明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日にむけて( 3 )放射性物質はいかに流れたか、流れうるか

2011年03月28日 12時51分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110328 12:50)

原発の現状です。3号機から水蒸気が激しく噴出しているそうです。
まず読売新聞の記事を紹介します。


********************

3号機、水蒸気が激しく噴出…陸自ヘリ撮影

 防衛省は27日、陸上自衛隊のヘリが同日午前に東京電力福島第一原子
力発電所を上空から撮影したビデオ映像を公開した。

 3号機では、これまで水蒸気が上がっていた使用済み核燃料貯蔵プール
だけでなく建屋内の別の場所からも水蒸気が激しく噴き出していた。原子炉
工学に詳しい専門家は「原子炉格納容器の遮蔽物付近から噴出している
ように見えるが、一時貯蔵プールの蒸気が狭い空間に潜り込み、噴き出て
いる可能性が高い」とした。


(2011年3月28日07時11分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110328-OYT1T00128.htm?from=main4

**********************


記事には専門家による「一時貯蔵プールの蒸気が狭い空間に潜り込み、
噴き出ている可能性が高い」とありますが、これもあくまでも推論です。

むしろはっきりしているのは、何が起こっているかよく分からないという
ことです。モニタリングできていないのです。外から見て、何だろうと
考えているのが現状です。

これが、「ゆっくりとしたチェルノブイリ」の実態です。

3号機については、東電と保安院から原子炉が損傷している可能性が
あると発表されています。京大原子炉実験所の小出裕章さんは、
原子炉からタービン建屋に蒸気をおくる「主蒸気分離弁が壊れている」
可能性を示唆しています。事故のときに閉じるべき弁です。

いずれにせよ、冷却水を循環させる段階まで回復させるためには
非常な困難があり、時間もかかることだけは確かなようです。
そもそも何が壊れているのかも把握できていない。しかも現場が、
作業するにはあまりに困難な放射線量にさらされていることは確かです。


事態がどう進むのか。予想をするのは難しいです。言えることは、最善の道を
たどったとして数カ月以上かかって安定する。1年以上かかるという見通しもある。
その間、放射能漏れが続くということです。

しかし最悪の道をたどった場合は、すぐにも原子炉が崩壊し、中の
放射性物質がすべて外に出てしまう可能性がある。しかも1つが制御不能に
なると、作業ができなくなり、破局的事故が複合化してしまいます。

この可能性の幅の中での対処を考えるのは大変、難しいですが、一つ、
おさえておくとよいのは、最悪の場合でも、だんだんに放射能汚染が
拡大する現在の状況でも、放射性物質が日本列島をどのように流れ
うるかの情報です。

この点で参考になるものをご紹介します。
フランス放射線防護原子力安全研究所によるシミュレーションです。
この組織は、原発大国フランスの中で、原子力政策を推進している立場に
あるもので、予算はほとんど政府から出ています。

事故後の数日間に、チェルノブイリ事故で放出された放射性物質の1割に
あたる放射性物質が、外部に放出されたと試算しています。
原発の最も強い推進者の側からみても、このように試算されていることには
重みがあると思います。

以下、次のものをご覧ください。


「2011 年3 月12 日より福島第一原子炉から放出された
放射能雲大気中拡散シミュレーション」
http://www.irsn.fr/EN/news/Documents/irsn-simulation-dispersion-jp.pdf

フランス放射線防護原子力安全研究所IRSN
http://www.irsn.fr/EN/news/Pages/201103_seism-in-japan.aspx

財団法人高度情報科学技術研究機構によるIRSNの説明も貼り付けて
おきます。

 放射線防護原子力安全研究所IRSNは、原子力安全・放射線防護総局
DGSNRの支援組織である。商工業公社(Public Establishment)の性格を
もっており、その主な業務は、(1)原子力利用に関する研究計画の遂行、
(2)放射線防護の訓練教育、(3)原子力利用に関する放射線モニタリング、
(4)原子力情報の公開、(5)原子力と放射線利用に関する技術支援、
(6)非常時の支援、(7)技術相談、研究開発および計測などの契約業務
等である。
 2007年度の収入は299百万ユーロ、支出266百万ユーロ。政府の資金は、
補助金、運転費等を含め245百万ユーロである。人員は、原子力の安全、
放射線防護、核物質管理、医学、農学、獣医学等の分野の専門家、
技術者、研究者等で約1,700人である。

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明日にむけて( 1 )放射線被ばくから身を守るために

2011年03月26日 14時33分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 14:30)

ここからメインタイトルを「明日にむけて」に変えます!


みなさま。

今、私たちは、放射線被ばく危機にさらされています。放射性物質がたびたび、
福島原発から漏れだし、各地で放射能汚染を拡大させています。
漏れ出した総量は、すでにチェルノブイリ事故時の1割から5割とも推定されて
います。(その多くは太平洋上に流れ、一部がアメリカやヨーロッパで観測
されています)

放射線被ばくから身を守るためにはどうしたらいいのでしょうか。
まず大切なのは、放射線をどれぐらい浴びると、どれぐらいの危険性が
あるかを正しく知ることです。今回はこの点についてまとめます。


放射線量をめぐる混乱

放射線量をめぐる考察を進めるにあたって、まずおさえておくべきことは、現在、
情報が非常に錯綜していることです。とくにマスコミでは、意図的に間違いやすい
情報や、数値を出した解説が行われている場合もあります。
例えば、読売新聞では、「健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安」という
タイトルの記事を掲載しています(記事は最後に貼り付けます)

一方、私たちの国は、法律で、一般人が年間に浴びる放射線の許容量を
1ミリシーベルトと定めています。ここには100倍の開きがあります。
そしてまた、こうした許容量を超える被ばくが発生するたびに、それは「ただちに
健康には害のない値」という説明が繰り返されています。


社会的には、このことで、大きな混乱や、パニック状態も起きてきていると
思われます。規制値が決められているのは、何らかの根拠があるはずなのに、
それが守られなくなると「大丈夫」が繰り返されるばかりで、「ただちにでなければ、
いつから健康に害があるのか」という情報が出されません。

このことに、そもそも「絶対におきない」と言われていた大規模な原発からの
放射能漏れが起こり、今も継続し続けている事実や、こうした重大事故を
政府やマスコミが、あたかもすぐに終息できる事態で、大規模なものには
発展しないとだけ断言したにもかかわらず、すでにチェルノブイリの何割か
という膨大な放射能が放出されてしまったこともあいまって、ますます
疑心暗鬼と不安が広がっているように思えます。

これとともに言わゆる「風評被害」も広がり、何が安全で何が安全でないのか
多くの人がとまどっている状態にあります。聞きなれない値や数値も次々と
出て来て、ますます分かりにくい。このままでは不安が募るばかりで、放射線
から身を守るすべになかなか辿り着けません。

こうした社会的不安や風評被害をとどめるのに必要なのは、正しい情報を
流すこと、とくに政府や関係機関が、情報をきちんと公開することが肝心で
あると言われています。肝心なのはリスクがあるならあるで、それをきちんと
説明することです。

そこでここでは、放射線はどれぐらいの量を浴びると危険なのか、
あるいは危険とみなされているのか、またなぜ1ミリシーンベルトが、一般人が
1年間に浴びる放射線の許容量とされているのかを、まとめたいと思います。
放射線被ばくから身を守る第一歩が、安全と危険の境をきちんと知ること
だからです。


どれぐらいの放射線で、どれぐらいの害があるのか

ここでは「緊急被ばく医療研修のホームページ」を活用します。
http://www.remnet.jp/index.html
このホームページを運用している団体は、原子力安全研究協会であり、
僕は原子力行政を推進してきたこの団体に、批判的であることを
あらかじめ記しておきます。しかしそれでも、僕なりに読んでみて、このホーム
ページは有用であり、今、実際に被ばく医療が求められるつつある現状の中で
あらかじめ、こうしたまとめをしておいてくださったことには、感謝の気持ちが
あります。以上に踏まえて、「放射線影響を考えるときのポイント」と
されている内容を引用して、解説を行います。(HPでは4つが示されていますが
もっとも大事な1にしぼって解説します)


