明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(320)足立力也さんの福島再訪レポートその2

2011年11月10日 23時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111110 23:30)

足立力也さんの福島再訪レポート2を転載します。圧巻です。
足立さんは僕よりもかなり線量の高いところに入って取材しています。
前にも訪れて、毎時500μSという飛んでもない値を計測した飯舘村長泥
地区で、前より下がっていたものの、「余裕で150μS超え」だったと
いいます。

なんと言えばいいのか・・・。正直、「危ないよ、足立さん」とも思い
ました。厳重防備でのぞまないと、その値を出している物質を体の中に
取り込みかねないからです。

しかしこうした物質が現にまだ大量にあること、それは風で今後も拡散
してしまう可能性があることを読み取っておくことが大事だと思います。
今回痛感したことですが、風は街道に沿って流れやすい。街道が谷間な
どを走っているからです。人が行き来するところほど、放射線物質も
また飛びやすいと言えると思います。


またなんとも胸が痛いのは、郡山市の郡山教組会館で行われた一こまです。
ここは足立さんの迫真のレポートを引用します。

***

その後の質疑応答は、郡山市民ならでは、
かつ放射能に関する意識の高い人ならではのものばかりだった。
ひとつ心を打ったのは、「チェルノブイリハート」
日本初症例ではないかという新生児を持つ父親の言葉だった。
10月に生まれたばかりの赤ちゃんには、心室と心房に
それぞれ1か所ずつ穴があいているというのだ。
これはまさにチェルノブイリハートと全く同じ症状だ。

しかし、医者に言っても、放射能との因果関係ははっきりしない。
そりゃそうだ。
放射線は、証拠を残さず人を殺していく「完全犯罪者」だ。
プルトニウムの内部被曝ですら、「証拠」を掴めるようになったのは
ごくごくつい最近の話。

***

ちなみにあるところで、この話を紹介したところ、僕もその心臓の傷害と、
福島第一原発事故の因果性がはっきりしないので、チェルノブイリハートの
ようだというのはおかしいという批判を事後に受けました。

確かに。足立さんも書いているように、因果関係が即座に示せないのが
放射線被害の特徴であり、このケースも事故との関連がない可能性もあると
思います。でも今は関連がある可能性があれば、それを前に出す必要がある
のではないでしょうか。その意味で僕は、そのお子さんのお父さんの勇気ある
発言と、それを紹介している足立さんのレポートにとても共感しました。

ともあれみなさま、足立さんのレポートをお読みください!

***************************

福島再訪レポートその2
2011年11月5日


10月30日、朝10時に郡山を出発。
まずは東へ向かい、20km圏内ぎりぎりを目指す。
田村市に入り、福島第一原発から25kmあたりで、
歩道を高圧洗浄機で「除染」していたグループを発見。
車を止め、話を聞いてみることに。

応じてくれたのは、郡山からボランティアで駆け付けた人だった。
除染前の周囲の環境線量は0.8μSvくらい。
歩道だけ水で流しているのだが、たかが歩道だけと甘く見ていたら
とんでもなく時間がかかっていて手間取っているという。
そりゃそうだろ。

しかも洗浄前が0.8μSv、洗浄後0.7μSv。
我々が示した線量計の数字を見て、ちょっとがっくりしていた。
さらには、歩道のすぐ脇にある側溝と土手では、2.6μSv。
なんぼ水で洗い流しても、風が吹き、雨が降れば元の黙阿弥。
徒労感だけが増していくといった状態で、とても「除染」とは言えない。

「除染」とは通常、放射線管理区域に指定されるような場所で
放射性物質を漏洩させた場合、一時間当たりでいうと最低でも
0.6μSv/h以下に徹底的に放射性物質をはぎ取り、
それを厳重に管理した上で処分し、上司に始末書を書いて
「すんませんでしたー!!!」と頭を下げるような大変な事態なのだが、
今言われてる「除染」というのはあまりにもお手軽でお粗末にも
ほどがあるものだ。

実際、田村市なんかで「除染」活動をやっている人たちにも、
徒労感があふれていた。
やってもやっても追い付かないし、一雨降れば、一風吹けば
また汚染される。
そうでなくてもフクイチからは新たにフレッシュな放射性物質が
飛んできて、何度も同じ作業を繰り返さないといけなくなる。
しかも、実際にやれることは限られている。
本来なら、新たに放射性物質が飛んでこないことを前提に、
ジェルなどではぎ取らないと無意味なのだ。

やっている人たちも、それを全く知らないわけではない。
が、やらずにはおれないのだ。
つまり、どちらかというと心理的空虚感を埋める作業と言っていい。

田村市では、組ごとに「除染」作業をするかどうかを決め、
すると決めたところがそれぞれ何らかの活動をしているそうだ。
やらないと決めたところは何もしない。

やると決めたところでも、無意味ないたちごっこだということは
先刻承知でやっている。
なんというむなしさと労力の浪費だろうか。

これは、「除染」という概念を誤って(意図的に)垂れ流した
政府、東電、マスコミに負うところが非常に大きいだろう。
被災者を余計疲弊させてどうすんだ?
これ以上罪を重ねてどうすんだ?
彼らには「あまり無理せず、ともかく高汚染度のところは
だいたいパターンが決まっているので、そこには近づかないように」
とだけ注意を促して、その場を離れた。

やがて20km圏が近づいたが、21kmくらいの場所で
「道路陥没のため通行禁止」という看板が立ち、
警察車両が止まっていた。
看板曰く、「これ以上侵入すると罰せられます」だと。
なんか論点がずれてる。

しょうがないので、そのあたりの線量を測ってみるが、
やはり0.8μSvくらいで、25km圏と大して変わらない。
そのちょっと手前、23km付近で、「ムシムシランド」という
カブトムシを集めたプチテーマパークみたいなものを発見。
きっと通常なら子どもたちを集める場所なのだろうが、
こんなところに子どもたちを連れていけるわけがない。
一抹のさみしさを感じる看板だった。


さて、こうしていてもしょうがないので、そこから北上する。
葛尾村に入った頃から、ぐんぐん線量が上昇し、
車内でも3μSvを超える。
さらに峠を越えると、5μ、6μと値が急激に上がっていく。
ある峠を越えたところで、「飯舘村」という石の標識を発見。
今となっては墓標にしか見えない。
坂を下って、さらにひとつ峠を越えると、高線量地域の
長泥地区に到着。
以前500μSv/hを超える数値を叩きだした恐怖のホットスポット再訪だ。

