tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

涙が星に変わるとき

2019-08-26 22:05:45 | プチ放浪 山道編

キルギスには一風変わった結婚の形態がある。「略奪婚」。
誘拐した女性を男性の家族一族で説得し、結婚の合意を得るものだ。男女が出会う機会が少ない遊牧生活で発達した形態なのかもしれない。
女性への説得が成功するかしないか、これには男性の事前の気配りと根回しが必要なことは言うまでもない。
なんどか女性と接触し、ある程度、女性の気持ちを確かめた上で「略奪」に踏み出す。別の視点からみれば、日本の「駆け落ち」としても違和感はない。
あくまでも、結婚を承諾するかは女性の意思。それでも女性に受け入れられる確立は高かったという。事前のじっくりとした気配りと根回しが成功の鍵だ。

ところが、時代の進展に伴って男性たちは気ぜわになって来た。じっくりと気配りと根回しをという流暢なことができなくなってきた。
事前の気配りや根回しが無い、いきなりの「誘拐」は単なる「略奪」。
文化も伝統もない立派な犯罪だ。

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「涙が星に変わるとき」は、ガイドに薦められたキルギスで生まれ育った人気作家チンギスアイトマートフの恋愛小説。
美しい村の少女とキルギスの実直な2人の男たちの物語だ。一つの過ちから、雪崩を打って崩れ去る幸福。
男たちの深い気持ちを受け止め、やがて寄り添う。母なる大地ガイアのような、やさしく愛情に満ちた女性。

男性の視点で書かれたラブストーリーがことごとくそうであるように、この小説もまた女性の心の動きは詳細には分からない。
謎のままにしておくからこそ、人生ははかなくももろく、そして面白いのかもしれない。





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