「日本の民主主義と地方自治が問われている」

 沖縄県翁長雄志知事は先週の全国知事会で、米軍普天間飛行場名護市辺野古への移設問題を、各県も「わがこと」として考えるよう求めた。

 沖縄県を相手どった政府の提訴によって、両者の綱引きは再び司法が主舞台になりそうだ。

 6月の沖縄県議選と7月の参院選が終われば法廷闘争に戻るだろう――。3月の福岡高裁那覇支部での和解の際に、そう案じられた通りの展開である。

 この問題を、改めて地方自治の視点で考えてみる。

 政府は安全保障上の米軍基地の必要性を強調する。一方、沖縄県は県民の暮らしを守るため基地削減を求めている。

 政府のいう「公益」と、県の「公益」がぶつかり合う。それを比較考量しつつ、合意点を探るのが政治の知恵だろう。

 法廷で黒白をつけるべき話ではない。だから裁判所は和解勧告で「沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべき」だと促したのではなかったか。

 実は和解勧告には、自治に関する重要な記述があった。

 99年の地方自治法改正に触れて、国と自治体が「それぞれ独立の行政主体として役割を分担し、対等・協力の関係になることが期待された」と明記。そのうえで、政府と県が対立する現状を「改正の精神にも反する状況」と指摘していたのだ。

 この法改正は90年代の地方分権改革の成果であり、政府と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に変えた点が画期的だった。

 その象徴が、国が自治体に指示通りに仕事を代行させる「機関委任事務」の廃止だ。

 96年に当時の大田昌秀知事が最高裁まで争った「代理署名」は機関委任事務だった。今回は機関委任事務の代わりにできた法定受託事務をめぐる訴訟だ。託す側と託される側は対等という前提であり、受託する側にも一定の裁量権がある。

 政府の強硬姿勢は、こうした分権改革の流れや地方自治の考え方を無視するかのようだ。

 政府と県が向き合った、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」も分権改革の流れの中でできた。6月に示した判断は、一方に軍配を上げることが「国と地方のあるべき姿を構築することに資するとは考えられない」として、「普天間の返還という共通目標」に向けた真摯(しんし)な協議こそ最善の道と促した。

 この「あるべき姿」を、安倍首相はどう考えているのか。

 

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