周囲の空間線量は12μSv/h。
十字路にある掲示板には、今でも毎日モニタリングポストで計測された
数値が1日1回更新されている。
今日は11μSv/h、5月に訪れた時とほとんど変わりがない。

で、件のスーパーホットスポットへ。
今回も同じように測ってみると、大分数値は下がっていた。
それでも余裕で150μSv超え。
いつでも死ねる、異常値もいいところだ。
何しろ、1年間で100mSvいくんだから。

この状態で、長泥地区の人たちは、避難する6月まで暮らしていた。
どんなに少なくとも、30mSvは外部被曝している。
それに加えて内部被曝がある。
彼らはどう考えてもヤバい。

同じ飯舘村で「まげねど!飯舘」などのプロジェクトを
主導しているIさんも、5月に案内してくれた時は、
それを知ってて、半ばやけっぱちで我々をホットスポットに
連れていってた。

さて、雨どいの下という状況が放射性物質を集積させているのだが、
そのほかの雨どいの下や雨が流れて集まるところを探してみると、
出るわ出るわ、50、60は当たり前、100超えも数か所見つかった。
あまりにも危険すぎる。

アンティエがぽそっともらした。
「プリピャチよりひどいわ」
 プリピャチとは、チェルノブイリの労働者のためにつくられた、
当時人口5万人を誇ったニュータウンである。

事故当時の町の平均年齢は28歳、毎年1000人が生まれる
若くて活気に満ちあふれた街だった。
チェルノブイリからわずか3キロの地点にあり、
文字通り「原発によって栄えた町」だった。
それが一日にしてゴーストタウンと化し、16年の街の歴史が
突如として終わりを告げてしまったのだ。
長泥は、そこよりひどいというのである。
汚染物質がたまりやすい杉山に囲まれたこの地は、
恐らく最低でも数十年に渡って住むことができないだろう。


さて、今回のドイツ緑の党調査団の目的のひとつは、
土壌サンプルを持ち帰ること。どこがどれだけ汚染されているかという
より、どういった核種が出ているかを見ることにある。

というわけで、ホットスポット周辺の土壌サンプルを採取していると、
軽ワゴンが一台、ゆっくりと近づいてきた。
我々の目の前で停車すると、運転席からゆっくり出てきたのは、
初老の女性。
いかにも地元のおばちゃんといった風体の人だった。
さすがは地元のおばちゃん、福岡の人間である私には
何を言っているのか、8割は理解不能。
ドイツ語のほうがまだ分かるかも(笑)。

が、とりあえず夫の命日だったので線香を上げるために
自宅に帰ってきたこと、水が不安なので水の線量を
測ってくれないかということを言っていることだけは
かろうじて理解した。
マルクスに頼んで、彼女の家に案内してもらう。
ペットボトルに水を入れてもらい、そちらにセンサーを近づけて
測ってみるが、環境放射線量があまりにも高すぎて
(5~6μSv)、自らどれくらい出ているか、全く分からない。
 試しに屋内に入って同じようにやってみると、
3.7μSvくらい。

家の中の環境の数値もそれくらい。
結局、水の数値は分からなかった。
10m以上掘った井戸水だというから、もしかしたらこの水は
大丈夫かもしれない。
しかし、環境放射線から隔離された状態で測らなければ
本当の数値は分からないため、正直に「この状態では分かりません。
汚染されているかもしれません。もしかしたら、地表の水が
井戸の水脈に落ちてくるまでは安全かもしれませんが、
ともかく水を測れる機関に依頼しないと分かりませんね」
と答えるしかなかった。

6月、着の身着のままで避難したそのおばちゃんの家は、
今でも人が住んでいるかのような生活感を漂わせていた。
机の上には果物が並び、洗濯物もそこかしこに放り出したまま。
避難まで時間があったにも関わらず、それまでは普段通りの
生活をしていたことがうかがえる。
なだけに、かえって心配が募る。
彼女は小さな農園を持っているが、そこの作物の心配もしていた。
正直、環境にこれだけ出ているくらいだから、
どこもかしこも放射性物質で汚染されていることは間違いない。

ましてや、そこの作物など、口に入れられるようなものではない。
このあたりは、初期はヨウ素、その後セシウムなどで汚染され、
ストロンチウムや、はてはプルトニウムまで発見されたところだ。
とてもじゃないが農業とか言っているような場合ではない。
それどころか、いくら命日でも、数時間滞在しただけで
何らかの危険性を伴う行為にもなりかねない。

ともかくこのおばちゃんが心配だ。
しかし、彼らからすると、そうも言っていられない。
これから雪が降る季節になる。
ほうっておくと、家がつぶれてしまうので、降雪対策を
しなければならない。
ということは、高濃度に汚染されている屋根の上にあがったり、
放射性物質が集積する、雨がしたたりおちる場所での作業を
余儀なくされてしまうのだ。

基本的に、そういった作業をできるような環境とは程遠い。
それは文字通り「命がけの作業」になってしまうのだ。
降雪対策をしないと家がつぶれるという切迫性は理解できるが、
かといって放射能対策を全くなしにやるのもまた自殺行為。
私たちにはどうしたらいいか分からなかったので、

彼女の家の周りにある、とりあえず雨どいの下などの
ホットスポットの数値を見せ、100μを超えていることを
我が目で見て確認してもらい、警戒感だけは植え付けた。
「そうは言っても…」と思うかもしれないが、
我々の警告を後になって思い出すかもしれない。
いや、思い出してほしい。
そのために、出来る限りの忠告はしておいた。
偶然の出会いだったが、心温まる、かつ寂しい出会いでもあった。


ここでこの日は時間切れ。
5時から、マルクス・アンティエさんと郡山市民との
集会が予定されていたからだ。
3時半に郡山のホテルに戻り、少し休んでから郡山教組会館へ。
意外と集まりはよく、50人近くの人が集まっていた。


彼らのプレゼンは、チェルノブイリで何が起こったか、
周辺の町はどのような変化を強いられたかが中心だった。
それに、昨日・今日見聞きしたエッセンスを加え、
講演は1時間で終了した。

