tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業物価指数は9月 9.7%上昇、過去最高

2022年10月14日 14時55分31秒 | 経済
今日日銀から9月の企業物価指数が発表になり、アメリカでは、日本時間の昨晩、9月分の消費者物価が発表になりました。

折しもワシントンではG20が今日閉幕。ここでは黒田日銀総裁と鈴木財務大臣がそれぞれ日本の円安についいての意見を開陳、政府と日銀の考え方の相違がはっきりしました。

そんなことも含めて今日は企業物価について出来れば明日はアメリカの消費者物価について、見ていきたいと思います。

ところで、黒田総裁の考えというのは、日銀は輸入品の値上がりがなくても円安にならなくても2%インフレになるような経済が望ましいと考えているので、そうなるまで異次元金融緩和は続けますというものです。

鈴木財務大臣の考えは、円安になって日本経済は大迷惑だから、これ以上の円安にならないように為替介入をするつもりだ、というものです。

両方とも理屈は正しいのですが、それなら協力して上手くやる方法はあるなと思うのですが(例えば、政策金利を引き上げて、労使に5%程度の賃上げを要請する)、そういう政府・日銀・労・使の話し合いはいようとしないところに問題が在るようです。

仕方がないので、このブログでは、産業内がどう対応したらいいかをその都度考えるようにすることにしました。

今回は企業物価が1年前に比べて9.7%上がって史上最高で大変だという事ですが。前回も大まかに分析しましたが、これでは未だ輸入価格上昇が国内価格に十分転嫁されていないらしいというところでした。

主要3物価指数の推移

    資料:日本銀行、総務省(消費者物価指数9月分は東京都区部) 
図のように、輸入価格が上がり始めた2021年の1月から見ますと輸入価格は83.9%上がっていますが企業物価は15.4%しか上がっていません。
前回見ましたように20%ぐらい上ってもいいように思いますが、未だ国内価格に転嫁しきれていないようです。

逆に輸出関連産業の方では円安の分差益が出ていますから、そしてそれはたまたま円安で儲かったのですから、輸入関連の値上がりを受け入れる余裕は出来ているのです。
円安という現象の結果、輸入部門は自動的に損し、輸出部門は自動的に得するというおかしなことを国内価格に転嫁という形で、「価格機構」の働きで消すようにすべきです。

勿論消費者物価(図では3.1%)も上がります。労使という立場でいえば、労働への分配つまり賃金の引き上げ(賃金への転嫁)も入ってくるはずです。

そういうふうに円安による損得を輸入関連部門と輸出関連部門、企業部門と労働部門に合理的に分配すれば、円安が特に問題になることはなくなります。

勿論計算して正確に分けることには限界がありますから、価格機構(労使関係を含む)を出来るだけ公正に働かせることが大事でしょう。(価格機構を無視して政府が補助金を出すのは最悪)

これが出来れば、アメリカやヨ―ロッパのように便乗値上げ・便乗賃上げでインフレを急激なものにすることはありません。
かつて第2次石油危機で日本がやり、その後オランダでワッセナー合意があったことを記憶の方もいらっしゃると思います。
これは価格機構を労使、あるいは政労使の合意で巧く活用した端的な成功例でしょう。

円安に慌てる政府、動かない日銀、さてどうする?

2022年10月13日 16時05分11秒 | 経済
アメリカが政策金利の大幅引き上げ(0.75%)を3回やる一方、日銀は異次元金融緩和を当分続けますと明言する中で、円安の進行に慌てた政府はドル売り円買いの為替介入に踏み切った9月23日のこのブログで「どうなってるの」と書きました。

介入は史上最高の3兆円規模とか言われましたが、市場も一瞬驚いたのでしょう145円台になっていた円レートが140円台まで円高になりましたが、1日過ぎると144円台に戻ったようです。

為替介入は「良くない事」というのは世界の常識です。幸い、アメリカもEUもこの度は「怪しからん」とは言わなかったようですが、国際投機資本はもそう何回もできないだろうと読んで、昨日にはまた145円台後半の円安になっています。

もともと、アメリカやEUの中央銀行が、インフレ抑制のために政策金利を上げたのが原因の円安ですから、日本も少しインフレになりましたと公定歩合を上げれば済むことでしょうが、日銀は動きません。

この辺りが、政府と日銀が了解のもとでやっている事か、意見が対立しているのかは解りません。マスコミは対立しているように書いている所もあります。

政府と日銀の関係は別にして、今のような場合、一体どうすれば最も合理的なのかという事をやっぱり考えておかなければならないのではないかという気がします。

問題は、日銀が、「2%のインフレ・ターゲットという目標が達成されていないのだから、達成させるまでは異次元金融緩和を続ける」と言っている事を手掛かりに考えてみますと、こんなことになるのではないでしょうか。