「線量の大きさ:急性の皮膚障害,造血臓器の傷害など身体的影響の早期
影響には「しきい値」(あるいは,「しきい線量」)があり,それ以下の被ばくでは
影響は発生しません。身体的影響の晩発影響のがん,および遺伝的影響に
ついては「しきい値」はないと考えられていますが,線量が少なければ発生の
確率も小さくなります。さらに,がんについては50mSv以下,遺伝的影響に
ついてはいかなる被ばくでも,疫学上は人での影響の増加が確認されて
いません。」

まず書かれているのは、すぐに皮膚や内臓に障害がでるにはある境になる値
(しきい値)があるということです。これらはおおむね100ミリシーベルト以上の
大きな値ですが、同じ症状は、ある境になる量を下回れば影響はでないと
いうことです。

次に書いてあるのは、ゆっくりと長い年月をかけて発生するガンについては
危険性と安全性の境になる数値がないということです。そのため放射線は
どれほど微量であろうとも、浴びた分だけ、長い年月が経った後にガンに
なるリスクを発生させます。この可能性は、線量が少ないほど、低くなります。

さらに、ここが少し分かりにくいのですが、「がん」について、つまり長い年月
をかけて発症するのではなく、もっと早く発症するがんのことだと思いますが、
これは50ミリシーベルトを境としているということです。これ以下の被ばくで
あれば、すぐにがんになったり、遺伝的影響が出ることは、確認されていない
ということです。(絶対にないとは言っていません。これは科学的に正しい
態度だと思います)。

これらをまとめるならば、少しでも放射線を浴びると、長い年月を経てガンに
なる確率が生じますが、50ミリシーベルトまでは、すぐにガンになったり、遺伝的
影響が生じることはないと今のところ考えられているということです。

また少しでも浴びると、長い目ではガンになる可能性が出てしまうため、どの
値までを許容するか、つまり非常に低い確率として、切り捨てようと考えるか、
国際的な基準や、専門家の検討の中で決まったのが、1ミリシーベルトという
値だということです。そしてこれらが1ミリシーベルトを超えても「ただちに健康に
害をあたえるものではない」と言われることの根拠であることも分かります。


1ミリシーベルトという許容値の中身

そうなると気になるのは、では1ミリシーベルトでは、どれぐらいの可能性が
生じるかです。

ここではフランスのクラリッド研究所のホームページを活用します。
クリラッド研究所はフランスの独立非営利団体で、放射能と原子力について
知る権利、放射性物質の危険から身を守る権利を擁護することを目的として
いる研究所です。チェルノブイリにときに、ヨーロッパの人がなかなか正確な
情報をつかめることができずに苦しんだことを背景にうまれたそうです。
日本語情報もあります。
http://www.criirad.org/

ここには次のような記述があります。

「なぜ1ミリシーベルトなのか
国際放射線防護委員会(ICRP)は いかなる量の被爆も、たとえ自然界にある
放射線量に比べられるほど少量だとしても ガンのリスクを増やすものだいう
見解を示しています。特に広島、長崎の原爆被害者の経過を見ても ICRPは
死至るガンにかかるリスクと被爆量には明らかに比例関係があり、 少量で
あってもリスクあるとしています。年間許容量1ミリシーベルトという単位は
専門家によると死亡リスクとしては「まだ容認可能な範囲で、10万人に5人の
割合」とされています。ですので、人々の健康を保護するためには、なんとして
でも被爆量を低くおさえなければならないのです。」

つまり1ミリシーベルトの被ばくで、長い年月を経てからガンになる確率は
10万人に5人だということです。
これを大きいと思うでしょうか。小さいと思うでしょうか。


まとめます。
放射線を1ミリシーベルト浴びた時、私たちが何年もしてからガンになる
確率は10万分の5、したがって2万分の1です。それより浴びる量が増えると
次第に確率はあがっていきます。

また長い年月をかけずともガンになったり、遺伝的影響が出る確率が
生じるのは、今のところ50ミリシーベルトからとされています。
これが科学的な数値です。これを一つの目安に安全と危険を判断していく
必要があります。

どこからが安全でどこからが危険がはっきりしないと不安かもしれませんが、
私たちは日常生活でも、実はリスクを考えつつ、行動しています。例えば
航空機に乗るときに、事故がおこる可能性があることは誰でも知っています。
しかし非常に低いものとして、ないものとみなしたり、あるいは、飛行機が
落ちる心配をすることの方が心臓に悪いと判断して、考えないことにする
場合もあります。

同じように、放射線被曝についても、リスクは確率的であり、その上で、
他のリスクと掛け合わせたうえでの判断を下すことが大事です。
とくに乳児に基準値を超えた水道水を飲ませるかどうかについては、
ほんの少しでも飲むとその分だけ、ガンになる確率は増すけれども、それが
1ミリシーベルトの時の、2万分の1よりも、非常に少ないところから始まって
いることも分かります。

どれぐらい飲むと、1ミリに達するか、計算をすれば出てきます。ただし水が
汚染されている場合は、他の多くのものも汚染されていて、被ばくが複合的に
おきることも考えて、リスクを見積もった方が良いですし、子どもの場合は
大人より厳しい基準を設ける必要があります。(厚労省は3倍の基準を課して
規制値をあげたので、それに従えば、1ミリの3分の1で計算できます)

これに関して、産婦人科の医師たち、小児科の医師たちが、繰り返しアドバイス
しているのは、不安になって水分を採らないことの方が、リスクが大きいと
いうことです。こうした点で、放射線被ばくを避けようとするあまりに、もっと
大きいリスクを背負ってしまうことには十分注意したいものです。

ガンになるリスクが、確率的に非常に少ないことを考えるならば、ミネラル
ウォーターが手に入らない状況であれば、水道水を飲んだほうがよい。
少なくとも、水分が足りなくなっていまう大きなリスクをおかしてはならないと
いうことが、医師たちから訴えられていることを踏まえておきましょう。
ストレスもまた、ガンの大きな因子であることもおさえておく必要があります。

以上を踏まえて、年間1ミリシーベルト以上の被曝を避けることを一つの
目安としていきましょう。ただしそれを超えてしまっても、その分、確率が高まる
けれども、まだまだいろいろな対処や挽回が可能であることも踏まえて
おきましょう。総じて私たちの免疫力、自然治癒力をあげていくことを大事に
することが大切だと思います。

こうした知恵を組み合わせ、不安を排除したうえで、出来る限り、被曝を避ける
こと、しかし避けられないときは、あわてることなく、リスクの大きさを判断して、
自分にとってもっとも有利な事は何かを考えていくこと。こうしたことの積み重ねで
放射線被ばくに対して、立ち向かっていきましょう。

みんなで知恵を合わせて、放射線被ばくから私たち自身を互いに守り合って
いきましょう!


【ここまで読まれた方ならば、以下の読売新聞の記事の誤りを、読み取る
ことができると思います。いわば応用問題として考えてみてください。ただし
ここでは、読売新聞よりも、原子力安全研究協会やクラリッド研究所が
語っていることの方が正しいという仮定に立っています】


***************************

放射線対策 健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安
 放射線の身体への影響は、どうなのか?