その後の質疑応答は、郡山市民ならでは、
かつ放射能に関する意識の高い人ならではのものばかりだった。
ひとつ心を打ったのは、「チェルノブイリハート」
日本初症例ではないかという新生児を持つ父親の言葉だった。
10月に生まれたばかりの赤ちゃんには、心室と心房に
それぞれ1か所ずつ穴があいているというのだ。
これはまさにチェルノブイリハートと全く同じ症状だ。

しかし、医者に言っても、放射能との因果関係ははっきりしない。
そりゃそうだ。
放射線は、証拠を残さず人を殺していく「完全犯罪者」だ。
 プルトニウムの内部被曝ですら、「証拠」を掴めるようになったのは
ごくごくつい最近の話。

内部被曝の核種がなんぼあるか考えただけで頭が痛くなる。
しかも、内部被曝によるガンや内臓疾患の医学的関連性を
証明するには、まだそれだけでは足りない。
途方に暮れるしかないというのが実情なのである。
そんな中でついに起きた、新生児の心疾患。

症例が出たのがあまりにも早すぎたため、彼らは補償などでは
このままだと必ずはじき出されてしまうだろう。
こうやって、弱い者がより弱い立場に追い込まれるのが
原発震災の構造であり、そもそも原発自体の構造なのである。

我々が変えなければならないのはエネルギー源ではなく
(いや、それも変えなければならないのだが)、その構造にある。
それを変えないことには、たとえ脱原発が成功したとしても、
違う問題で全く同じ構図がまた弱者をさらにいじめるだろう。

線量に関して高い意識を持つ人たちは、郡山市内の線量を
詳しく調べていた。
それを見て驚いたのだが、市内中心部でも60万ベクレルを
超える値が出ているのだ。
その数値は、ウクライナなら強制避難区域に相当する。
それ以外でもかなり高い数値がでていて、これもウクライナなら
避難権利区域、つまりいるのは構わないが、もし出ていくのなら
避難する権利を保障しますよという区域だ。

ところが今の郡山の一般的な状況はどうだ。
逃げる人はもうとっくの昔に逃げてしまい、
今残っている人は、放射能の被害は分かっているが
残ってなんとか頑張りたいという人か、
そんなの関係ねえとばかりに開き直っている人か、
本当に何も考えていない、もしくは知らない人だけである。

そんな中で、なんとか頑張りたいという人たちは、
農家だったり、医者だったり、それぞれの立場で何ができるか
必死に模索している。
自分たちで情報を探し、食品の検査をし、医者としての助言を与える。
国や自治体は何もしないから、自分たちでやるしかないのだ。
実に皮肉な形で、自治や民主主義が郡山に芽生えつつある。


郡山ですらこの状況だ。
朝、ホテルでTVを付けると、バラエティ番組の下で
各地の放射線量が流れていた。
それを見て驚いた。
郡山市役所の空間線量が1μSv/hと出ていたのだ。
これってすぐ逃げなきゃってくらいの値。
いや、ちょろっとその場にいるくらいだったら大したことないかもだが、
少なくとも恒常的に住んでいいような値じゃない。

しかし、その数字の意味を分かって住んでいる人が
いったいどれくらいいるのだろうか。
分からないからこそ、こういう数字が無味乾燥に流れているのでは
ないだろうか。
そう思わざるを得ないほどの線量だ。

そして多くの人たちが、その中で「日常的に生きる」ことを
積極的に、もしくは消極的に選んでいる、または選ばざるを得ない。
前日、全ての仕事を終えたマルクスとアンティエと
(ドイツ人だから(笑))ビールをひっかけに行く場所を探しに行って
駅前の居酒屋が数軒入っているビルに入った時、
最初に行った店では満席だというので入店を断られた。

週末の夜だったので皆飲みに出てきていたのだろう。
それはまさしく、「日常」そのものだった。
この線量下でこの日常というのが、私にはものすごい違和感を感じさせた。


結局、地震も津波も原発も、全くその被害は終わりを見せていない。
原発に至っては、いまだに大量の放射性物質を吐き出しているし、
それどころか核分裂反応さえまだ続いていることが判明した。
この期に及んで、ロクに補償すらせず、汚染された地域に
住まざるを得ない状況を作り上げているのは、未必の故意による
被曝者の大量生産に他ならない。
一刻も早い、強制避難区域の拡大と避難権利区域の創設、
移転・移住保障が必要だ。
それが、今回の福島訪問で私が出した結論だ。

---

以上で、今回の福島訪問記のレポートは終わりです。


最後に、マルクスが質疑応答で答えた一言。
質問「脱原発は可能か不可能かという議論ではなく、
やるかやらないかという話だと思うんですけど」
マルクス「それも違います。脱原発と再生可能エネルギーへの
転換はもう既定路線であり、逃れることができません。
問題はやるかやらないかという次元を既に超えており、
今の問題意識はそれをいつ始めるかということです」
その通り!

足立力也

**********

その1を掲載したアドレスを記しておきます。
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/6f44ef5804a680e50ee9451fe1943ea9

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明日に向けて(319)広島・長崎で13000人が黒い雨に遭遇というデータが隠されていた!

2011年11月09日 10時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111109 10:30)

毎日新聞に非常に重要な情報が載りました。広島・長崎で黒い雨に打たれたという
13000人のデータがありながら、これまで公表されていなかったという事実です。
なぜこれが重要なのかというと、世界の放射線学に基底的な影響を与えている国際
放射線防護委員会(ICRP)が規定している放射線の人体への影響とは、広島・長崎の
「データ」を大きな根拠としているからです。

その「データ」から、13000人が黒い雨に打たれていたという証言が意識的に省かれ
ていた。内部被曝の実相を隠すためです。そのため放射線学の教科書では人体への
影響が非常に過小評価されている。国際的基準としての許容値、年間1ミリシーベル
トすらがこのように作られているのです。

この調査を行ったのは、原爆傷害調査委員会(ABCC)です。被害に苦しむ被爆者に強
制的な検査を行いながら、何の治療もしてくれなかったとして、被爆者の強い怒り
を買った組織です。被爆者の遺体解剖も繰り返しました。その後を継いだのが、
放射線影響研究所で、現在も日米共同組織です。その放影研の長瀧現理事らが書いた
チェルノブイリ事故の影響を極端に低く見積もった提言が、今も、首相官邸ホーム
ページに掲載されています。すべて、放射能の影響を軽くみせるための措置です。

