津和野町旧日原町堤田の小高い一画に、高く枝を広げて聳える「大元神社跡の樟」。
島根県の巨木としては屈指の太さを誇り、環境庁「日本の巨樹・巨木林 中国・四国版」によれば《樹高 31m・目通り幹囲 12.5m・推定樹齢 約460年》現地案内に「クスノキからは薬品や昔は合成樹脂の原料として使われた「樟脳」がとれることから、この木も戦時中に切断して利用されることになりました。しかし、地元住民らの活動により天然記念物の指定を受けることで伐採を免れたという経緯があります。」
村が出来た時から人々の営みを見守って来た樟。かってこの楠の根元に幣帛を立てて祀っていた名残を伝える物は、神の依り代とされる鳥居のみ。
この地に鎮座されていた大元神社が、明治期における神社の合祀によって他に還坐された後、御神木であった楠だけがこの地に残されました。後に国の政策で伐採の危機にあった時、村人たちはお上に訴えて「天然記念物」の認定を受ける事でこの御神木を護りぬきました。
「天然記念物」碑に刻まれた「大元神社樟」。台座には「大樟に ならへ村人 この力」
そうして・・・誰が納めたのか一対の陶器の狛犬。阿形さんはすでに壊れた陶器の欠片になっていましたが、吽形さんはまだしっかりとかっての神域を護っておいでです。
例え片足になってしまっても、神獣の矜持を失っていないお顔に心を打たれました。
二つの樟は互いを求めあい寄り添って、一つの巨木になりました。鳥居の向こうに見えるのは、愛しいものを守ろうとする雄々しい姿、その優しさに応えようとする嫋やかに美しい姿。
その根元に抱かれていると夫婦木でないのが不思議なほど・・優しい気に包まれるのです。
高く高く、天を衝いて聳える大樟。この日のこの姿を知る者がいなくなっても、百年・二百年・・千年の後までも、ここに在って人の営みを見守って欲しい。
訪問日:2019年4月17日
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