tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

最低賃金、今年も5%の引き上げに

2024年07月24日 13時59分34秒 | 労働問題

最低賃金に引き上げは毎年、7月の暑い時期に中央最低賃金審議会で引き上げの「目安」を決め、それを参考にして、各県の最低賃金審議会が県別の最低賃金をきめ、10月から実施という事になっています。

現在審議中の上記の「目安」は、現状の全国平均1004円を1054円に50円引き上げるという形で進められているようです。

中央、地方の最低賃金審議会ともメンバーは公労使の三者構成ですが、大体は事務局の厚労省(政府)の意向で決まるようです。

アベノミクス以来政府は最低賃金の大幅な引き上げにご執心で、このところは毎年5%を目標にしていて、2030年代半ばには時給1500円が目標と言っています。

日本の最低賃金は国際的に見ても大変低いといわれますが、かつてはアメリカよりも、かなり高い時期もありました。

なんでそんなことになるのかと言いますと円レートのせいで、アメリカの連邦最低賃金は現在7.25ドルですから、円レートが110円なら798円で日本の方が高いのです。アメリカで一番高いカリフォルニアやニューヨークは16ドルですから現状の154円を掛ければ2464円です。これは高いですね

円安だからと最低賃金を上げて、円高になったら下げるというわけにはいかないので、日本は日本経済の実力なりの最低賃金を決めるしかないわけです。

その意味で厚労省は10年後1500円という目標を置いているのでしょうが、毎年5%上げると10年後には1600円を越えます。それを1500円としても、政府の今後6年間実質成長率1%以上という経済成長目標では大分コスト高になるわけです。

政府はどう算段するのか解りませんが、国民所得が1%ほどしか増えないのに最低賃金を毎年5%も上げるという事は、そのために所得の高い部門から最低賃金に関わる部門に原資(富)を移転させなければならないのです。

今、政府はそれを賃金コストの価格転嫁で実現しようとしているのですが、今春闘の中の議論でも知られますように、なかなかうまくいきません。日銀「短観」で見ても大企業の大幅増益と、中小企業の収益改善の遅々という姿は歴然です。最低賃金は法律で強制されますが、価格転嫁は任意・交渉が現実です。

もともと最低賃金法というのは賃金格差の拡大を防ぐために生まれたものですから、その背後には格差拡大は社会正義に反するという倫理観がなければ成立しません。

戦後の日本企業では、収益や付加価値の増加は労使あるいは顧客も入れた三者で均等分配しようといった真面目な考えもありましたが、今、配当の高率化、高所得の経営者が急増する中で、倫理観を前提にした政策の枠組みは機能しません。

今の政権党である自民党にこんなことを言っても、政治家自身が、自分のところに税金かからない金を持ってくることに専念するばかりですから詮方ないといいうのが国民の気持ちでしょう。

ならば労使に、現実に社会経済活動を担当する当事者として、社会正義の意識、経済社会における倫理観を求めたいと思うのですが、残念ながら今の日本では難しいようです。

今はただ「神(紙)頼み」で、わたくしのお財布には、未だお見えになっていない「論語と算盤」の渋沢栄一先輩にお願いしようと思っていますが、どうでしょうか。


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