現在も政府は黒い雨の人体への影響を認めていません。黒い雨は13000人だけが浴び
たのではない。そもそもこの調査とて、12万人からの聞き取りにすぎず、サンプリン
グそのものが極めて小さい。また当時、乳児や幼児で記憶が定かでない人々(一番
影響を受けた人々)もたくさんいるはずです。さらにその雨が入った井戸から水を
飲み、その雨で汚染された野菜を食べた人は、かなり広範だったはずです。

政府は一国も早く、これらのデータを解析し、放射線の人体への影響をより正しく
見直して、現在の政策に反映させ、福島第一原発近辺からの避難の促進や、食べ物
飲み物、がれき等々の汚染許容値をもっともっと厳しくすべきです。

なお黒い雨、および広島・長崎の被ばくの状況に関する資料として、広島市立牛田
中学校の生徒たちが作った巣晴らしいサイトがあるのでそれを紹介しておきます。
黒い雨がどの地域に降ったのかの地図もあります。どうかご覧ください。

***********************

広島・長崎原爆:「黒い雨」に1万3000人遭遇
毎日新聞 2011年11月9日 7時45分
 
広島・長崎原爆で放射性物質を含む雨(黒い雨)に約1万3000人が遭遇したと
いうデータを、原爆傷害調査委員会=ABCC、現・放射線影響研究所(放影研)
=が得ていたことが分かった。黒い雨の人体への影響は分析されておらず、長崎県
保険医協会(千々岩秀夫会長)は8日、「すみやかに分析し、情報公開してほしい」
として放影研を所管する厚生労働相宛てに要望書を送った。

同協会の指摘を受けて放影研が明らかにした。

放影研によると、ABCCが1950年ごろから約12万人を対象に「寿命調査」
(LSS)を実施。質問に「WaspersoncaughtinFallout
Rain?(放射性物質を含む雨に遭ったか)」との項目があり、1万3000人
が遭遇したと答え、そのほとんどは広島被爆で、長崎被爆は約800人だった。

この質問項目と回答はデータベース化されておらず、近年になってコンピューターで
線量を推定する研究の中でデータの存在が分かったという。

現在、国は「黒い雨による人体影響はない」との立場だが、広島、長崎両市では、
国が指定した被爆地域外で黒い雨に遭った人たちが健康被害を訴え、指定地域の拡大
や被爆者健康手帳の交付などを求めている。同協会の本田孝也医師は「福島を中心に
低線量被ばくへの関心が集まっている。どんな影響があるのかぜひ分析してほしい」
と話している。【釣田祐喜】
http://mainichi.jp/select/wadai/news/m20111109k0000e040003000c.html

***************

平和について考えよう
広島市立牛田中学校
加藤・門藤・辻 コーチ森本
ThinkQuest web教材コンテスト中高生の部プラチナ賞

被害状況「黒い雨」から
黒い雨は広島だけに降ったもので、被爆後の調査で、爆心地から11~19
キロメートルの範囲で大雨が、15~29キロメートルの範囲で小雨が降っ
たと分かりました。この「黒い雨」は、原子爆弾の爆発20~30分後頃か
ら広島市の北西部に降り始めました。雨の間は夏にも関わらず急に気温が低
下して裸や薄着で逃げ回っていた人々は寒くてふるえました。しかも、降り
始めの1~2時間は爆発の時の泥やほこり、すすなどを含んだ黒い大粒の雨
で、しかも強い放射線が含まれていて、池や川の魚がたくさん死んで浮き上
がったと言います。雨の降った地域で水を飲んだ人の多くは下痢になったり
その後雨に含まれていた放射能のため体調を崩したりしました。
http://contest.thinkquest.jp/tqj2001/40234/damage/damage.htm
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明日に向けて(318)中村和雄さん学習会、京田辺・矢ケ崎さん講演会・龍谷大学等でお話します。

2011年11月08日 22時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111108 22:30)

今後のスケジュールをお知らせします。

まず明日の企画でが、僕が話をするのではないものの、友人が行っている
「東日本大震災とイラク戦争-復興の現場からのレポート-」に参加し
ます。18:30~21:00 みんなのカフェちいろばにて。
京阪電車藤森駅そばで開催です。

原文次郎さんと、相沢恭行さんがお話されますが、このうち相沢さんは、
気仙沼市の出身なのですね。しかも僕が5月に聞き取りをした方と同じ地
区だとのことで、何かの縁を感じてしまいました。東北とイラクをつなぐ
お話です。ぜひご参加ください。

11月10日に、脱原発の京都市政実現を目指している中村和雄さんを囲む
勉強会に参加します。テーマが「脱原発」なので、僕も除染活動の経験に
ついて、少しお話させていただきます。
10日午後2時~4時。左京区のキッチンハリーナで開催です。

11月12日に、原発問題を考える市民講座実行委員会・未来をつむぐ母の
会のお招きで、京田辺でお話します。午後2時から京田辺市商工会館
(CIKビル)4Fキララホールです。「内部被曝の真実~子どもたちの
未来を守らために」というタイトルです。

11月19日に、「いまこそ原発を問う連続講座」実行委員会主催で、
矢ヶ崎克馬さんを京都東山いきいき市民活動センターにお招きした講演会
を行います。午後1時からです。1部の講演に続いた2部のディスカッション
で、コーディネーターを務めます。

そのほか、

11月23日に、龍谷大学の授業でお話します。瀬田校舎で11時半から13時です。

11月24日に、京都市左京区の朱い実保育園でお話します。午後6時半からです。

12月2日に、京都市左京区の一乗寺保育園でお話します。午後6時半からです。

以下、矢ケ崎さん講演会までの案内を貼り付けます。

***************

■□■市民社会フォーラム共催企画のご案内■□■
    
  原文次郎×相沢恭行トークライブ
  
   東日本大震災とイラク戦争
    ―復興の現場からのレポート―

日時 11月9日(水)18:30~21:00(18:00開場)
場所 みんなのカフェちいろば 
    http://cafe-lil-donkey.blogspot.com/
    京阪電車 藤森駅 東口 徒歩1分
    京都市伏見区深草直違橋4-370
    TEL : 075-643-2476 FAX : 075-646-3686
参加費カンパ制  

