
日頃はその仕事ぶりを見られることもなく蓋を被せられた地中の箱の中にいる。2カ月に1度、その仕事ぶりを確認に年配の男性が訪れる。蓋を明け成果を打ち打ち込む。そのわずか数秒の間だけ外の明るさをわずかに感じる。パタン、閉じられると次の2カ月はまた闇の世界になる。
自然災害や時には人間様の都合で私の仕事が絶たれるとどこからか給水車が来て並ぶ。空気と同じように使われているが、このときばかりは水のありがたさを再認識する、と話す声が聞こえる。そう、各家庭で使われるお水は、私の中を通り過ぎなければ使うことは出来ない。水の門番であり関所役をつかさどる水道メーターです。
規則があって私は定期的に交換されるという。使用量を正確に計測し間違いない使用料をいただくための交換という。そのときがやってきた。蓋が開けられた。見上げると私を取り替えるのは背の高い感じのいい青年。この家の主が交換作業を見ている。主が「交換は何年おき」と聞いたら「7年です」と青年、手を休めず答える。
埋もれた部分の土を取り除く。前後のジョイントを緩め私を取り外す。交代の新品さんを取り付けて作業は終わり。その間、わずか数分。取り外された私は作業車の荷台へ。そこには何十個もの仲間が休んでいた。
それこそ日の当たらないところで、昼夜の区別なく、幾つもの歯車を間違いなく噛み合わせての水番、7年間、何の点検もされなかったことは勤めを全うしたことになる。メーカーさんで調整され再登板となったら嬉しいのだが。