金利政策の役割は多目的です。マイルドインフレを起こすためにゼロ金利という政策もあるでしょう。黒田総裁ご自身がやったように為替レートを動かすためにも使えます。また、今のアメリカやEUのようにインフレを抑えるためにも勿論使えるわけです。

今の日本の場合は、海外の物価高が輸入インフレという形で入って来ています。
これまでは日本全体の雰囲気として国内製品への価格転嫁が行われにくい雰囲気があり、利益圧縮、賃金抑制などの形で輸入関連産業を中心に為替差損が皺寄せされ、国内経済活動の不活発の要因になっていました。

今起きている物価上昇の動きはアベノミクス以来のこうした現象の鬱積の反動でしょう。欧米のような行過ぎた便乗値上げ、便乗賃上げは起きないでしょうが、多少は行き過ぎる可能性も無きにしも非ずです。

その予防のための金融引き締めはあってしかるべきでしょう。
嘗ての経験で言いますと第2次石油危機の時、値上げも賃上げもほぼ合理性の範囲で、欧米のスタグフレーション化をしり目に、日本経済は安定成長を堅持し欧米を驚かせました。しかしその折も日銀は短期ですが公定歩合をきちんと引き上げています。

その伝でいけば、今、輸入インフレの予防行動としてゼロ金利をプラスにという是正には合理性があります。
同時にそれは永続的な円安防止策となり、輸入部門に差損が滞留、輸出部門に差益が蓄積という所得構造の不均等化の是正につながり、経済全体の安定に寄与するはずです。

更に適切な程度の賃金上昇が労使で合意されれば、インフレ・ターゲットの目標に近づくことも可能でしょう。

先ず政府は今迄の補助金政策をやめて、輸入原材料価格上昇の国内製品価格への合理的な転嫁を奨励すべきでしょう。財政には大きなプラスでしょう。物価の番人の日銀は便乗値上げには目を光らすべきでしょう。輸入物価の上昇に起因する範囲の国内の物価上昇であればそれは合理的なものでしょう。

輸入価格が国内価格の合理的に転嫁されれば、つまり価格機構が正常に作動すれば、不公平は起きません。便乗値上げのある諸外国に対しては国際競争力は維持強化されます。

今迄の日本経済の閉塞状態を脱出するのに、絶好の「国民の意識転換」のチャンスが来ているように思われるところです。このチャンスを、政府、日銀が巧く活用されることを願ってやみません。

平均賃金上昇5%で経済バランス回復か?

2022年10月12日 14時11分19秒 | 労働問題
最近の企業調査では正規社員不足の方が非正規社員不足より問題といったものもあるようです。

非正規の賃金の低さに頼り、教育訓練の手抜きをした結果でしょう。確りした製・商品やサービスを提供するには、訓練の行き届いた正規社員が必要だったという反省の結果でしょう。

長期不況の中で緊急避難のつもりの雇用・人事政策が長期になり過ぎて人材の保有に歪みが生じてしまっているのです。
非正規の正規化の問題は2013~14年の円安進行の過程でやっておくべきことだったのでしょうが、10年近く遅れてしまいました。

日本経済が競争力を取り戻すためには従業員の教育訓練が必須になります。
勿論非正規でもキチンと教育訓練をすればいいのですが、そうすれば必然的に正社員としてずっと企業にいてほしい人間になるのです。

当然賃金は引き上げなければなりません。非正規雇用で安く上げようとしたときの逆が起きるわけです。
これからこうした現象が起きざるを得なくなるでしょう、表題に掲げた平均賃金上昇の中にはこうした部分も当然入って来ます。

ところで、この所、物価が上がって来ています。長い間我慢してやりくりして来た輸入原材料などの値上がりが限界にきて一斉に製品価格に転嫁する動きが出ています。

プライス・メカニズムの機能を我慢して使わなかった事で経済停滞が起きていましたが今回の一斉値上げで関連業界は少し活性化するでしょう。

これをきっかけに日本経済に、プライス・メカニズムが正常に働くようにすれば、日本経済自体が活性化してくるでしょう。

そう考えてきますと、次にプライス・メカニズムを正常に働かせる分野は労働の対価、人件費の分野という事になるのでしょう。

物価が抑えられていたことで人件費もずっと抑えられて来ましたが、本来政府・日銀、特に日銀は毎年平均賃金を3%上げ、その内1%は生産性上昇(経済成長)で打ち消して2%の賃金インフレが発生するというのを目標にしていたのです。