お申し込みなしでもご参加いただけますが、人数把握のために事前申し込み
いただければ助かります。
civilesocietyforum@gmail.com まで

■原文次郎(はら ぶんじろう)さん
 電機メーカーに勤務するかたわら、2001年9.11事件以降に平和を求める
市民運動に参加。アフガン難民支援などに関わる。03年に退職し、米国の
難民支援NGOでのインターン後にJVC(日本国際ボランティアセンター)で
イラク事業に関わり、03~04年の間、バグダッド駐在。04年4月以降はイラ
クの隣国ヨルダンのアンマンを拠点にイラク支援活動を継続。10年4月より
現地調整員と東京の事業担当を兼務。

共著に『難民鎖国日本を変えよう』(現代人文社、2002年)、
『イラク「人質」事件と自己責任論-私たちはこう動いた・こう考える』
(大月書店、2004年)、『NGOの選択-グローバリゼーションと対テロ戦争
の時代に』(めこん、2005年)、JVCブックレット002『イラクで私は泣い
て笑う-NGOとして、ひとりの人間として-』(めこん、2009年)など。
日本国際ボランティアセンター公式サイト http://www.ngo-jvc.net/

■相沢恭行(あいざわ やすゆき)さん
イラク支援・文化交流NGO「PEACE ON(ピースオン)」を主宰。
宮城県気仙沼市出身。1971年生まれ。96年まで音楽活動。現在は京都在住。
その後アイルランド留学等を通じて国際交流に力を入れる。
2003年2月「イラク国際市民調査団」、3~4月米英軍によるイラク攻撃の最中、
「HUMAN SHIELDS(人間の盾)」に参加してバグダード陥落まで滞在。
同年10月NGO「PEACE ON」を設立。
イラク人現地スタッフとともに障がい児へのスクールバス支援や文化交流活動
を始める。国内での活動は各地講演会、イラク現代アート展、イラク美術家
招聘事業など。
共著に『いま問いなおす「自己責任論」』(新曜社)
『「戦争への想像力」いのちを語りつぐ若者たち』(新日本出版社)。
PEACE ON公式サイト http://npopeaceon.org/

共催 イラク戦争の検証を求めるネットワーク関西
   イマジンイラク実行委員会
   市民社会フォーラム
   フレンズ・オブ・マーシーハンズ

***************

中村和雄さんとお話しする会 3回目

【日時】 2011年11月10日(木)14:00~16:00まで
【場所】 キッチンハリーナ 1階
テーマ「脱原発」

詳しくは、「中村和雄さんを市長にしよう!勝手連」ホームページへ。
http://for-kyoto.net/

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いっしょに考えませんか?こどもたちの未来のために

DVD上映 「原発~その利権と構造」イラクの子どもたちを救う会制作
講演「内部被曝の真実~子どもたちの未来を守るために」
講師 守田敏也

日時 11月12日(土)14:00~16:30(資料代・500円)
場所 京田辺市商工会館(CIKビル)4Fキララホール

近鉄新田辺駅より徒歩4分・JR京田辺駅下車すぐ

○保育あります・掻きにお申込みください。

<連絡先>FAX0774・63・0774
email miraiwo2mugu@mail.goo.ne.jp

<主催>原発問題を考える市民講座実行委員会・未来をつむぐ母の会

3.11福島第一原発の事故からずっと、私たちの生活環境は放射能に汚染
され続けています。関西でも、市民による日常的な計測の必要性が話題
に上ってきています。京田辺市でも、空間の放射線量の測定が始まりま
した。

食べ物の流通によって汚染が全国に広がる…!

今、子どもたちが食べる給食の食材に対する不安が広がっています。
京田辺でも、7月に保護者を中心とした有志で、京田辺市の保育所、
小学校の給食食材がどこの産地のものなのか情報公開を求めました。
1か月以上も経ってから受け取った回答には、福島産、茨城産のものが
何度も使われていることが記載されていました。市側は「流通している
ものは安全。」との見解を示していますが、ごく少量のサンプル検査を
行っているだけなので、いくらでも検査をすり抜けて高濃度に汚染され
たものが出回っている可能性があり、そもそも検査を行っていない福島
近県市町村が120もあるというのが実態です。

家庭では、信頼できる生産者から買う、測定結果を公表しているところ
から買う、など自衛することができますが、給食は各自が選ぶことがで
きない以上、行政側が責任を持って子どもたちの食の安全を確保するべ
きです。検査をして安全性を確認する、ということができないのなら、
産地で選ぶしかありません。

「風評被害」という言葉で実際の汚染が隠されていることに目を向け
つつ、農家の方々を支援するために、汚染の原因を作った東電に賠償
させることが必要です。

内部被曝によって大きなダメージを受ける子どもたちに、「食べて
応援!」など決してさせてはいけないはずです。


****************************

いまこそ原発を問う連続講座(第4回)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

    こどもたちを放射能から守るために
   ―知らされなかった内部被曝の真相―

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

3.11福島第一原発の事故からずっと、私たちの生活環境は放射能に汚染され
続けています。関西でも、市民による日常的な計測の必要性が話題に上って
きています。とくに感受性の強いこどもたちの未来を守るために、今、わたし
たちは何をしなければならないのでしょうか。

食べもの・飲み水の放射能汚染に、「安全なレベル」はあるの?家庭で気を
つけられることは?こどもたちのためにできることは?低線量被曝・内部被曝
の危険性について、信頼できる見解と正確な情報が求められています。矢ケ崎
克馬先生のお話を聞いて、一緒に考えてみませんか。

■日時:2011年11月19日(土)午後1:00~3:20(12:30開場)

■会場:京都市東山いきいき市民活動センター
3階多目的ホール(こどもスペースあり)

京都市東山区花見小路通古門前上る東入る南側
京阪電車「三条」駅、地下鉄東西線「東山」駅、「三条京阪」駅より徒歩5分
京都市バス 5,12,46,100,201,202系統 ・・・ 東山三条
5,10,11,12,59系統 ・・・ 三条京阪前

【アクセスマップ】
http://bit.ly/iLr6IZ
  
■講師:矢ヶ崎 克馬さん(琉球大学名誉教授)

