tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本郵政、資金の海外運用へ

2016年04月25日 12時10分50秒 | 経済
日本郵政、資金の海外運用へ
 日本郵政が、海外での資金運用を拡大するという報道がありました(朝日新聞、朝刊、4月22日)。何か危惧していたことが、来そうだな、といった感じを受けました。

 日本郵政は郵便貯金や簡易保険で300兆円ほどの資金を持っているとのことですが、これを高利回りで運用することで、収益を稼ぎ出そうということのようです。
 これまでの運用先は半分近くが国債だったようですが、日銀のマイナス金利政策で、国債利回りが急低下してこれは大変ということになったのでしょう。

 前社長の西室氏は実業の出身で、郵便事業に力を入れたようですが、現社長は金融出身ですからそういうことになるのでしょうか。
 郵便事業はゆうパックの黒字化は不可能と読んだのでしょうか、民間の宅配便は元気ですが、官営以来の特権を持っても競争力はないようです。

 それなら金融で稼ごうという経営方針も解らないではありませんが、厚生労働省所管のGPIFの実績を見ても解りますように、マネーマーケットでカネを稼ぐことは 容易ではありませんし、あまり 望ましいことでもありません

 GPIFの資金量が130兆円ほどですから、日本郵政が、持つ資金量のどれ程をマネー市場、さらには国際金融マーケットで運用するかにもよりますが、いずれにしても巨大な金額です。

 もともと郵政と年金(国営)の資金は、大蔵省の「資金運用部」資金となり、国策として発展させるべき部門への「財政投融資」という形で運用されることになっていました。
 いわば、国策として日本として必要な部門への投資に官製の資金の流れを作り、インフラなどを中心に日本経済社会の発展を支える役割を担っていたということでしょう。

 こうした部門は、ご承知のように順次民営化され、その資金も民間が運用することになってきたのが現実の動きです。

 これについては当初から、2種類の見方、1つは、もう計画経済の時代ではないのだから、経済の発展は民間の力でやるべきだという見方と、もう1つは、この日本政府が管理する巨大資金を国際金融マーケットに開放して、国際投機資本の仲間に組み込もうという企みに動かされているという2つの見方があったようでした。

 どちらが真実に近いかわかりませんが、郵政としては、こうした見方は兎も角、巨大資金という力を生かして、国際金融市場で稼げればいいといいうことなのでしょう。ならば、問題は稼ぐ能力があるかどうかです。

 前記報道でも、郵貯の社長は、海外のほうが高リスクだが、利回りが良い、海外の非上場企業に投資するファンド、海外不動産ファンド、海外株式、などなどへの投資も検討という意向のようですが、日本国内ではこうした海外の資金運用で儲けたという話はあまり聞きません。

 何時も書いていますように、オリジナルな情報を持っているのは 胴元の国際投機資本でしょう。日本のファンドは、歴史が浅いのか、ノーハウがないのか、真面目すぎるのか、いまだに提灯をつける役割のようです。

 リーマンブラザースのように胴元でも破綻することもあります。こうした市場に真面目にコツコツ働く日本人の財産が出ていくとは、どう考えてもあまり賛成できることではありません。失敗すれば大変なこと、たとえ儲けても、日本人は「あぶく銭で生活する」ことには何か後ろめたさを感じるでしょう。

 本来ならば、日本人の貯蓄は、日本の経済成長に投資し、日本の経済成長からリターンを得て、安定した将来への結果を期待すべきでしょう。海外の経済発展に参加してそこからの収益を期待するのであれば、海外直接投資やアジア開銀などを活用すればいいのです。

 庶民としては、結果がどう出るかを見ているしかありませんが、何か、マネーマーケット全盛の悪しき風潮に、日本も次第に流され、真面目な日本人らしさが失われることを恐れるような、そうした不安を助長する報道でした。