ですから、今輸入物価の価格転嫁で物価が3%上がっても「2%インフレ目標は達成されていない」と異次元緩和を継続しているのでしょう。

その意味では来春闘で5%の平均賃金の上昇があれば、1%は経済成長で消され、2%は輸入インフレで消されても、後の2%は「インフレ・ターゲット」に見合うので異次元金融緩和・ゼロ金利を見直してもいいという事になるのではないでしょうか。

その後原油などの海外価格上昇が収まれば、目標の2%インフレの達成がはっきり見えるようになるという事でしょう。

プライス・メカニズムの正常な働きを想定すれば、日本経済のバランスの正常化に5%程度の人件費上昇が必要という回答が出てきます。
この辺りの平均人件費上昇は、来春闘への労使の賃上げの議論への参考にもなるのではないかと思っています。

日本は自由市場経済の国、価格機構を大切に

2022年10月11日 17時04分03秒 | 経済
日本は自由主義圏の国で、経済は自由市場経済が原則です。その対極は計画経済、統制経済、指令経済などと呼ばれます。

殆どの日本人は自由経済の方がいいと思っているでしょう。そこでは市場機構、価格機構が機能して人間の行動を合理的に導き、努力を引きだし、より効率的な経済に結び付くと考えているからです。

理由は、市場機構(マーケット・メカニズム)、価格機構(プライス・メカニズム)、つまり取引には対価があり、高ければ売れない安ければ売れるという原則が働くからです。
人は同じものならより安く作ろう、高くても売れるものを創ろうと競争原理が働き社会が進歩すると考えています。

しかし欠点もあって、独占状態が生まれると価格機構が働かなくなります。また優勝劣敗が行き過ぎて格差社会になると市場機構がうまく動かなくなるので注意が必要です。

そこで独占が生まれないように、また、格差社会化が行き過ぎたり、固定化したりしないような法律や制度をつくり、出来るだけ自由経済のメリットを有効に活用することに成功した国が、豊かで快適な国になるということが解ってきました。

これは経済や社会における「自由」と「平等」の問題で最も基本的な課題です。

今の日本経済の問題は、政府が自由経済のメリットを生かそうと考えながら、現実には、国民の人気を取るために指令経済の様なことをやってしまって、失敗が多いという事がいろいろと目につくという問題ではないでしょうか。

というのも、これは一例ですが、先日クローズアップ現代で、政府の中小企業向け「ゼロゼロ融資」が3年の期限を迎えて、返済しないと金利がかかるようになるが、返済できない所が相当出るのではないかと問題になっている事を取り上げていました。

ゼロゼロというのは「担保なしOK,金利なし」という事で金利は来年3月まで地方自治体負担です。政府はコロナ禍の中小企業の「正義の味方」の顔で、人気取りです。
つまりカネを借りるための自由経済の常識、価格機構の働き、対価の支払い(金利)を無視し、困っていれば金を貸すという「指令経済」を中小企業救済の名目でやったのです。

しかも総額42兆円(GDPの2%)、カネのない政府ですから当然借金です。
借り手は、相手が政府ですから喜んで、返す宛てがない所まで競って借りた事でしょう。当然返せなくなります。

価格機構を生かせば、融資は銀行が、返せる見通しのあるところに、金利(貸金の対価)を取って貸し、見込みのない所には貸しません。
政府はそういう中小企業の人に「働き方改革」で言っているように再訓練の機会を準備し、生産性の高いビジネスに転換させるのが本業でしょう。

結局ただでカネを貸して倒産、廃業の時期を少し伸ばしただけで巨大なカネを使い、再訓練の機会は増えない、「働き方改革」の目標に逆行という結果です。

価格機構は人間に努力を強います。それが人類社会の進歩の原動力です。人気取りは人間を安逸に流し、人類社会の進歩を遅らせます。

自由主義経済の大御所、M.フリードマンは、アダム・スミスの「神の見えざる手」に対置して「政府が国民を喜ばそうとして色々やればやるほど国民は貧しくなる」という「政府の見える手」の概念を提示しています。

賃金と物価が上がっていない:経済成長も!