1943年、東京生まれ、長野県松本育ち。広島大学大学院理学研究科で物性物理学
を専攻。理学博士。2009年3月、琉球大学理学部教授を定年退職し名誉教授に。
2003年から国を相手取った原爆症認定集団訴訟で「内部被曝」について証言を行い、
連続19回勝訴の礎となる。3.11原発震災後は、放射能汚染=被曝の深刻さを訴え、
全国で熱い講演を続けている。

■ディスカッション:矢ヶ崎さんと、子どもたちを被曝から守るために行動して
いる、福島から避難中・京都(ほっこり通信)・滋賀(原発のない明るい未来を
みんなでつくるネットワーク・あすのわ)の3名の女性たち。

【関連サイト】
京都のお母さんから~福島のお母さんへ  ほっこり通信
http://ameblo.jp/ima29/entry-10965014972.html

原発のない明るい未来をみんなでつくるネットワーク・あすのわ 
http://asunowa.shiga-saku.net/e617610.html
守田敏也さん(フリーライター)がディスカッションをコーディネートします。

■参加協力券:500円
※開催資金の確保のために、参加協力券(前売りチケット)を販売します。
購入ご希望の方は下記問合せ先までご連絡ください。
※チケットがなくても、当日参加費500円で参加いただけます。

■スタッフ、協賛団体など、協力して下さる方を募集中です。
若いママ・パパ、学生さん、一緒にどうですか(会場に「こどもスペース」あり)♪   

■主催:「いまこそ原発を問う連続講座」実行委員会
http://d.hatena.ne.jp/genpatsu-iyayo/

■協賛:原発のない明るい未来をみんなでつくるネットワーク・あすのわ 
http://asunowa.shiga-saku.net/e617610.html

■問合せ・連絡先: 090-2199-5208(大須賀)





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明日に向けて(317)東電が臨界判定基準を見直し・・・実はこれまでに部分的臨界があったのでは?

2011年11月07日 23時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111107 23:30)

東電による「臨界騒ぎ」の続報です。東電は6日、福島第一原発の臨界判定
基準を見直す方針を発表したそうです。これまでは「キセノンなど半減期の
短い希ガスが検出されない」ことを臨界判定基準としていたからだそうです。
ただしこの判定基準自身も、10月17日に保安院に提出されたもので、それ
以前には判断基準すらがなかったこともうかがわせます。

というのはこの判定基準は「格納容器ガス管理システム」の設置を目処とし
て提出されたものであり、これで希ガスのサンプリング精度が高められるこ
とを前提に設定したものと思われるからです。ということはそれまで核分裂
の兆候を示す希ガスの測定すらが、きちんと行われていなかったことを意味
します。そこからさらに重大な点が導き出せます。

まずこの騒ぎの発端になった、東京電力の発表に注目してみましょう。11月
2日に以下のような記者発表が行われています。

ガス管理システムの気体のサンプリング結果について
東京電力 20113年11月2日 
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_111102_01-j.pdf

ここで注目すべきことは、参考として8月10日のデータがあげられており、実
はそこでもキセノン131mが検出されていることです。希ガスでいえばクリプト
ンも同時に計測されています。このときは自発核分裂だとは思わなかったの
でしょうか?またこの前例がありながら、どうして今回、当初は臨界だと思い、
後に、自発核分裂という訂正がなされたのでしょうか。

それで8月10日の報告の方をもう少し詳しくみてみましょう。8月10日に以下
のような記者発表がなされています。

福島第一2号機原子炉格納容器内の気体のサンプリング結果
東京電力 2011年8月10日
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110810_04-j.pdf

これを見ると、このときは、「原子炉格納容器仮設ガスサンプリング装置」と
いうものが使用されていることが分かります。(写真がついています)また数
値を見ると、11月2日の発表の「主役」であった、キセノン133,135は検出対象
になっておらず、ただキセノン131mだけが検知されていたことが分かります。

しかも重要なのは、キセノン131mの値が、きわめて高いことです。3回目の計測
で、4.0×10の1乗(1立方㎝あたりのベクレル数)という値が出ています。こ
れに対して11月2日の計測では、キセノン131mは、6.9×10のマイナス4乗とな
っている。両者の間には、約6万倍の開きがあります。8月10日の計測でキセノン
131mは、11月2日の6万倍も出ていたことになる。

ここで今回の東電の発表を精読してみると、重大な数値が現れてくる。というの
は「臨界が起きていたと仮定した場合、キセノンは今回検出された濃度の約1万
倍に達するという結果になった」という数値です。となると、確かに今回は自発
核分裂がキセノンを生み出したのだろうと言えますが、8月10日時点では、約6万
倍も発生していたのだから、臨界が起こっていたいう推論が成り立つのです。

しかしこのときは、キセノン133と135が記録されていない。計られてなかった、
ないし計る装置が設定されてなかったのだと思います。だからこそ「格納容器ガ
ス管理システム」の設置が急がれたのだと思われますが、このとき東電は臨界が
起こった高い可能性を感じながら、キセノン133、135を計れていなかったために
結論づけられなかったのではないか。

ではなぜキセノン133と135が重要なのでしょうか。核分裂収率、つまり核分裂生
成物がどの核種になるのかの確率が、キセノン131mよりもはるかに大きいからで
す。反対に言えば、キセノン131mはきわめて小さい。だからこれだけでは判断が
できなかったのではないか。この点の参考になるのは、「CTBT検証制度における
放射性希ガスの探知と意義」という論文です。
http://www.cpdnp.jp/pdf/002-07-002.pdf

CTBTとは包括的核実験禁止条約のことで、実はキセノンやアルゴン等の放射性
希ガスは、ある爆発が、核爆発か否かを「断定する最終手段」とされているので
す。これを応用したのが、原子炉における臨界の有無を、希ガスによって判断す
ることに他なりません。そしてそれだけに、核分裂が起こったときに、ある放射
性物質がどれだけ出てくるのかは、重要な指標となってくる。

ではキセノン131m、133、135はそれぞれどのような「収率」を持っているので
しょうか。この論文には0.045、6.72、6.60と書いてある。つまり約150倍ぐらい
の違いがあるとされているのです。しかし11月2日の値ではそれほど多くはなく、
約50倍となっている。その値をとったとすると、8月2日には1立方㎝あたり、
キセノン131mが4.0×10の1乗=40ベクレル出ていたから、その50倍、つまりそれ
ぞれに1立方㎝あたり、2000ベクレルのキセノン133と135が出ていたと推論できる
のです。これは11月2日のキセノン135の値の、約33000倍の値です。