 過去の放射線事故のデータなどから、3000ミリ・シーベルトの強い放射線を浴び、
何も治療を受けられないと、60日以内に約半数が死亡することがわかっている。

 長期的な影響で、唯一はっきりしているのは、
広島・長崎の被爆者の健康状態を追跡したデータだ。
1000ミリ・シーベルトの強い放射線を浴びた人は、がんを発症する確率が1・5倍高まる。

 被曝量が減るにつれて、がんの発症率は減る。
100ミリ・シーベルト以下の被曝を受けた約2万8000人のうち、
40年間にがんを発症した人は約4400人で、被曝をしていない人に比べ、
約2%(81人)多かった。

 ただし、この差はわずかであり、
100ミリ・シーベルト以下の低い線量の被曝でがんが増えるかは定かでなく、
専門家の間でも議論が続く。
健康に明らかな影響が出る恐れが出る目安が100ミリ・シーベルトとされているのは、
こうした結果などからだ。

 人は日常でも、自然界に存在する放射線(年間平均約2・4ミリ・シーベルト)を浴びている。
またCT(コンピューター断層撮影法)などの医療における被曝は、
病気を見つけて治す利点の方が上回るとの観点から、被曝量の上限は設けられていない。

 とは言え、低い線量の被曝の影響が不明な以上、不必要な放射線は浴びない方が無難だ。
原子力発電所については、敷地外にいる一般の人に、
年間1ミリ・シーベルトを超える被曝が起きないような環境を保つよう、決められている。

 現在、各地点で1時間あたりの放射線量を測定している。
21日午後4時~5時の東京・新宿では、毎時0・125マイクロ・シーベルト。
すぐに健康に影響が出る値ではない。

(2011年3月22日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38404
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地震続報( 46 )作業員の被曝と原子炉の状態

2011年03月26日 11時12分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 11:10)

今、原子炉はどのような状態におかれているか、ニュースから考察します。
24日に、3号機で復旧作業中の3人の作業員の方が、非常に高い値の放射線を
浴びました。

これは3号機のタービン建屋内に溜まっていた水に、高い濃度の放射性物質が
含まれていたためと報道されています。具体的には、「1立方センチ当たり
380万ベクレル(放射能の単位)の放射能」とされています。

意図的かどうかは分かりませんが、このニュースの出し方は分かりにくい
です。そこで水道水と比較してみると、1キロ当たり、100ベクレルが
乳児の規制値です。これに対してこの汚染情報は、1立方センチ当たりに
なっています。1キログラムは1リットル=10立法センチメートルなので、
この値は1000倍すると分かりやすくなります。

そうするとどうなるか、380万に1000をかけるので、38億ベクレルになります。
つまり1キログラムあたり、38億ベクレルの放射性物質を含んだ水が、炉内に
溜まっているということです。

問題なのはこれがどこから出て来ているかで、これだけ高濃度のものが
出てくるのは、原子炉内部からしかありえない。つまり原子炉の密閉機能が
破られていることを意味します。しかも1号機、2号機でも同様の水が
溜まっています。

これまで原子炉格納容器に破損があると思われるのは2号機だけでしたが、
1号機、2号機、3号機ともに、非常に高い値の放射性物質が、炉内から
どんどん出て来ていることが分かります。しかも原子炉や格納容器、および
配管の、どの部分から漏れが発生しているのかもつかめていない状況です。

このため、依然、原子炉が崩壊する危険性は去っていないし、今後さらに
放射性物質の露出が続くことも明らかです。そのため周辺地域への
放射能汚染がさらに継続します。

特に注意をしていただきたいのは、このような状態では、半減期を考える
ことはあまり意味がないということです。ヨウ素の半減期は8日で、16日目には
放射線を出す力が4分の1になりますが、今の場合は、あとからあとから、
新たに放射性物質が漏れ出しているので、半減を待つ計算は成り立たない
からです。

また、こうなってくると「高濃度」という言葉はもはや死語だと思います。
水の汚染で言えば、万の単位のベクレルだってかなりの高濃度です。
それに対して、今回は38億ベクレルなのですから・・・。

いずれにせよ、これだけの放射能漏れが続いていて、復旧に向けた
作業は非常に困難です。

ちなみに本来、新聞の記事でも、数値に関してはもっと分かりやすく書く
べきです。1立方センチメートルあたりという発表の仕方そのものが情報操作です。
ウソではありませんが、意図的に分かりにくくさせる数値の出し方で、東電や
保安院が繰り返してきたテクニックです。今となっても、そんなことに知恵を
回していることが残念ですし、新聞がそれをそのまま書いてしまうことも残念です。


さて非常に心配されるのが、被曝された方たちの容態です。
被曝線量は2から6シーベルトというとんでもない値です。全身に浴びたら
致死量になります。

主に漬かった足に集中的な被曝が起こったと解説されています。
水がたまっており、そこからは放射線は飛びにくいからでしょう。ただ他の
ニュースでは、その地域は、毎時400ミリシーベルトぐらいの放射線が
出ていたとも報道されているので、この方たちは、全身にも強い放射線を
浴びていると思います。

被曝された方たちのダメージが、少しでも軽微であることを祈るばかりです。


****************************

放射性物質、原子炉燃料破損し漏出か 3号機に被曝汚水

原子炉建屋とタービン建屋

東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)3号機のタービン建屋内で起きた
作業員の被曝(ひばく)で、経済産業省原子力安全・保安院は25日、
原子炉の燃料が破損して放射性物質が漏れ出た可能性が高いとの見方を示した。

1、2号機でも同じように放射線量の高い水がたまっているのが見つかった。
東電は地下のケーブル敷設作業を中止した。電源復旧作業がさらに遅れる可能性が出てきた。

東電や保安院によると、被曝した3人の作業員は、
3号機のタービン建屋でケーブルを敷設している最中に、足元にあった水につかったとみられる。
水からは通常の原子炉内の冷却水より約1万倍強い放射能が検出された。

保安院はこの水が、使用済み核燃料の貯蔵プールより、
原子炉内から漏れ出した可能性の方が高いとみている。
水にはセシウム137など燃料の破損を疑わせる放射性物質が含まれていた。

炉内は周囲より高圧を保っていることから、
原子炉圧力容器に亀裂などの大きな損傷があるわけではなく、
壊れた配管などから蒸気や水が出て流れ着いたのではないかという。
原子炉のある建屋はタービン建屋の隣にある。
作業員らがいた地下1階は直接通じていないものの、1階は扉を通じて行き来できる。

水たまりは1、2号機でも見つかった。
1号機のタービン建屋地下の水たまりで24日採取した水からは、
3号機とほぼ同じレベルにあたる
1立方センチ当たり380万ベクレル(放射能の単位)の放射能を検出した。

東電は25日、原子炉を冷やすための消防ポンプによる注水作業について、
1号機と3号機を海水から真水に切り替えた。
塩分によって炉の周りにある配管や機器が傷んだり、詰まったりするのを防ぐためだ。
2号機についても準備が整い次第切り替えるという。

電源関係では、1、3号機に続き、2号機の中央制御室の照明復旧に向けた作業が進められた。

(2011年3月26日3時0分 朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0326/TKY201103250550.html


被曝作業員の放射線量は2~6シーベルト やけど治療も

 福島第一原発で被曝(ひばく)した作業員2人が、
汚染した水につかっていた足に浴びた放射線量は、
約2~6シーベルトと推計されることがわかった。
2人を検査した千葉市の放射線医学総合研究所(放医研)が25日に発表した。
10日ほどして足にやけどの症状が現れ、治療が必要になる可能性があるという。

 労働安全衛生法などで、作業員らが緊急作業時に皮膚に受けていいとされる放射線の限度量
(1シーベルト)の2~6倍に当たる。
今回の原発事故で1シーベルト以上の高線量の被曝は初めて。

 国際放射線防護委員会(ICRP)によると、
今回のように皮膚の限られた部分に3シーベルト被曝した場合、一時的な脱毛が起こり、
6シーベルトでは赤い斑点ができる。
単純に比べられないが、全身の被曝量が3~5シーベルトだと半数の人が亡くなるという。

 放医研によると、2人とも現状では全身の状態に問題はない。
白血球の数の変化や皮膚の状態を観察する。
吸い込んだ放射性物質による内部被曝もあったが、治療は必要ないとみられるという。

