれに似ているところからついたのだろう。
巣の全長は4センチくらい。見ていると巣から頭部が出てきた。辺りを伺うようにじっとしている。少しすると前進を始めた。その方法は、初めに頭の3倍ほどの体が巣から出る。次に、首をすぼめるように見えるしぐさをすると巣が前に進み、初めに出した体の部分が隠れる。それを繰り返し進んでいく。
どこを目指して進んでいくのか蓑虫自身も分からないままの前進だろう。それでも懸命に首をすくめる仕草、「一寸の虫にも五分の魂」という侮れない意地のあるところ目にし、小さな感動を覚えた。日照のアスファルトは暑かろうと勝手に思い、そっと巣をつかみ木立の影に移した。さて、木の枝にぶら下がることが出来たのだろうか。