2022年10月10日 15時45分57秒 | 経済
前回見てきましたように日本経済の特徴として、経済成長は何とか政府の最低目標実質1%成長に近い所まで行っていますが、賃金と物価が異常と思えるほど上がっていないということが解ります。

欧米諸国では輸入物価が上がれば国内の賃金・物価も上がり、経済活動も刺激され、最近のようにインフレが昂進し、これは大変と中央銀行の金融引き締めとなります。
例えばアメリカでは新車が12%、中古車が16%も値上りしました。便乗値上げも沢山あるようです。

組合結成も相次ぎ、賃金も上がりました。物の値段も人件費も、プライス・メカニズム(価格機構)が増幅して物価も賃金も大幅に上がるのです。

日本はどうでしょうか。輸入物価が上がっても、国内価格に価格転嫁することは容易ではありません。
輸入物価が上がることは値上がり分だけ日本の富が海外に流出する事ですから、その損は日本人全体が負担するしかないのです。

所が日本では、国内価格に転嫁するのが難しいので、輸入部門に近い所に負担が偏ります。そして、政府は人気が落ちないように、赤字国債を増発、補助金を(例えば石油元売りに)出します。その結果、価格機構は健全に働かず、政府の借金が増えます。

輸入原材料の国内価格転嫁は時間をかけて細々行われ、消費者物価まではなかなか行きつきませんから、消費者物価は上がりません。

例えば加工食品業などでは利益圧縮、賃金抑制、正社員の非正規への切り替え、ステルス値上げ(量目を減らす)などで凌いで来ましたが、もうこれが限界だと居直って(言葉が悪いですね)最近の値上げラッシュになっているのです。

物価が上がらないので、連合も賃上げ要求はいつも控えめで「望ましい経済成長2%に定昇」程度、結局経済成長は1%足らずですから、2%前後で仕方ないと納得でしょうか。

実は定昇というのは次第に小さくなっていて、特に団塊の世代が定年なれば賃金は大きく下がりますから、「昇」かどうかは解らないと言えそうですし、正社員退職を非正規で補充など年齢構造、雇用構造の変化で、平均賃金は上がらない事もあります。

こうして物価も上がらない、賃金も上がらないという事で、政府・日銀の想定した2%インフレターゲット(賃上げ3%、経済成長1%、物価上昇2%)というシナリオはまったくの画餅になりました。

賃金と物価が適切に、プライス・メカニズム(価格機構)を潤滑油にして、経済成長を促進するといった構図が達成されなかった大きな理由は、政府が「価格機構」の正常な活動(欧米の場合は正常より過剰)を妨げて来ていたという面が大きかった事が見て取れます。

その最大の原因は、得票を減らす可能性の大きい消費税増税の必要に迫られる中で、物価上昇を何とか抑えたかったことが大きな要因だったのでしょう。

価格機構の正常な働きによって経済成長を押し上げることが出来なかった政府は何とか経済成長率を上げようと遮二無二努力した結果が、赤字国債発行、膨大なバラマキ路線という事で、国家財政を再建不能状態に悪化させるまでになったという事でしょう。

結局は、経済成長より、当面の「人気」、選挙の「票」が大事という民主主義のポピュリズム化の結果という事になりそうです。

加えて、少子高齢化で年金危機や老後不安を煽るなど、国民の経済活動を阻害する面もあり最大の問題は、自民党の政策として、「格差社会化を容認」してきたという深刻な背景があるのですが、これについてはすでに書いて来ています

物価、賃金、経済成長:経済再建の鍵は何処に?

2022年10月08日 16時49分31秒 | 経済
今、日本経済が当面している問題は、為替レートが正常化した2014年以降も、経済成長が進まなかったことの原因の探求でしょう。

勿論円レートが$1=¥80などという時は別の話です。日銀の政策変更から2013年以来、円安が進み、2015年には$1=¥120レベルになっていましたから、当然日本経済は成長路線に入るはずでしたが、アベノミクス以降を通じて経済成長は戻りませんでした。

これは多分経済政策の失敗でしょうから、それを改めないと今後も問題は残ります。という事で今のうちに間違いを正しておいた方がいと考えているところです。

そこで政府が本来の目標にしたものと現状の違いを比べて、多分ここが悪かったという点を探し出し、是正する事を考えてみましょう。

政府・日銀の掲げた目標は「2%インフレターゲット」でした、最もモデストな形でこれを考えますと実質経済成長率1%、賃金上昇率3%、物価上昇率2%、名目経済成長率3%です。2014年を基準にして、これが実現したとすれば、

2014年を100として8年後の2022年(現在)の姿は(他の条件は変わらずとして):
名目GDP  126.7       
実質GDP  108.3 
名目賃金  126.7  
実質賃金  108.3 
物価上昇  117.2  
という事になるはずです。

では実績はどうだったかと見てみますと
名目GDP  126.7 → 107.4      
実質GDP  108.3 → 107.3
名目賃金  126.7 → 102.1 
実質賃金  108.3 →  96.9
物価上昇  117.2 → 105.4

こう見てみますと政府の2%インフレ目標に一番近いのは実質成長率で、後は皆大きく遅れていて、それは物価が上がらない事と賃金が上がらない事が大きく関係しているようです。