 2人は24日、原発の復旧作業中に汚染された水が靴の中に入り、くるぶしから下に被曝した。

(2011年3月25日23時11分 朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY201103250508.html

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地震続報( 45 )いわき市のボランティアから

2011年03月26日 09時10分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 09:05)

昨夜、遅くに、いわき市にボランティアに入っている方からの報告が、
僕が新しく参加したMLに届きました。3月26日0時3分の着信です。

こうして原発の近くまで入って、人々を支えようとしている活動には
頭が下がります。今後、こういう方も念頭にいれて、避難の必要性に
ついての情報を伝え、同時に、避難できない場合に、少しでも放射線
被曝に対処できるあり方を発信していきたいと思っています。

そのためにもまずは情報のシェアが大切だと考え、投稿をした「よし」
さんと直接、連絡をとり、各地の様子を互いにシェアしていきたいので、
転送させて欲しいとお願いし、快諾を得ることができました。

今後、可能な限り、このような報告も行って、さまざまな被災地と
連携しながら、情報発信を行っていきたいと思います。
よしさんの報告をご覧ください。

(なお、よしさんがどういう方か、知らないのですが、いわき市に
ボランティアに入っている方というだけで十分だと考えて
みなさんにお知らせします)


*********************************

よしです。福島第一原発から40キロほど離れたいわき市に災害
ボランティアに来ています。

避難生活をしている人の数は16000人から3000人ほどに減り、
ボランティア不足はかなり解消されてきたようです。ガソリンスタンドに
長い列ができ、食品店も少し開いてきました。しかしまだ半分ほどし
か水が来ておらず、ガスも来てない家も多く、いわきの人々はかなり
疲れているように思えます。しかも原発の不安が色濃く、なかなか生活
再建に集中できない複雑さを抱えています。

支援物資はかなり集まってきて、今日は午前中に支援物資を病院に運び、
午後に公民館で市民への食糧配布、今は支援物資の集積場になってる
競輪場で夜中に着く荷物を下ろす仕事を手伝わせていただいています。

「原発が爆発したら東京も終わりだ!」

なげやりな言葉を何人かの人から聞きました。首都圏に送る電気を
作るために犠牲になった福島。東京の水道水から放射能が出たことを
「天罰」だと揶揄します。石原都知事の無神経な発言が被災者たちの
脳裏にこびりついているのでしょう。

しかし表立って東京電力や原発を非難する人があまりいないことを
不思議に思っていたら、一緒にボランティアをしたサーファーが
そのわけを教えてくれました。

「ほとんどの人が、親戚に一人ぐらいは東電に何らかの形で仕事を
もらってたから、堂々と非難できないんですよ。」

この文章を書いてる途中に東京からトラックが着きました。運転手は
水が少なくて…と何度もつぶやきながら、立川の市民がかき集めた
物資を下ろしてくれました。
「ずっと来たかったんだ。つまんねぇ仕事してるより、よっぽどいい。」

今夜の私はかなり複雑な気持ちです。


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地震続報( 44 ) 福島からの悲報についての追記がありました!

2011年03月26日 02時52分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 02:38)

先ほどの福島からの悲報に関して、その後の情報などないか
ネットを探し回り、3月21日づけて、「当事者の追記」というものが
出されていることをキャッチしました。

それによると、状況は改善されているそうです。良かった!!
しかし一時にせよ、このような状態にある地域が陥っていたことを
知ることは重要だと思います。

またこのような状況が再び生まれないためにも、原発に近い地域からの
可能な限りの避難を広げていく必要があると思います。



++++++当事者の追記 3月21日+++++

この震災直後の悲惨な状況は、
改善されつつあると追記が掲載されました。
以下です。


  この記事を読みに来て下さった方々へ

私が、上記の情報を、友人から受け取ったのは、
19日の朝8時頃ですが、実際に、このメールが書かれたのは、
それ以前のことで、更に、####先生が、**先生にメールを送ったのは、
それ以前のことで、△△△病院からのメールが発信されたのは、さらに以前のことです。

今回のような内容の情報は、
発信した時点では、できるだけ多くの人々に知って欲しい、という一点に尽きるのですが、
それが、いつの時点での現状なのか、
それから、その状況が改善されたのかどうか、改善されたのであれば、
この情報をそのまま広めることは、事実の伝達にはならないですし、
改善されたことも周知しなければならないと、思い至りました。

このメールを知らせてくれた私の友人Aさんは、
このメールを読み、某県警の関係者の知人に連絡を取り、
当該県警への警備強化を依頼したそうです。
また、テレビ等の情報により、自衛隊が派遣され、
状況が改善されつつあることを確認したそうです。

今後、この日記を引用される方は、
現状は改善されつつあることを、忘れずに付記して下さい。よろしくお願い致します。

(以上、3月21日 追記)

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地震続報( 43 )福島から悲報が

2011年03月26日 02時04分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110326 02:05)

みなさま。
福島から悲報が届きました。あまりのことに絶句し、涙がとまりません。
せめて、この事実をシェアしあい、私たちに何ができるか考え抜きたいと思います。
どうしたら、福島の人たちを救えるのだろう・・・。

僕自身は、さらに勇気を持って、情報発信を続けようと思いました。

このメールは転送しても良いそうです。
どうかお知り合いにお伝えください。


****************************

福島県の&&にいる、
4月末に当救命救急センターを見学にくる予定だった##先生(研修医新2年目)に、
心配で数日前にメールしましたが、先ほど返事がきました。
転送します。みなさんと、冷静に、今我々に何ができるか、考えたいと思います。

**先生
沢山伝えたいことがありますが、あまり時間がないので、実情をお伝えします。

まず、ERアップデートで賞をとった「△△△病院」の医師から
当院医師に届いたメールの内容は周辺に死体が浮いている状況(現在も)で、
病院には患者以外の人も押し寄せ、院内に住み着いている状態。
院内はアンモニア臭でたちこめ、スリ、強盗などが多発し、
メール には書けないような事件も多々発生しているとのことです。

ベッドが足りず、床に寝かせ、ストレッチャーで廊下に患者さんを並べながら
治療しているとのこと。
物資が圧倒的に足りず、薬、食料などなく、職員は一日おにぎり一個で働いているけれど、
疲労が蓄積し限界に近付いているとのことです。
物資が届いているのは約1割ほどの人だけだと。
一方、私たちにとっては災害に加えて原発による問題が非常に大きくのりかかってます。
(というか、もはや福島県だけの問題ではないのですが)
今、福島県内の病院では、50歳以下の医師を逃しているところが出ています。

しかし、病院としての方針はあくまで診療継続で、科長の判断で避難させているとのことです。
つまり、職務放棄になるから、科長の判断という形をとっているのです。

知人がいる$$$の病院の麻酔科について書きますと、
緊急オペのために部長が一人残り、麻酔科部長命令で若手医師に退避命令が出されました。
残ると言った若手医師達に対して部長は「命令だ、生きろ」と言ったといいます。

自分の実家は△△市内なのですが、父は△△の隣の△△△市という場所で開業しています。
職場近くの国道45号線では、津波に襲われ、
運転中に水死した人が今でも車の中にいるとのことです。
そしてそんな車がずっと続いてい る光景だということです。
△△出身の私ですら、正直話を聞いてもテレビを見ても
これは現実なのだろうかと思うこともあります。

職場は半倒壊で、危険なため職員には休業を宣言しましたが、
父は今日も病院の玄関で一人で患者さんに薬を処方しています。
(父は糖尿病専門医で、インスリンの在庫があるうちは続けるといっています)
皆、家族を失った人も、遠くから歩いて受診しに来るため、
できるかぎりやるといって動きません。

臨界になれば地区が封鎖されますが、
それでも福島県内にも一人で腹を決めて残って診療を続けている開業医が沢山います。
そういう人たちのことも、屋内退避になっている人のことも、国は実質見捨てているのです。

