
仲間は11万とも12万とも聞かされているが、動けない私らは向こう三軒両隣くらいのそれしか知らないので全体は分からない。動いてみたくても動けない。そこで訪れる人らの会話から仲間の様子を知るしかない。
3月になると私らの住む場所の手入れが始まる。綺麗に区画され苗が植えられる。水が引き込まれると開花へ向けて仲間同士で競いあう。仲間の種類を示す立て札が何十本も立つ。桜が終わると咲き始める。6月になると私らの祭り「菖蒲まつり」があった。
あれほど多くの人に愛でられた仲間も役目を終え、立ち姿で休んでいる。向こうの隅のほうでは来年への準備か、株がなくなっている。いま、広い菖蒲園に3輪だけ咲いている。この暑さ、いつまで耐えれるだろう。
公園の奥には日本庭園式に植えられた仲間がいるという。そちらも人らの話で知るだけで見たことは無い。訪ねてみたいが動けない。このところの雨でタップリの水を蓄えているが、まもなく干され来年の準備が始まるだろう。たった3輪になったが、ひょいと菖蒲池を思い出し、見下ろしてくれる人の目に触れれば嬉しい。梅雨明けはまだだ。