一番上がっていないのはは実質賃金で、名目賃金が上がらない中で去年あたりまでは物価も上がらずに下がる年もあったりして何とかなっていましたが、時系列で見れば今年に入っての物価上昇で(賃金と物価は8月の数字、GDPは年度の実績見込みです)96.9と2014年の水準を大きく割り込んでいます。

このブログでは、四半期のGDP速報が出るたびに、「経済は消費は伸びず、企業設備投資の片肺飛行」と消費不振を指摘して来ましたし、毎月観測の平均消費性向は昨年までほぼ下がりっぱなしでしたから。GDPは企業の設備投資で何とかもっていた(建設の水増しもプラス要因)ようで、建設業の貢献分の本当の数字は消しゴムで消されて実は不明なのです。

しかし、日本経済全体カギになる数字を大きく見た結果は、大体こんな所でしょうから、何故こんな事になったかという原因を次回から考えていってみたいと思います。

8月家計調査:平均消費性向上昇続く

2022年10月07日 14時17分13秒 | 経済
  <平均消費性向の対前年同月比較>

                    資料:総務省「家計調査」
今日、総務省夜8月分の家計調査が発表になりました。

結果は消費支出の伸びが目立つもので、いずれ7-9月のGDP統計の速報には反映してくると思いますが、問題は消費の伸びの原因で、コロナ終息、消費者物価の上昇基調、中でも9月、10月からの価格引き上げが目白押しという事で「駆け込み需要」など種々の原因が考えられます。

以下概況を見てみましょう。
2人以上世態全体の消費支出は名目では前年同月比8.8%と大きく伸びています。

同じく今日発表の厚労省の毎月勤労統計の賃金給与総額は1.7%の上昇で、自営業世帯も入っていて世帯調査の家計調査とは調査対象にズレがありますが、1.6%でほぼ同じです。

つまり収入は1%台の伸びですが、支出の方は8.8%も伸びたという事で、家計としては「消費はさておき貯蓄を増やすという生活から、一気に消費重視に気分を変えたという事になります。

という事で、消費の中でも何が増えたのかを見てみますと。巣篭値需要とは大分違う仮定の行動の変化が見られます。

巣篭り需要で増えていた住居関係、家具家事用品といったものは伸びず、最も伸びているのは教養娯楽の22%、保健医療の14%、水道光熱の12%はいた吾仕方ないとして、外出増加でしょう交通通信12%、巣篭りでは伸びなかった被服履物が10%と好調です。加工食品の値上がりがマスコミを賑わす食品は5.6%といったところです。

こんな状態ですから、このブログが注目している平均消費性向も大幅な伸びです。
毎月観測している「2人以上勤労者所帯」では可処分所得(手取り収入)の伸びが名目1.2%実質は物価上昇を差し引いてマイナス2.2%であるにも関わらず消費支出は9.6%伸び物価法相分を差し引いた実質でも5.9%伸びて、「平均消費性向」は、昨年8月の65.0%から70.4%に5.4ポイントも上昇しています。

さあ手この辺りの原因の分析ですが、先ずコロナの鎮静化を政府が認め、対策としての行動制限を緩めたことがまず大きいでしょう、次に考えられるのは、消費者物価の上昇傾向でしょう。

特に、加工食品や外食、テイクアウトなどの価格を9月からとか10月からとか発表する企業が多く、マスコミも「何万品目値上がり」などと報道するので、消費者も買い急ぐというインフレ特有の現象も起きます。

このブログでは、何かのきっかけで平均消費性向が上がり、それをきっかけに、賃金物価、国内の価格調整のメカニズムが何らかの潤滑油を得てスムーズに回り始め、経済全体が持てる力を余計な摩擦に邪魔されることなく回転を始めることを願いつつ「平均消費性向」の追跡をやっているのです。

もし順調にコロナ明けが来るようであれば、それをきっかけにして、政府、労働側、経営者側が知恵を併せることでそれが可能になる「可能性」を見たいと思っています。

来春にかけて、日本の政労使が、何をするかでそれが基あるでしょう。その都度ブログで取り上げながら期待したいと思っています。

中国の将来を憂う、杞憂であることを望みつつ

2022年10月06日 11時48分01秒 | 政治
中国では、毛沢東の晩年の政策の過ち(文化大革命)に学び、鄧小平が定めた国家主席の任期5年2期までという決まりを過去二代にわたり守ってきましたが、習近平に至り3期あるいは終身といった方向に向かいつつあるようです。

今月中には決まるのでしょが、習近平が着々と打ってきた手が効果的に働き、体制は習近平三選という線で固まりつつあるというのが最近の各種報道から確実さを増しているように思われます。

感情を殆ど表情に表わさず、何時もポ-カーフェイスの習近平ですから、TVの画面からは解りませんが、発言の内容や行動からは、中国を世界一の国にすると言った強い意識が窺われるというのが多くの人の持つ印象のようです。