逃げたくても、高速バスは週明けまで満席、
ガソリンがなくて動きたくても動けない交通事情もあり、もし避難範囲が拡大しても、
全員が退避できるとは到底思えません。
どうしようもない状態です。
私たちの病院では、△△XX病院と関連施設ということもあり、
△△XXからの患者受け入れを行っていました。
実情としては放射線チェックがままならないまま患者が押し寄せています。
今日、院内で撮影されたフィルムに放射性物質が黒く写りこんでいたとのことです。

私個人については、おそらく今日の医局会で若手医師の動向が決まると思います。
私は避難許可が出たら避難します。
どんな言い訳をしても、その場合、私は職務放棄する医師になるのでしょう。
正直昨日までは心の踏ん切りがつきませんでしたが・・・・・今はもう覚悟を決めました。
でも、私達に生きろと言ってくれる年配の先生方は残ります。それが辛くてなりません。
でも、だからこそ、なんとしてでも、東北を支えるためにも、
医師としてなんとか還元するためにも、私は生きます。

最後にお伝えしたいことがあります。
数年前、福島原発の周辺住民への被ばく関係データを東京電力が改ざんした事件がありました。
そのとき、福島県知事は東京電力に抗議し、都民に節電をお願いしたらしいのですが、
実際節電は実施されましたが、都民の反発が尋 常ではなかったとのことです。
「なんで私たちが節約しなきゃならないの」
とあからさまに反発した人がほとんどだったとのことです。

そして、今、避難者に対する差別が東北の中ですら
(たとえば日本海側に逃げるなどで△△などに逃げた人に対しても)差別があるらしいです。
同じ日本人なのに、と私は本当に本当に悲しいです。
今こそ、日本全土の皆さんに考えなおして欲しいのです。
都知事の発言も絶対許せません。狂ってます。
もし彼が再選されたら、私は日本人を信じられなくなりそうです。

**先生、よかったら、誰かにこのことを伝えて下さい。お願いします。
以上です。




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地震続報( 42 ) 被曝線量をめぐる「争い」について

2011年03月26日 01時14分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日

守田です。(20110326 01:10)

Nさんという友人が、あるところに、今、なぜ自分がこの問題での発言を続けるのかという文章を書いてくれました。長いので、ここで紹介できないのが残念ですが、この機に、僕の動機も 書いておこうと思いました。

いろいろあるのですが、高木仁三郎さんという方が書いた最後の二冊の書物、岩波新書の『市民科学者として生きる』『原発事故はなぜくり返すのか』に深い感銘を受けたことがあげられます。そしてもう一冊、大変深い印象を受けた本があります。
同じく岩波新書で『原発事故を問う-チェルノブイリから、もんじゅへ』、七沢潔著です。本の謝辞をささげた相手の中に、高木仁三郎さんのお名前もあります。
 
同書の中で、七沢さんは、こう述べています。
「私にはもんじゅ事故の周辺に、チェルノブイリ事故が発していたものとよく似た「におい」が感じられてならないのである」。

同じ「におい」とは、事故の隠ぺい体質であり、人々の命よりも、国家のメンツを優先するあり方です。そのために、被曝を避けられた多くの人が放射能をかぶってしまった。放射性物質が降る中、共産党を讃えるパレードすら行われてしまいました。

いつか大事故が起こった時、この国では同じことが起こりうる。・・・僕はずっとそう思っていました。だから事故の一報を知ったときから、 ニュースにかじりつき、隠されいるものを解析し、それを人に伝えようとしてきた。今も僕を突き動かしている動機はそれです。
僕には、今、ここで僕が発言をしなかったら、僕は僕の生涯を裏切ることになるという思いがあります。だから切羽詰まってもいるのですが、たびたび緊急冷却装置を働かせて、「感情的」にならないようにしています。
 
さて、社会的な「論争」は局面が変わっていたように思えます。
初期的には、この事故が大事故に発展する可能性を持っているのか、ないのかでした。「チェルノブイリのようになるのか、ならないのか」です。僕は当然の話、まったくなって欲しくはありませんでしたが、なる可能性が高いし、むしろそれは隠ぺい体質で促進されると思ってきました。

これに対して、「大災害になるという脅しに屈するな」などという言葉が飛び交っていた。チェルノブイリにようにはならないという断言をする某大学名誉教授の見解などが、ネットにたくさん流れました。
事実は、残念ながら、事故の拡大の側に進んでしまった。そして国際的な声として、現状が、チェルノブイリの半分近くまで近づいていることが明らかにされるようになった。
 
そうしたら今度は、放射能の影響に、論点が移りだした。放射能は実はそんなに怖いものじゃない。規制値はかなり緩いので、それを超えても「ただちに健康に害はない」。さらにチェルノブイリでも大人はガンにかかってない。そんなに恐れることはないという言葉が語られています。

その際、論拠の一つとなっているのは、IAEAや、国連が行った調査です。IAEAの調査に日本は、団長として疫学の権威の重松逸造氏を送り込んだ。この方は、水俣病とチッソの関係を否定する調査報告を出したことで有名な方です。そしてこのときは、ソ連の意向に従う形で調査を進め、最も厳しい汚染地域の人々や、事故処理にあたった60万人の人たちが、調査から外されました。
そうして放射線被曝の影響が非常に小さく報告されました。そればかりか、被害はむしろ放射能の恐怖によってもたらされたという結論がトップに来ていました。
  
今から強まってくるのは、同じ論議ではないかと思います。現状では政府の見解が完全にわれだしています。厚労省は、子どもに対してのヨウ素の規制値を厳しくして、それを超えた水を飲まない方がよいと訴えた。
すると政府ではないのですが、ある医師の学会が、基準値を超えていても、妊婦が妊娠期間飲み続けてすら大丈夫だと声明しました。ちなみにこの学会は僕が尊敬する医師の方がたくさん入っており、これまで医療の改善を訴える、切々とした声明をたくさんだしてきたところでもあって、僕が長く支持し、学んできた学会です。

ここでもまた論議が複雑になってきている。
 
実際、医師たちの中に、「必要以上に怖がることの方が危ない」と思っている方がいることは事実でしょうし、そこには真実が含まれているとも言えます。しかしそれでは規制値とは何なのか。厚労省はなぜ厳しくしたのか。そこに重要な問題が横たわっている。「必要以上」の「必要」がどこにあるのかが問われている。

この点で再び、僕らは、「放射能の恐怖を強調して人々を苦しめるのか」、「放射能による脅しに屈するな」とかいう論議に向き合わざるを得ない。事実、場合によっては、怖がらせすぎになって、相手を苦しめてしまうかもしれないという苦悶が押し寄せてきます。

しかしだからといって、なし崩し的に、「チェルノブイリでは大人は大丈夫だった」とか、「人体に影響があるのは100ミリシーベルトから」などという論議を見過ごすことはできない。このデリケートな道が、ここから続いているのだと思います。僕はここに踏み込んでいかなければならないのだなと思います。
 
まとめましょう。
僕がこの情報発信を始めた動機は、七沢さんによって、この国が非常に深刻な情報隠ぺい体質を持っていることでした。しかしよく調べてみると、むしろこれは、原子力政策全体に共通することだと言えそうです。もともと軍需産業だからです。IAEAだって、核クラブが作っている組織です。

だからもともとここに放射能の恐ろしさを隠ぺいしようとする体質が組み込まれている。核兵器を持つことは、放射線被ばくのリスクを大きく持つことであることをいかに国民から隠すのかということが、重要な軍事的課題であったわけです。
 
こう考えると、課題はあまりに重く感じられますが、しかし重要な事実は、ソ連は、事故当初も事故後も、実態を隠し、あるいは過小評価することにやっきになったけれども、その結果として、ソ連邦の崩壊にいきついてしまったという事実です。チェルノブイリ事故は、ソ連崩壊の非常に大きなファクターだったと多くの社会学者が指摘しています。
  
同じように、今回の事故の中で、今、この国の人々は、原爆製造から生まれた原子力政策がどういうものか、身をもって体験している過程にあると思います。ソ連の場合は、逃げることができた人の多くが騙されて逃げることができなかったことが、政府不信の決定的要因になったわけですが、日本の場合は、その前に、政府の事故隠しに自ら気づき、自主的に対処を広げたという先例を作りたいものです。
  
実際、多くの人々は、政府が考えているよりは、ずっと賢いと僕は思っています。同時に、ずっとつつましやかです。だから再び、放射能の恐怖をあおるなという風が吹き出すと思いますが、(というかもう吹いていますが)、人々を信じ、また実際に、この点に十分気を配りながら、僕は僕の提言を続けようと思います。

みなさん、どうか引き続き、お力をお貸しください。
 

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地震続報 ( 41 )進行する危機の実態を見据えよう!

