tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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日本の国際収支の構造変化:貿易収支

2018年09月23日 11時42分52秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:貿易収支
 安倍さんは日米首脳会談に向けて出発しました。さて、トランプさんは、対日貿易赤字についてどんなことを言うのでしょうか。
 昨2017年のアメリカの貿易赤字は7962億ドル(約86兆8千億円)で、半分は中国、2位はメキシコ、3位が日本で、対日貿易赤字は前年比横ばいの688億ドル(7.7兆円)でした。

 この辺りの帰趨は首脳会談の結果を待つとして、ここでの課題は、輸出立国と言われて日本の貿易収支は、長い目で見るとどんな状況かという事です。

 結論から先に言ってしまいますと、日本の貿易収支は大幅黒字の時期から、収支均衡程度の段階にだんだん近づいているようです。
 グラフで見てみますと、こんな状況です。
貿易収支の長期推移(財務省「国際収支統計」:単位億円)


 平成19年度(2007年度)まではコンスタントに大幅黒字を維持していますが、2008年のリーマンショックで状況は大きく変わったようです。世界金融危機かという事で世界経済は委縮し、日本の輸出入とも大幅に減りました。しかし何とか黒字です。ところが23年度(2011年度)からは一転して赤字になります。

 赤字の理由は皆様疾うにご承知と思いますが、$1=¥120→¥80という円高です。これでは輸出競争力喪失の産業が多くなり、輸出不振と同時に、工場の海外移転が急速に進められた結果です。コストがドル換算で5割増しになった日本で生産して輸出してもペイしないという状況変化の結果です。

 この状況は平成27年度(2015年度)まで続きます。その後はご存知の日銀の政策転換、2発の黒田バズーカで$1=¥120に戻り、黒字を回復します。
 しかし見て頂くとお解りの様に、黒字幅はぐっと小さくなっています。リーマン・ショックの円高で、製造業の海外移転が大きく進んだ結果が明瞭に出ているという事でしょう。

 今も、日本企業の海外企業の買収、向上の海外建設が盛んです。機械受注統計でも現状 内需と外需は拮抗しており、商社経由などを勘案すれば、外需の方が増えている可能性は否定出来ません。

 これは何を意味するのでしょうか。つまり、日本の製造現場の海外移転が進んでいることの反映です。
 海外移転が進めば、日本の貿易黒字は漸減することになります。このプロセスがリーマンショック後の円高を通じて一段階進んだと理解できましょう。懸念を込めて言えば、今のアメリカの貿易赤字体質の方向に次第に進んでいく可能性もあるという事です。

 しかし、日本の経常収支は年間20兆円もの大幅黒字ではないかというのも事実です。
 この問題は、第一次資本収支、つまり海外から受け取る配当金や利息収入の増加によるところが大きいわけで、次回、その点の具体的な数字を追ってみたいと思います。