このブログではこの夏「民主主義のトリセツ」を4回に分けて書いてきました。
ご覧いただいたかたもあるかと思いますが、「こんな取り扱いをすると民主主義は往々失敗します」という事を例を入れながら、当面8項目挙げたものです。

その8項目の第1が
1、 過去の経験から、リーダーの最長任期を決めたら、それを伸ばそうとする人をリーダーに選んではいけない。
というものです。

説明としては、大はプーチンから小は安倍信三まで、任期の規定を捻じ曲げて、プーチンの場合は、最初はメドベージェフと大統領と総理大臣の座を交替してワンクッションおき、改めて大統領になり、今度は法改正をして任期の制限をなくすことにしたようです。

安倍さんもご承知のように、自民党のルールを改正して3期目を迎えています。
習近平も着々3期目への体制を作りつつありますが、何をやるか世界中が心配しているようです。

というような次第で、歴史から学んだ結果の知恵を、個人の願望や力で無理矢理変えようとして見ても、その結果は、どうもいい事にはつながらないという事に気を付けましょうという趣旨の「民主主義の取扱説明書」です。

そのほか他人のウソを批判しながら自分も嘘を言う人は選ばない方がいいとか、いろいろあります。
民主主義というのは社会活動、特に政治のために考えられた「道具」ですから、道具というのは正しく使わないと怪我をしたり、徒労に終わったりするので十分気を付けましょうという趣旨のものです。

話を戻して、習近平ですが。今迄も南太平洋の領有権の問題で、国際司法の判断を「紙屑」と言ったり、台湾併合を必須と言ったりしています。

人間は通常、歳を取ると好々爺で優しくなるよりも、頑固になって他人のいう事を聞かなくなる場合の方が多いので、3選から終身で、中国が世界の巨大なトラブルメーカーになることのないよう願うばかりです。

日本は、もともと中国とは近い国ですが、今、習近平と腹を割って話せるような大物政治家はとても見当たりませんから、常套語の「注意深く見守る」しかないのでしょうが、やっぱり心配です。

景気浮揚の3条件、岸田政権は本気か?

2022年10月05日 16時35分59秒 | 経済
臨時国会が始まり、岸田政権は安倍・菅政権で出来なかった日本経済の再生に本気で取り組む姿勢を示しているようにも見えます。

為替レートが円安傾向を見せ始めたのが2012年、その後2年で完全に為替レートは日本経済成長の障害にはならないレベルになりました。
最近では、欧米のインフレ対策で金利の急激な引き上げがありましたのでその余波で円安が進み過ぎ迷惑を受けている日本経済です。

日銀は長期視点で、欧米の金利引き上げはインフレが鎮静すれば戻るので一時的、だから金融緩和はこのままでいいという意見でしょう。

政府は、過度な円安は物価上昇にもつながり問題だと為替介入をして円買いを実行したりしています。しかし効果は一時的でした。

中央銀行と政府の歩調が合わないのは困ったことですが、日本もそんな国になり下がったという事でしょうか。情けない事ですが国民は受け入れざるを得ません。

国民は経済の早期回復を望んでいて、政府は政策の最大の柱にそれを掲げ、日銀は異次元金融緩和がそれに役に立つと考えているのでしょう。
目指す所が同じならば、真面目に話し合えば何かいい知恵が出そうなものですが・・・。

ところで、日本経済の再生に必要なことで最も基本的なことは「格差社会化を止め、格差の少ない社会を作る」ことでしょう。この目標に役立つことが日本経済再生のための政策になります。

そのために先ず重要なことは、輸入物価が上がったり、円安になったりして、輸出産業と輸入産業の間に収益格差が出た際の対応の在り方について政府は基本的な「対応の在り方」を産業界と話し合い原則を確認しておくべきでしょう。

特に日本ではプラス・マイナスの価格転嫁がスムーズにいかない事が多いようなので、業界間やサプライチェーンの中で、スムーズな価格転嫁の在り方を普段から検討しとくことは大事でしょう。

これは国際情勢の不安定、為替は変動相場制の世の中では。格差社会化防止の基本的な課題でもあるのではないでしょおうか。

次に、岸田総理の掲げる重要な問題は賃上げでしょう。ただし、賃上げだけやっても、周辺状況を考えないと、企業の収益格差が賃金格差に反映するだけです。
周辺環境とは、基本的には、所得税の累進度を以前の日本のように高める(昭和61年70%、現行45%が最高税率)といったことです。