2011年03月25日 11時56分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110325 11:55)

昨日、僕は、ロイター通信の記事に踏まえて、現在進行する事態は、
ゆっくりと進むチェルノブイリ級事故なのではないかという洞察を書きました。
これに対して、朝日新聞からも同様の内容を伝える記事が出ましたので
紹介します。


福島原発から放出された放射性ヨウ素は、3万から12万テラベクレル

それによると事故発生後、24日までに発生した放射性ヨウ素は、3万から
12万テラベクレル(テラは1兆倍)にもなるとのことで、事故レベルは、
スリーマイル島事故を超え、数千テラベクレルから数万テラベクレルの放射性
ヨウ素の放出にあたるレベル6になるとのことです。

これに対してチェルノブイリ原発事故での放出量は180万テラベクトル。
まだそこにはおよんでいませんが、福島原発はまだまだ放射性物質と放射線を
出し続けています。

ただしこの記事の後段には注意が必要です。ここでは次のようなことが載って
います。

汚染地での被害について、
「長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は「チェルノブイリ原発事故後でも
小児甲状腺がん以外の健康障害は認められず、すぐに健康を害するとは
考えにくい。高い汚染が見つかった地域では、データをもとに住民と十分に
話し合って対応を考えてほしい」と話している。」

という記事です。
・・・とうとう、チェルノブイリ級事故であっても、「すぐに健康を害するとは考え
にくい」という言説が飛び出してきました!
ちなみに昨夜のNHKクローズアップ現代でも、「チェルノブイリの経験から
大人は被曝しても問題はない」という唖然とする断言が行われていました。
放射線量と被曝の関係についての整理を急ぐ必要があります。


現場の専門家が、福島原発の危機的状況を指摘

次に、原発の現状に関して、冷静な観点で、危機をも踏まえていると思われる
記事が産経新聞に載りましたので、紹介します。
妙な言い方ですが、こういうトーンの記事が出た方が、僕は少しだけ安心できる
ように思えました。現場が危機と正面から向かい合っている感じが伝わって
くるからです。

記事の中では
「今後の対策、展望は  電源が回復しても、1~3号機は炉心が一時的に
露出し、専門家は「予断を許さない状況に変わりはない」と口をそろえる。
注水できないという最悪シナリオを想定すれば、核燃料が溶け出し、
原子炉圧力容器を溶かして破壊するケースも否定し切れないという。」
と最悪のケースにもきちんと触れられています。

こうした認識があってこそ、最悪の事態を防止する最大限の力が発揮されうる
のではないでしょうか。しかも専門家が口をそろえているとのことで、私たちも
こうした現場の緊張感とタイアップしながら、それぞれの場で、自分たちを、
人々を、放射能から守る工夫を重ねたいものです。現場の命を削った奮闘と
手を取り合って、さらに努力を重ねましょう。

情報発信を続けます。


****************************

福島第一原発事故、スリーマイル超えレベル6相当に

 東京電力福島第一原発の事故は、放出された放射能の推定量からみて、
国際評価尺度で大事故にあたる「レベル6」に相当することがわかった。
すでに米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回る規模になった。
局地的には、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染も見つかっている。
放出は今も 続き、周辺の土地が長期間使えなくなる恐れがある。

 原子力安全委員会は、SPEEDI(スピーディ)(緊急時迅速放射能影響予測)システムで
放射能の広がりを計算するため、各地での放射線測定値をもとに、
同原発からの1時間あたりの放射性ヨウ素の放出率を推定した。
事故発生直後の12日午前6時から24日午前0時までの放出量を単純計算すると、
3万~11万 テラベクレル(テラは1兆倍)になる。

 国際原子力事象評価尺度(INES)は、
1986年のチェルノブイリ原発事故のような最悪の「レベル7=深刻な事故」を
数万テラベクレル以上の放出と定義する。
実際の放出量は約180万テラベクレルだったとされる。
今回は少なくともそれに次ぐ「レベル6」(数千~数万テラベクレル)に相当する。

 経済産業省原子力安全・保安院は18日、
福島第一原発の1~3号機の暫定評価を「レベル5」と発表したが、
今後放出量の見積もりが進めば、再検討される可能性が高い。

 土壌の汚染は、局地的には、チェルノブイリ事故と同レベルの場所がある。

 原発から北西に約40キロ離れた福島県飯舘村では20日、
土壌1キログラムあたり16万3千ベクレルのセシウム137が出た。
県内で最も高いレベルだ。京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)によると、
1平方メートルあたりに換算して326万ベクレルになるという。

 チェルノブイリ事故では、
1平方メートルあたり55万ベクレル以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となった。
チェルノブイリで強制移住の対象となった地域の約6倍の汚染度になる計算だ。
今中さんは「飯舘村は避難が必要な汚染レベル。
チェルノブイリの放射能放出は事故から10日ほどでおさまったが 、
福島第一原発では放射能が出続けており、
汚染度の高い地域はチェルノブイリ級と言っていいだろう」と指摘した。

 金沢大の山本政儀教授(環境放射能学)によると、
1メートル四方深さ5センチで、土壌の密度を1.5程度と仮定すると、
飯舘村の1平方メートルあたりのセシウム濃度は約1200万ベクレルに上る。
チェルノブイリの約20倍。「直ちに避難するレベルではないが、
セシウムは半減期が30年と長い。
その場に長年住 み続けることを考えると、土壌の入れ替えも必要ではないか」と話した。

 健康への影響はどうか。チェルノブイリ原発事故では、
強制移住の地域では平均50ミリシーベルト程度の放射線を浴びたとされる。
しかし汚染地での長期の住民健康調査では、成人では白血病などの発症率は増えていない。

 甲状腺がんは増えたが、事故当時小児だった住民が
放射性ヨウ素で汚染された牛乳などを飲んで内部被曝(ひばく)したためとみられている。
飯舘村の24日午後までの放射線の総量は、3.7ミリシーベルトだ。

 長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は
「チェルノブイリ原発事故後でも小児甲状腺がん以外の健康障害は認められず、
すぐに健康を害するとは考えにくい。高い汚染が見つかった地域では、
データをもとに住民と十分に話し合って対応を考えてほしい」と話している。

2011年3月25日3時0分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY201103240465.html


電源回復「これから本当の勝負」どうなる福島第1原発

 東日本大震災で深刻な被害を受けた東京電力福島第1原発の1~4号機で
通電が可能な状態になり、復旧に向け光明が差しつつあるが、
専門家は「電源回復だけで事態が好転するわけではない」と、楽観を警戒する。
第1原発は今後どうなるのか。
核燃料が残されたままの1~3号機の原子炉圧力容器内では一部炉心 が溶融した可能性もあり、
専門家は「予断を許さない状況に変わりなく、これからが本当の勝負」とみる。

 ■当面の状況は原発を運転・監視する“頭脳”である中央制御室の電源が回復すれば、
原子炉の状況が正確に把握できるようになると期待される。
京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授(原子力基礎工学)は
「電源回復で計測機器のデータが正確なのか把握でき、
故障箇所が分かれば修理すべきところもはっきりする」と強調 する。

