「去勢抵抗性前立腺がん」というのは、前立腺がんが悪化した状態で今のところ、最終的には治す方法がないとされている。
その治療法として現在、最も効果的と評価されているのが、日本では認められておらず海外で実施されている「PSMA治療」。
西郷輝彦氏が今回オーストラリアに渡って、その治療を受けているらしいと報道されている。
その「PSMA治療」について、昨年2月、私が行った東京女子医大の医師は「ドイツやオーストラリアでは認められている治療法」で効果は今のところ一番良いとみられる旨を説明してくれた。ただ、日本は「5年から10年後には認められるだろう」というレベルの悠長さの日本の医療制度。
昨年10月末、私が受けた名古屋大学病院でのセカンドオピニオンでも、医師は「(同療法を受けるため)3人、オーストラリアに行った」との話だった。では、その人のその後はと尋ねると、「?」・・・・
昨年11月初め、私が受けた京都大学病院でのセカンドオピニオンでも、医師は「オーストラリアに行った人を3人知っている」との話だった。では、その人のその後はと尋ねると、「?」・・・・
なぜ、「?」なのか。
日本の標準療法で治療が終わったら、あとは、悪化していくのを待つだけ、緩和医療ということになる。それはダメと、海外での「PSMA治療」に出かける人がいる。
ただ、これら総合病院は、「標準療法」を施した後の患者が、「独自の判断で別のところで治療を受ける」ことを知ることはできても、自分たちの元を離れた患者が、その後どのようになったかという結果については本人が報告に来てくれない限り知ることができない。
他方で、「独自の判断で別のところで治療を受ける」人は、もう、そこを見限っているので、結果を伝える関係にはなく、裏返しとして、医師は結果を知り得る関係にはない、そういうことなんだと私は受けとめた。
ともかく、ある放射線科医も、「PSMA治療」は学会でとても有効な方法ということで話題になっている、との旨だった。
その画期的な治療のことは2018年の共同通信なポピュラーな報道でも採り上げられている。今年の日経でも。
今日は、そのあたりを見ておく。
●転移前立腺がんに新戦略 PSMA標的 同じ仕組みで検査と治療/共同 2019.9.24
●ドセタキセル既治療のmCRPCにPSMAを標的とする177Lu-PSMA-617が有望な抗腫瘍効果/日経 2021/02/13
なお、オーストラリアではルテチウムという核種のほか、アクチニウムという核種を用いたPSMA標的治療も行われていて、厳密には、西郷氏がどちらを行っているのかは、報道では不明。いずれにしても、後日、その両方の素材のことも見ておくことにする。
なお、昨日5月17日の私のブログへのアクセスは「閲覧数1,806 訪問者数1,048」。
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●転移前立腺がんに新戦略 PSMA標的 同じ仕組みで検査と治療
共同 2019.9.24 (共同通信 由藤庸二郎)
前立腺がんは比較的進行がゆっくりで治療の選択肢も幅広い。ただ、根治を目指しても再発や転移が生じる場合がある。そんな再発、転移した前立腺がんを、放射性物質と結び付けた薬剤を利用して探し出し、さらに同じ仕組みを利用してたたく「PSMA標的診断・治療」の開発が進んでいる。海外で検査の有用性が報告され、延命効果があるとした研究もあり、専門家の関心は高い。患者団体は日本でも早期実現をと期待している。
▽PSMA標的
京都大病院放射線部の中本裕士准教授(核医学)は「従来の検査では前立腺がんの転移巣が見つけにくいことが課題」と話す。
広く普及しているエックス線によるコンピューター断層撮影(CT)検査や、骨の代謝の激しい箇所を見つけて転移を診断する骨シンチグラフィーなどは鋭敏さに限界があり、転移を診断できないことも多かった。
腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)が上昇してもがんが見つからなければ、適切な治療選択は難しい。「これに対してPSMAを標的とする方法は、がんそのものを明瞭に捉えられるので診断治療に有望だ」と中本さんは言う。
PSMAは、ほとんどの前立腺がんでがんの表面に特に多く現れるタンパク質。検査では、京大薬学部で開発したPSMAに結び付く薬剤に、放射性物質「フッ素18」を結合させ、静脈から投与。薬剤とともに再発、転移したがんに集まった薬剤からの放射線を、陽電子放射断層撮影装置(PET)で捉えてがんの有無、箇所を診断する。
骨転移した前立腺がんの診断画像。矢印の先にある病巣が、CT画像(左)では見えないが、PSMAを標的にしたPET画像(右)では光って見える(京都大提供)
▽実用化へ研究
中本さんらは今年2月、この検査の有効性を確かめる臨床研究を開始。PSAの上昇などで再発や転移が疑われる患者にこの検査をして、従来の方法では不明瞭だったがんを捉えられるかどうかを検証中だ(現在、患者募集は中断している)。
実用化すれば、進行度や病巣の大きさ、箇所などがより正確に分かり、放射線治療の範囲を絞り込んだり、特に深刻な箇所だけ手術したりすることも可能になるという。
同様の診断法の研究は北海道大、筑波大などでも独自の薬剤と放射性物質で進められている。
▽学会でも話題