更に、金利についても、国際情勢で物価が上がる場合、ゼロ金利では不公平が拡大します。高所得者は株式保有も多くインフレ時は有利です、一方、低所得者の貯蓄は銀行預金が殆どです。ゼロ金利では、高齢者の年金と共に目減り一方です。

こうしたことにキチンと手を打たずに「賃上げ」と叫んでみても、格差の縮小には役に立ちません。政府は、賃上げは労使の良識と判断に任せ、所得税の累進税率をはじめ、もろもろの環境整備をするのが本来の仕事です。

こうした仕事は、国民と相談しなければできません。岸田総理は得意の「聴く耳」を大いに活用し、広く国民の声を聴き、格差縮小実現への政策を着実に積み上げ、日本経済再生の早期の実現に成功されるよう心から期待するところです。

臨時国会開幕、首相、経済再生が最優先課題

2022年10月04日 14時54分35秒 | 経済
岸田首相の、臨時国会冒頭の施政方針演説が今日のトップニューですが、折しも支持率低下で、朝日新聞の最近の調査では支持率が40%と不支持率の50%を大きく下回る逆風の中です。

支持しない人たちは、多分本気で施政方針演説を聞いたり、新聞の演説文を読んだり、解説を聞いたりする気にもあまりならないのでしょう。余程頑張らないとこの数字を逆転することは困難のように思われます。これからが本当のチャレンジでしょう。

先ず、施政方針演説の中身もさることながら、その前に12月上旬までの会期の中で、最優先の経済問題の議論がどこまで深められるかが心配になる困った問題が山積です。

というのも、野党が、臨時国会で追及しようと手ぐすね引いているのが、「安倍元総理の国葬問題」と、「旧統一協会と自民党の関係」だからです。

安倍国葬の問題は、安倍さんの功績ではなく自民党内の派閥問題、あるいは個人的な感情問題の色合いの強い問題といったのが一般的な感じ方でしょう。
ルールを曲げてまで政権の座に長居し、その間経済成長は殆どなく、現内閣に至って、改めて日本経済再生を最優先課題にしなければならないという人が「国葬」なのです。

旧統一教会問題は、国政に関わるものが、自らの行動を確り律していれば、起こり得なかった問題です。
我々素人から見ても、国政に役立つことをして国民の支持を得るのではなく、票さえ集められれば、それが出世の近道と考えた結果の現象のように思われます。そして、そこを他国の組織に確り利用されたという事でしょう。

恐らく臨時国会ではこうした問題の議論に多くの時間を取られるでしょう。日本経済の再生の問題の本格論議の時間はその分少なくなるのでしょう。

安倍政権の時、モリ、カケ、サクラいった問題に多くの時間を取られ、これらの問題は今に至る国民の納得する解決はない儘に放置され、国政の本格論議は「強行採決などは頭の隅にもない」と言いながら、強行採決が繰り返されました。

国民に理解できない事を押し通すからそういうことになるわけで、今回の臨時国会も、似たようなことになるのを最も恐れるのは国民の良識ではないでしょうか。

以上は日本として大変深刻な問題ですが、施政方針演説で最優先とされる経済再生問題について、最も気になる点を指摘しておきたいと思います。今の経済情勢の中で賃上げが重要問題の1つという事は一致した意見でしょう。
問題は「構造的な賃上げ」という言葉です。
賃上げは構造的に行われるものではありません。一国の産業の担う「労」と「使」が対等な立場で交渉して、双方が納得して決めるものです。(構造的賃上げと言えば、物価上昇分を自動的に引き上げる「エスカレーター条項」ぐらいでしょう。)

安倍政権が「官製春闘」と言いながら8年かかってもできなかった経済を活性化する賃上げを、「構造的」にするなどという事は不可能です。

世界の常識は、賃金決定は労使の専管事項というものです、先進国は何処の国でも労使に任せています。政府が決めるのは全体主義国家のやる事です。

政府は適切は環境作りが仕事なのです。日本は全体主義国家ではありません。賃金決定は民間に任せ、政府は政労使三者のコミュニケーションを密にし、労使の意見をよく聴いて自分の役割を自覚すべきでしょう。

2022年9月度「日銀短観」企業気迷いか

2022年10月03日 14時59分18秒 | 経営

今日、日銀から標記短観が発表になりました。マスコミの見出しにありますように製造業大企業の業況が下降で、非製造業が上向きというのは大幅な円安が進む中で何か奇妙な動きと言った感じを受ける方も多いと思います。

短観の全体を見ますと、まあそうかなという事になりますが、調査企業が想定している為替レートが上期125円、下期126円と本日のレート144円とは20円近く違いますし、今後の予想は極めて困難という事も考えておかなければならないでしょう。