 大阪大の宮崎慶次名誉教授(原子力工学)も
「放射性物質(放射能)を除去できる空調を動かして放射能レベルを下げられ、
中央制御室での長時間作業が可能になる。照明で夜間も作業できる」と期待を示す。

 ただ、専門家は「電源回復=設備復旧」という単純な見方には否定的だ。
宇根崎教授は「電源回復でも、本格的復旧にはまだ時間がかかる」とし、
九州大学の工藤和彦特任教授(原子力工学)も「電源回復と機能復旧は違う。
ただちに原子炉の状況が好転するとは限らない」と指摘する。

 課題は何か。
電源が回復しても冷却水を循環する冷却システム自体が損傷などで機能しない可能性があるが、
「機器がどれだけ壊れているのかも分からない」(工藤特任教授)。
機器の健全性確認が急務となる。

 ■懸念材料は  懸念材料は機器損傷だけではない。
「現場で対応している作業員の体力、精神力は限界に達している。
ヒューマンエラーの発生が懸念される」と指摘するのは、宇根崎教授だ。

 実際、14日には職員がパトロールで目を離したすきに、
2号機へ海水を注入していたポンプが燃料切れで停止。原子炉内の水位が低下し、
“空だき”状態になる事態が発生した。

 宇根崎教授は「電源回復で新しい作業が増えると、今まで以上に慎重さが求められる」
と警鐘を鳴らす。

 一方、原子炉や使用済み核燃料貯蔵プールに注入された海水が故障原因となったり、
海水の蒸発で結晶化した塩が燃料棒に付着、冷却を妨げる恐れもあり、
工藤特任教授は「海水は緊急避難措置。早く真水に変えるべきだ」と強調する。

 ■今後の対策、展望は  電源が回復しても、1~3号機は炉心が一時的に露出し、
専門家は「予断を許さない状況に変わりはない」と口をそろえる。
注水できないという最悪シナリオを想定すれば、核燃料が溶け出し、
原子炉圧力容器を溶かして破壊するケースも否定し切れないという。

 ただ、冷却水を供給する本来のシステムが復旧しなかった場合でも、
熱交換器と呼ばれる装置を緊急的に取り付けて冷却させることが可能だといい、
工藤特任教授は「核燃料が完全に溶けて大きな核分裂反応につながることはない。
冷やすことが大事だ」と話す。

 一方、原子炉建屋が壊れ、放射性物質を含んだ水蒸気を
大気中に放出したとみられる使用済み核燃料貯蔵プールも厳しい状況だ。
工藤特任教授は「放射能の放出を抑えるには、
今後、コンクリートか鋼鉄製のふたで密封することが必要」と指摘している。

産経新聞 3月24日(木)20時27分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110324-00000638-san-soci

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地震続報( 40 )【重要】武田邦彦さんの言説の信ぴょう性について

2011年03月25日 10時33分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110325 10:30)

放射線量と被曝の影響の問題について、僕は表題で触れた武田邦彦さんの
ブログを紹介しました。これに対して、信頼する友人たちや、科学ジャーナリスト
の方たちより、武田さんは、それこそ科学的な観点を欠いた断言を他のところで
繰り返している人物であり、信用できないという意見をいただきました。

問題の放射線量と被曝の影響に関する記述そのものについての
踏み込んだ指摘も一部いただいており、その点についてもあとで
まとめたいと思っていますが、ともあれこの方が、多くの方から、
信頼できない方と評価されていること、この点について早急にお知らせ
せねばと思いました。

僕としては、武田氏の他のところでの言説を吟味することよりも、問題を
放射線量と被曝の影響の問題に絞り込み、より確かで信ぴょう性の高い
情報のリサーチと発信を続けたいと思います。

みなさま。信頼性の低い方を紹介してしまい、どうも申し訳ありません。
今後の努力で挽回します。
貴重なご指摘をいただいたみなさま。助けていただいてありがとうございました。
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地震続報( 39 )ゆっくりとしたチェルノブイリの中を生きる

2011年03月25日 00時05分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110324 23:55)

ロイター通信をチェックしていて重要な記事を発見しました。
表題は「福島原発の放射性物質、チェルノブイリを下回る」となっていますが、
うまく内容を伝えていません。そうではなくて、すでに福島原発から
放出された放射能が、チェルノブイリの2割から5割になっているという記事です。

これは事故後、3日間から4日間を調査した、オーストリア気象地球力学
中央研究所の見解です。一方で、フランスの放射線防御原子力安全
研究所は、1割だとの試算を出しています。
これらを総合すると、すでに福島原発からは、チェルノブイリの1割から5割の
放射能が出ていることになります。しかも事故後4日間でです。

ゆっくりとしたチェルノブイリ級事故が進行しています・・・・・。

幸いにというべきか、放射能の多くは、太平洋上をただよっているようです。
それが太平洋上の島々の汚染につながらないこと、他の大陸まで動いて
いかないことを祈るばかりです。海洋汚染が、できるだけ軽微にすむことも
祈りたいですが、ともあれ、海洋上に放射能が流れたために、国内では、
まだチェルノブイリのような被害の実感はほとんどありません。

しかしある意味で私たちの実感がない中で、地球の汚染というレベルでは
確かにこの事故は、チェルノブイリ級にどんどん近付いていっているのだと
思います。この事態の重みを受け止めることが必要です。すでに私たちは、
チェルノブイリ級事故をゆっくりと経験している可能性が高いです。

もちろん、炉心が破断してしまい、より大規模に汚染が広がってしまう危機も
まったく去っていませんが、このままこうした状態、つまり断続的に放射能が
出続ける状態が、長期にわたって続く可能性もあり、今と同じような、ないしは
もう少し危機感が深まるぐらいのレベルで、いつしかチェルノブイリをも
越えてしまう必要があります。

にもかかわらず、テレビ番組はほとんど通常の状態に戻りました。春の選抜
高校野球も開催され、バラエティ番組も復活しています。それが悪いといい
たいのではなくて、いつか歴史上、人々は今、私たちが過ごしているこの
時間帯を、奇妙な数十日、ないし数週間とでも呼ぶようになるのではないで
しょうか。

ゆっくりと大規模な放射能汚染が広がる最中にありながら、その中でたんたんと、
日常生活が営まれている。しかも旧ソ連とは違い、建前であろうとなんであろうと
民主主義がうたわれ、情報機器が発達し、人々がいつでもお望みの情報を
集められる状況の中にあってです。


・・・いやいや、そのように慨嘆してはいけませんね。
そうではなくて、私たちは覚醒する必要があるのだと思います。危機はゆっくりと
進行している、ゆっくりとチェルノブイリ級事故が進んでいる。それは止められる
かどうか分からないけれど、いずれにせよ私たちには、チェルノブイリのときより
時間がある。対処できるゆとりがあるのです。その間にいろいろな英知を集める
必要がある。

重要なのは、放射能汚染とどう立ち向かうのかです。汚染がどんどん深刻化
している事態を見据えて、可能な限りの避難を進めることです。そのための
目安となるものをお伝えしてきましたが、次の見解も非常に参考になります。
「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」のものですのでご覧
下さい。
「福島原発震災」をどう見るか―――私たちの見解
http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf


さらに太平洋上に広範囲に広がった放射能が、いつしか南風によって運ばれて
くることももはや可能性としては否定できません。そのとき汚染地域がどうなるか、
誰にも予想はつかないと思います。

チェルノブイリの経験でいっても、汚染はスポット型になるでしょう。つまり原発
から均一に汚染が進んでいくのではなく、たまたま放射能を多く含んだ雲が、
雨を降らした地域が集中的に汚染されます。