この検査の仕組みは、理論的には治療にも使える。検査でがんが写るのは、表面にPSMAが多く現れている証拠。放射性物質を検査とは違う種類に取り換えれば、物質が発する放射線によってがん細胞を攻撃することができるはずだからだ。
泌尿器科医で馬車道さくらクリニック(横浜市)の車英俊院長はこの方法の治療への利用に強い関心を寄せる。「放射性物質ルテチウム177などを使って、この治療法の安全性と有効性を実際に患者に投与して確かめる研究が各国で進んでいる。延命効果が報告され、国際学会ではこの治療法にテーマを絞った討議の場が設けられるほど、注目度は高い」と話す。
大手製薬会社などが主導し、この治療法の臨床試験も最終段階まで進んでいる。車さんは、治療研究に取り組む海外の医療機関の情報を患者に紹介しているが、「最終的には日本でも世界に後れを取らずにこの治療ができるようになることが目標だ」と話している。
前立腺がん患者団体「腺友倶楽部」の武内務理事長は、患者の立場から「腫瘍マーカーが上昇し再発が疑われても、がんを特定できなければ具体的な治療法が見えてこない。PSMAを標的とした検査と治療の早期実現を願う声は大きい。専門医と協力して、こうした声を国にも届けたい」と話している。
●ドセタキセル既治療のmCRPCにPSMAを標的とする177Lu-PSMA-617が有望な抗腫瘍効果【ASCO GU 2021】
日経 2021/02/13 森下紀代美=医学ライター
転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)でドセタキセルによる治療歴がある患者に対し、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とする177Lu-PSMA-617(LuPSMA)は、カバジタキセルと比べて、PSA値を50%以上低下する効果に加え、無増悪生存期間(PFS)、奏効率でも優れることが、フェーズ2のランダム化比較試験TheraP(ANZUP 1603)の最新解析から示された。LuPSMAではグレード3または4の有害事象の発現は少なく、患者報告アウトカムも良好だった。
2月11日から13日にVirtual形式で開催されている2021 Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU 2021)で、オーストラリアPeter MacCallum Cancer CentreのMichael S Hofman氏が発表した。
LuPSMAは、PSMAを標的とする放射線標識された低分子治療薬。TheraP試験の対象は、ドセタキセルによる治療歴があり、PSA値が上昇し20ng/mL以上となったmCRPC患者だった。主要評価項目であるPSA値の50%以上の低下は、LuPSMAを投与した群の66%、カバジタキセルを投与した群の37%で得られたことが報告されている(Michael Hofman, et al. ASCO 2020 Abstract No.5500)。
今回は、事前に定められたPFSのイベントの発生が170件に到達した時点において、その他の臨床的な評価項目と患者報告アウトカムの解析結果が報告された。
試験では、mCRPCで、68Ga-PSMA-11とFDG PET/CTでPSMAの高発現を認め、FDG陽性/PSMA陰性の部位がない患者を、LuPSMA 6-8.5GBqを6週毎に6サイクルまで投与する群(LuPSMA群)、またはカバジタキセル20mgを3週毎に10サイクルまで投与する群(カバジタキセル群)に、1対1でランダムに割り付けた。試験には291人が登録され、最終的にLuPSMA群99人、カバジタキセル群101人となった。
副次的評価項目には、有害事象、PSA/画像診断による無増悪生存期間(PFS)、奏効率(RECISTv1.1)、患者報告アウトカムによる疼痛への効果、健康関連QOL、全生存期間(OS)が含まれた。解析は、PFSのイベントが170件発生後と事前に定められており、データカットオフ日は2020年7月20日だった。LuPSMA群、カバジタキセル群の患者背景に偏りはなかった。患者の年齢中央値は72歳、91%はエンザルタミドまたはアビラテロンによる治療歴があった。
観察期間中央値18.4カ月の時点におけるPFS率は、カバジタキセル群と比べてLuPSMA群で有意に改善した。PFSのイベントは173件発生し、1年PFS率はLuPSMA群19%(95%信頼区間:12-27)、カバジタキセル群3%(95%信頼区間:1-9)、ハザード比0.63(95%信頼区間:0.46-0.86)、p=0.0028となった。PFS中央値は、LuPSMA群5.1カ月(95%信頼区間:3.4-5.7)、カバジタキセル群5.1カ月(95%信頼区間:2.8-6.0)で同様だった。
rPFS、PSA無増悪生存期間(PSA-PFS)のハザード比は同様となり、rPFSのハザード比は0.64(95%信頼区間:0.46-0.88、p=0.007)、PSA-PFSのハザード比は0.60(95%信頼区間:0.44-0.83、p=0.002)となった。
測定可能病変を有する78人において、奏効率はLuPSMA群(37人)49%(95%信頼区間:33-65)、カバジタキセル群(41人)24%(95%信頼区間:11-38)となった。
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