1万倍で臨界が続いていたことになるわけですから、このときは臨界がしばらく
続いた可能性が考えられる。しかし東電はこのとき、キセノン133と135を計れて
いないことを根拠に、臨界の可能性を発表しなかったのだと思われます。しかし
内心、かなりの恐れを抱き、だからこそ、これら133、135を計れる設備の設置を
急いだのではないか。臨界を確実に察知しうる態勢の創出の必要にかられたのだ
と思われます。そして「格納容器ガス管理システム」の設置をようやく成功させ、
キセノン133と135を計ったら、いきなりそれぞれで検知された。

その段階で、東電は、やはり臨界だ!と思い込んでしまったのではなかったか。
濃度を確かめる余裕がなかったからです。臨界が起こっているのではないかという
不安に襲われ続けてきていたゆえです。ところが、しばらくして数値が非常に小さ
いことに気づき、臨界の可能性が小さくなった。そこでようやくにして自発核分裂
の可能性に気づいた。それで現在にいたる発表に落ち着いたように思えます。

このように8月10日の記者発表と、11月2日のそれを丹念に比べてみると、8月時点で
の臨界の可能性が浮上してきます。もちろんこのときのキセノン131mの値そのものが
誤認だった可能性もあるし、東電もそう考えたのかもしれない。しかし少なくとも
はっきりしているのは、東電には臨界を疑う強い必然があったということです。

この間の一連の報道からさしあたって言えることはこうした点です。さらにウォッチ
を深め、福島第一原発の現状=そこにある私たちの危機の実相を暴いていきたいと
思います。

*******************

臨界判定基準見直し 東電方針 キセノン検出を反映
東京新聞 2011年11月7日 朝刊

東京電力は六日、福島第一原発の臨界判定基準を見直す方針を明らかにした。
経済産業省原子力安全・保安院に先月提出した報告書では、半減期の短い希
ガスが検出されないことを条件としていたが、今月二日に2号機で自発核分
裂により発生したとみられる放射性キセノンを検出。実態と合わなくなり、
修正を余儀なくされた。

二日にキセノンを検出した際、東電は「臨界の可能性がある」と発表したが、
その後、検出量が少なかったことなどから「自発核分裂によるものだった」
と訂正していた。

東電の川俣晋原子力品質・安全部長は、六日の記者会見で「再臨界かどうか
では、大変心配をおかけした。報告書の改訂版を準備している。その中で見解
を示す」と述べた。

十月十七日に保安院に提出していた「中期的安全確保」に関する報告書では、
キセノンなど半減期の短い希ガスが検出されないことが臨界判定基準だった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011110702000022.html

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明日に向けて(316)3号機建屋内で高線量・・・福島第一原発のウォッチを強化しなければ

2011年11月06日 14時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111106 14:00)

今回の「臨界騒ぎ」はある意味で非常に示唆的でした。一つに臨界という非常に
重大な危機に対し、東電がそれを的確に把握する術を持っていなかったこと、い
や1号機、3号機については未だ、把握できる状態にないことが明らかになったこ
とです。また原子炉と原子炉格納容器の内外で、自発核分裂が続いていること、
それだけでなく、原発から遠く離れた地点、Pu240などが飛散した地点で、自発
核分裂起こっていることも、あらためて浮き彫りになりました。

残念なことに、臨界が一時的に確実視されたときに、1面トップかそれに準じる
扱いで報道した大手新聞は、その後の追跡調査を行っていません。こういうとき
は、その後にこそ、隠されている事実、あるいは東電も含めて、気づかれていな
い事実を暴き出す重要なヒントが見え隠れしていると思うのですが、これらを
検証する姿勢が見られない。結果的には「臨界の可能性あり」という東電の発表
に踊らされたにすぎなくなってしまいます。

危険なのは、こうしたことが繰り返されると、真に重大な危機が発生した場合に、
「また何かの勘違いではないか」という憶測が働いてしまい、事実の伝達がなさ
れなくなってしまうことです。そのためにこそ、東電発表にある意味で振り回さ
れたことを真摯に捕らえ返しつつ、そこから何かを学ぶことが必要だと思います。
もちろんこれは自分に対して向けている言葉でもあります。なんというか、この
間延びした危機の連続への慣れが社会を覆い、僕もそこに捉われていた面がある。

政府と東電が、あまりに出鱈目な発表を繰り返すので、だんだんと怒りが減衰し、
怒りよりも呆れに移行してしまい、まともに相手をする気を失ってしまうとい
うか、どうせまた嘘を言っているのだろうということで、それ以上の分析が進ま
なくなっていた傾向が少なくとも僕にはあります。それよりも、現に外に飛び出
した放射能への対処に必死になってきたためでもありますが、今回の臨界騒動を
契機に、あらためて、原発ウォッチを強化しなければとの思いを強めました。


そのような点を考察しているときに、「3号機建屋内、依然高線量=ガス管理装置、
年内設置-福島第1」という記事が目に入ってきました。記事は、今回、3号機で
当初は臨界の兆候として捕らえられたキセノンを検出した「格納容器ガス管理シ
ステム」を設置するための作業の一環として、ロボットでがれきの移動などを行
って、周辺の放射線値を図ったところ、最大で毎時620ミリシーベルトもの値が
計測されたことを伝えています。

同時に、同じ装置、したがって臨界の兆候でもあるキセノンを感知できる装置の
設置が年内いっぱいかかることが明らかにされている。つまり年内いっぱいは、
1号機、3号機ともに、臨界が生じたとしてもにわかに把握ができない状態が続く
わけです。もちろん臨界の可能性は、非常に小さいと、小出さんなどによっても
指摘されているわけですが、注目すべきは、年内冷温停止達成などといいながら、
そこで起こっている核反応の実態すらこそが、まだつかめる状態にないことです。

しかも相変わらず毎時620ミリシーベルトもの放射線が計測されている。それを
どうして年内に押さえ込めるというのか、あまりに根拠が薄弱です。年内の冷温
停止などとても不可能だとしか思えません。ただしここが曲者で、そう考えると、
というか実際そうしか考えられないのですが、先にも述べたように、まともに分
析するのがばかばかしくなってしまう循環に再度、入りこんでしまいます。そう
ではなく、なんとかして、今、何が起こっているのかをつかまなくてはいけない。

もちろんデータがあまりに不十分であり、なおかつおそらく東電すら事態のきち
んとした把握はできていないと思われますが、その中で東電が何をしていて、そ
の狙いは何なのか、さまざまな言動に隠れているものは何かの推論を重ねる中か
ら、可能な限り事態を把握し、今目の前にある私たちの危機の実相をつかむ努力
を重ねていかなければならないと思います。かかる観点から、福島第一原発の
今に関するウォッチの強化に向かいます!