高濃度の地域では居住ができなくなるかもしれませんが、ボーダーラインの地域
では、私たちはある意味で放射能との共存を考えざるを得ない面も出てくると
思います。
だからこそ、安全値や、どのぐらいの値でどのような被害が出るかの正しい
認識が必要です。そしてさまざまなメリット・デメリットを換算する中で、健康に
害が出ることも選択せざるを得ない面もあると思います。だとしたら、追い詰め
られて選択するよりも、能動的に選択したいものです。

そのときに私たちはどうするのか。健康生活に徹し、食生活において
化学物質などを極力排除して、免疫力を高めていくことが真っ先に浮かぶ
ことです。また野菜が汚染されるのだとしたら、綺麗に洗えば、その分だけ
放射性物質が落ちるとか、果物なら皮をむけば、落ちるとか、そうした
知識も身につけていく必要があります。

さらに放射能汚染はガンのリスクを高めるわけですから、ガンに対する
正しい知識を積み上げて行くことも重要です。幸い、昨今の医学の目覚ましい
進歩の中で、さまざまな抗がん治療法や治療薬が開発されています。
また私たちには、ガン患者の方たちのさまざまな闘病の経験もあります。

それらを総動員して、たとえ被曝したとしても、それと立ち向かっていくことは
できます。こうしたことに腹をくくり、その上で、少しでも被曝を軽減したい
ものです。被曝したらもうおしまいなのではなく、そこから先もたくさんの
ストーリーがあることを頭に入れながら、放射能を「正しく怖がる」知恵を
身につけて行きたいものです。

その際、専門家の方たちにお願いしたいのは、「ただちに健康に被害を
およばさない」という言い方は、もはや不安をあおるものでしかないので、
やめていただきたいということです。ただちにではなければ、いつから、
どれぐらいの被曝で、どのようなことが起こるのかを明確にすることが
大切です。

つまり「安全だ」ではなく、「これぐらいの危険がある」と事実が明確になった
方が、「それぐらいなら我慢をしよう」「いやそれでもいやだ」という自己判断、
自己選択が可能になるのです。

この点について、僕自身、これまでこの数値を編み出そうとずいぶん悩み、
もがいてきましたが、これは僕が個人で出すべき回答ではないという結論に
達しました。これは専門家集団を中心に、社会的に決するべきことだからです。

そしてそれまでは、一般人の許容範囲である年間1ミリベールとの被曝許容
量を順守すべきです。またそれが明らかに避けられない状態に立ち入ったにも
関わらず、自分がその場を立ち去れない場合は、一つの目安として、放射線
に関わる仕事をしている人の許容量が50ミリシーベルトであることを念頭に
おくとよいのではないでしょうか。つまりそこまでのリスクを自ら選択すると
いうことです。

にもかかわらず、年間1ミリシーベルトを超えてもただちに健康に影響は
ないとか、規制値を越えたものを食べても大丈夫だとかを繰り返していると、
そもそもの数値に対する信頼が崩壊してしまいます。むしろ規制値の根拠、
これこれこうだからつまりどれぐらいの危険性があるから、この規制がある
のだという点を打ちだし、その上で、リスクを承知でお使い下さいと言うべきです。
その場合、リスクが非常に低いなら、その数値こそをだすべきです。その方が
人々は安心し、風評被害も出にくくなるのではないでしょうか。


ともあれこの国の全体を見回すならば、もはやすべての人が、今回発生した
放射能の被曝をうけずに暮らすことは不可能です。だから私たちは、そうした
人々、とくに今、福島の方々をはじめ、原発周辺に残って、逃げられない人々を
置きざりにしないためにも、今ここで、みんなで放射能について勉強し、
知識を蓄え、それでもって社会的に、放射能の害と立ち向かっていく
必要があります。

その際に、放射線はときに私たちの味方にもなってきたことを忘れない
ようにしましょう。放射線の害は、私たちにガンのリスクをもたらしますが、
そのガンをたたくのにも、私たちは放射線を利用しています。また
レントゲンは、私たちにそのつど、リスクをもたらすのですが、今すぐに
治療しなければならない深刻な病巣の発見など、それを上回る
大きなメリットももたらしています。


まとめましょう。
現在、私たちは、ゆっくりすすむチェルノブイリ級事故のただ中にあります。
今後の行く末は今の段階では誰にも分かりませんが、少なくとも、事態は
すぐには収まらず、まだまだ放射能漏れが続く可能性が極めて高いです。
またより大規模な事故が起こる可能性も依然、あり続けます。

こうした中で可能ならば、原発からできるだけ離れることが賢明ですが、ここに
距離を設けるのは難しい。フランスなどは自国民を本州から撤退させています。
これに対して米軍は、80キロ圏内立ち入り禁止にしています。ただしここには
日本の中にたくさんの米軍基地を有しているアメリカと、そうではないフランスの
違いがあることも忘れてはなりません。

私たちの多くにとって、本州撤退は、現実性を帯びた選択肢ではありません。
また政府や行政が組織的に動いていない今の状態では、私たちはそれぞれの
経済状態や、避難場所の確保などによって、可能な選択肢が決まってきます。
ですから、ここでは可能ならば、避難した方が良いと言う結論しかでませんが、
いずれにせよ、自らの結論を能動的に選択したいものです。


次に重要なのは、放射能に関する知恵を深めることです。それが何よりも、
放射能から身を守ることにつながります。僕自身、専門家に学びながら、
目安となる数値を出していきますが、しかしただそれを教えてほしいと受動的に
なるのは危険です。すでに多くの錯綜した見解が出ているからです。しかも
科学的に言えば、答えを一つに絞りきれない側面もあります。論争や調査の
過程にあるものも多いからです。だから自分で、この数値を信頼しようと、
決断していく必要があります。そのために知恵を獲得していきましょう。

この際、友人で尊敬する科学者の方からいただいたアドバイスを紹介したいと
思います。科学の世界では何事もあり得ないとはいいきれないということです。
例えば、原発が大事故に発展する可能性もそうですし、今から最も理想的に
瞬く間に終息していく可能性もそうです。だから科学的に正しいことを言おうと
すればするだけ、ものは言いにくくなる面もあります。

こうした中で、信用しない方がよい一つの基準は、断言された言説だと言うこと
です。絶対に大事故は起こらない、絶対に大事故に発展する、こうした断言は
科学的ではないということです。だからこそ、科学は、最終的な判断を、私たち
自身がすることを問うてもいるとも思います。

これらに踏まえて、迫りくる放射能汚染の拡大に対して、能動的な構えを
作りだしていきましょう。また大事故に発展した場合の、精神的構えをも
作りだしていきましょう。どんなところからでも、何かをできる可能性があります。
そのことを見据え、私たちのポテンシャルをあげて、この未曾有の難問に
みんなで立ち向かい続けましょう!


以上に踏まえて、情報発信を続けます。


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福島原発の放射性物質、チェルノブイリを下回る=オーストリアの研究所

オーストリア気象地球力学中央研究所は23日、
福島第1原発の事故後3─4日間に放出されたヨウ素131とセシウム137の量が、
旧ソ連チェルノブイリ原発の事故後
10日間の放出量の約20─50%に相当するとの試算を明らかにした。

 日米の測定結果を基に算出した。
 同研究所によると、事故後3─4日間のヨウ素131の放出量は、
チェルノブイリ原発の事故後10日間の放出量の約20%。

 セシウム137の放出量は、同約50%に達する可能性があるという。

 フランスの放射線防御原子力安全研究所(IRSN)は22日、
福島原発の事故で漏えいした放射性物質の量は
チェルノブイリ事故の約10%との見解を示している。
 
 チェルノブイリの事故では原子炉が爆発したが、
福島原発の事故では放射性物質が比較的ゆっくりと漏えいしている。

 一方で、放射性物質が陸上に拡散したチェルノブイリとは異なり、
福島原発の事故では放射性物質の多くが太平洋上に飛散しており、両事故の比較は難しい。

2011年 03月 24日 11:21 JST
[ウィーン/オスロ 23日 ロイター]
http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPJAPAN-20221320110324?rpc=122

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