2024年春闘で、最も関心の高いのは、何と言っても賃上げについての労使双方の見解です。連合の定昇込み5%以上、経団連の昨年以上の賃上げが望ましい、といった基本路線はすでに取り上げていますが、組合サイドでは金属労協の1万円、基幹労連12000円など産別レベルではかなり高めの要求基準も出ています。春闘リーダー格の全トヨタ労連はこのところこうした平均数字の発表はしていないようです。
経団連は十倉会長が賃上げは持続的でなければならないという持論を披歴され、2024年については、昨春闘の経団連集計3.9%を意識しつつ4%以上といった発言もされている様です。
厚労省の昨春闘の集計は3.6%ですが、今春闘のエコノミストや経済研究機関の予想は3.8%から3.9%辺りに集中しているようで、マスコミもこれで長いデフレからの脱出が可能にといった論調のようです。
春闘キックオフ前の段階で、2024年春闘賃上げの見通しはかなり絞られてきているようですが、そうした中で岸田総理は、近く政労使会議を開催するという意向を示されたようです。
安倍政権以来、政府が春闘に介入するというのは日本の常識になっているようですが、これは極めて異常なことで、それを黙認している企業労使も、その代表組織も、領空侵犯に対して寛容過ぎるのではないでしょうか。
政労使会議を開くことはいいことですが、春闘の時期にだけやるというのは、賃上げに影響を与えたい、結果が政府の意に沿ったものであれば、自分の功名にして、票につなげたいという意識が見え見えです。
それも偶々賃上げをした方が良いという条件が揃っているからで、これが賃上げ抑制だったら多分介入はしないでしょう。
政労使会議といった大事なものは得点稼ぎにやるのではなく、嘗ての産労懇の様に、経済活動のプレイヤーである労使との十分なコミュニケーションのために必要と考えて定期的に行う真剣さが必要です。
些か八つ当たりのきらいもありますが、人気取りに走る政権に、「主役は我々だ、我々が決めるのだ」と毅然と言えるというのが権威ある労使の見識でしょう。
企業の労使なら労使で自分たちの企業をいかにより良い企業にするか、労使のナショナルセンターであれば、日本の経済社会をより豊かで快適なものにするかを常に真剣に考え、その考えを世に問い、その共通の目標の実現のために、徹底議論し意見の一致を実践するというのが戦後培ってきた日本的労使関係の極意だったのではないでしょうか。(そうした意識の経営者もマスコミ上で散見されることは喜ばしい事です)
繰り返して書いていますように、政府はプレイヤーではなくレフェリーなのです。近く行われる政労使会議でも、三者が、対等の立場で、日本経済活性化のために役立つ有用な知見の真剣な展開を行い、労使のより効果的な賃金決定活動に役立つようなコンセンサスに近づく成果を期待したいと思っています。