9月の業況判断(DI)は製造業大企業が6月調査で9で、9月には10になるという予想が8になったということで、おおきな下降ではありません。中堅は6月が0、予想は‐3でしたが9月は0、中小は6月も9月予想も-4、9月は-5という程度です。

非製造業のDIは、大企業は6月の現状も予想も13でしたが14と好転、中堅は6月が6で予想は0でしたが7と好転、中小は同-1と-5が9月は2と好転で非製造業の好調は確かに目立ちます。

業況判断を変化幅でなく総合的な感じで答える業況判断を「良い」「さほど悪くない」「悪い」と答えている形で、「良い」と答えた企業の割合を見ますと、
製造業:  大企業21、中堅企業20、中小企業18
非製造業: 大企業24、中堅企業21、中小企業19 (いずれも%)
という事で、円安は非製造業にも有利に働いていることが解ります。

日銀短観の数字はこんな状態の動きをしています、現実の経済は、コロナ禍がオミクロンの段階で終息を迎えるのか、円安が続くのかどうか、それに直接影響する政府と日銀の金融政策のねじれ問題や、アメリカヨーロッパのおインフレ退治の金融政策の効果はどうか、更には、ロシアのウクライナ侵攻の行方、加えて、習近平の三選があるか、などなど多様な問題が、直接間接に関係し影響してきます。

こんな時期には、こうした調査に答える企業も、特別に大変ですね。

2023年春闘に向けて:3 政府は何でも自分でやろうとした

2022年10月01日 14時25分41秒 | 労働問題
自由主義社会の政府の仕事というのは、自由競争社会の良さを適切な範囲で生かす社会・経済環境を整備するという事でしょう。

例えて言えば自由競争を原則に置きながら、企業の独占は許さない(独占禁止法)という社会・経済の在り方です。

所が安倍政権は、過去の思うようにいかなかった経験から「決める政治」を掲げ、何でも政府(閣議決定)で決めて、あとは絶対多数で押し通すという政策を「善し」と考えていたようです。

強行採決も目立ちましたが、世界中で労使の専管事項が常識の賃金決定まで、政府が決めようとしたようです。
当時2%インフレターゲットが言われていました。これは実質経済成長が1%なら賃上げ3%、成長が2%なら賃上げ4%(輸入インフレなし)という計算です。

それで、それまでのゼロ・マイナス成長から最低1%のプラス成長を見込んで、3%の賃上げを先ず労使にやらせようということにして、労使の代表を呼んで「賃上げは3%」と言ったのが官製春闘の始まりでしょう。

労使代表はまさに、迷惑と困惑だったでしょう。
久方ぶりの大幅円安で、輸出関連企業では大きな為替差益が出ていましたし、国際競争が優位に変わる産業もあります。当然ある程度の賃上げは労使ともに考えていて、「政府に言われて賃上げ」という事ではないのですが、企業労使が話し合って出た結果について、安倍さんは「自分の手柄」とメーデーの挨拶で自画自讃しました。

こうした我田引水的な理屈付けと強い自己肯定意識による錯覚が、舶来崇拝の「働き方改革」にもつながり、今後の日本の労働問題に不必要なトラブルと失敗を引き起こすことを本気で心配するところです。

大変危険なことに、こうした傾向は「聞く耳を持つ」と言って登場した岸田総理にも伝染して来たようで、その態度は、典型的には今回の安倍国葬によって広く認識されるようになりました。

話がそれましたが、自由主義経済社会の良さは、人間の自由な精神を社会正義という概念で許される範囲まで出来るだけ広げることによって、その成長発展を促進するというところにあります。すべてを政府が決めるというのは全体主義、独裁主義で、いつかはプーチンのロシアのようになるのでしょう.

一人の知恵は大衆の知恵には到底及びません。政治主導は、自由経済の原則にはとても敵わない事が、アベノミクスで実証されたというのが現状の日本経済低迷の説明になるというのも情けない話です。

それでは2023年春闘に向けて労使は何をしたらいいか、政府はどんな環境整備をしたらいいのかを具体的に考えなければならないでしょう。

賃金交渉については、労使が日本経済と企業経営の現状についての認識を共有し、望ましい賃金決定を議論し、その実現に必要な環境整備については政府が労使の意見を聞き、適切な政策を考えるという形での、政労使三者の自由闊達なコミュニケーションと相手を信頼する協力体制がまず必要でしょう。

更に重要なのは目的の共有で、これまでの格差社会化の進行を阻止し、以前のような格差の小さい社会(一億総中流と自認できるような社会)をどう作るかが重要な共通の目的の1つになることは大変大事でしょう。

GDPの数値を増やす算段ばかりするのはやめて、国民のために良い社会を創れば、GDPは結果として自然に増えてくると考えを変えるのは如何でしょうか。