*****************

3号機建屋内、依然高線量=ガス管理装置、年内設置-福島第1
時事通信 時事ドットコム(2011/11/05-23:25)

東京電力福島第1原発事故で、東電は5日、ロボットを使った3号機原子炉建屋
1階の調査で、最大毎時620ミリシーベルトの高い線量を確認したと発表した。

調査は、格納容器内の空気を抜き出し、フィルターで浄化した後に外部に放出す
る「格納容器ガス管理システム」設置準備の一環として実施。2、3日の両日、
ロボット3台を使って同建屋1階北東側の床面に散乱するがれきなどを移動させ
た後に測定した。その結果、作業場所に最も近い地点で毎時215ミリシーベル
ト、約3メートル離れた地点で同620ミリシーベルトを記録した。

同システムは、格納容器内の気体の採取も可能なため、既に設置されている2号
機では水素濃度の確認や核分裂反応を示す半減期の短い放射性物質の検知に用い
られており、東電は1、3号機でも設置を急いでいる。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は5日の会見で、「線量が高いため、設
置作業の前には遮蔽(しゃへい)や除染が必要になる」と説明。1号機も含め、
同システムの設置完了は年内いっぱいかかるとの見通しを示した。
http://www.jiji.com/jc/eqa?k=2011110500317&g=eqa

**********

福島第1原発事故 ガス管理システムを3号機に設置するため、建屋内の放射線量低下作業
FNN フジニュースネットワーク 2011・11・06 10:20
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00210996.html
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明日に向けて(315)足立力也さんの福島再訪レポート・・・その1

2011年11月06日 07時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111106 07:30)

友人でコスタリカと平和の専門家、足立力也さんが、5月に続いて福島を訪問し、
レポートを書いています。共感したので、みなさんとシェアしたいと思い、転載
させていただくことにしました。2回に分かれています。なお足立さんについて
は、以下のページをご覧ください。
http://www.adachirikiya.com/index.html

足立さんはこの中で、南相馬市を訪れ、事故直後のヨウ素剤未配布の問題につい
て、地元の方と話し合ったことを記しています。実際、あのときに適切な配布が
行われていればどれだけ被曝が軽減されたことでしょうか。三春町が、鈴木町長
の英断の下、即刻配布をし、飲用指示を出しましたが、他の市町村の多くが、
未配布に終わったか、配っても手遅れになってしまいました。

足立さんのレポートを読んでいて、この点の検証を行っておく必要性を感じまし
たが、長くなるので、この点は、別の記事にまとめたいと思います。
以下、足立さんのレポートをお読みください・・・。

*************

福島再訪レポート その1
2011年11月1日


前回福島県を訪れたのは5月だった。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1725664537&owner_id=464709

前回の福島訪問は、ドイツ緑の党国会議員の視察の「お付き」としてだった。
今回の訪問も、ドイツ緑の党の調査団の通訳・コーディネーターとしての同行。
今回は、10月29日、30日と、郡山を拠点として福島市、南相馬市、
田村市、飯舘村などを駆け足で訪問。

結論から言うと、やっぱヤバいわ。
福島県はほとんどの地域が高濃度もしくは低濃度汚染地域。
低濃度といっても、全く気にしなくていい程度というのとは違う。
郡山市のことなんて福岡にいたらこれっぽっちも報道されないが、
例えば市内のど真ん中にだって、チェルノブイリ後のウクライナだったら
強制避難区域になる程度の土壌汚染(60万ベクレル/m2)地域がある。
それ以外でも、避難権利区域と同等の汚染地域がたくさん。
チェルノブイリの経験をもとにすれば、基本的に郡山は退去すべき
地域ということになってしまうということだ。

しかし、そこにもたくさんの人は住んでいて、普段通りの生活をしている。
週末の居酒屋は満席で入れないほど。
住んでる場合じゃないというのに、この「日常」っぷり。
それが郡山の現実。
彼らが今後どうなってしまうのか、想像しただけでもうすら寒くなる。

2日間のレポートを、2回に分けて書く。
まず、29日に起こったこと、思ったこと。

29日朝、郡山市に入る。マルクス、アンティエのドイツ緑の党メンバー2人
に会い、早速レンタカーで福島市へ。米沢でボランティアをしているMさん
と落ち合い、南相馬市議の只野さんと懇談。
只野さんは、最年少の市議という立場から、「例えば今もし100億あるのだと
したら、現時点での対応策に100億使いはたすより、10億を10年単位で分けて
使って、やっつけで対応するのではなく、長期的視点を持って対応すべきだ」
という持論を展開。

これはこれでひとつの方法論ではある。
もちろん、緊急にやらなければならないことがある。
そのための資源はちゃんと確保しつつも、息の長い復興策を練るべきだ、
ということだ。
元NHK記者の冷静さが垣間見えた懇談だった。

そこから東へ、南相馬に向かう。
霊山→伊達市に入るあたりで線量がぐんぐんと上昇し、車内で1μSv/h超え。
年間になおすと8mSvを超える。生涯100mSvってヤツと照らし合わせると
12年でアウト。
途中、至る所で道路工事をやっていたので、そのたびに渋滞にはまる。
その機を逸さず、マルクスは車外に出てγ線を計測。
あっという間に2μ超え。
さらに山間に進むと3μを軽く超えた。

…ちょっと待てよ、さっきから土埃まみれになって働いてる工事現場の人たち、
マスクしてなかったような…
次の工事現場で確かめてみると、誰ひとりマスクしてない!
放射能云々がないところでも防塵マスクのひとつくらいしてよさそうな
現場なのに。
放射能の話があるからかえって意識してしていないのだろうか?
いずれにしても高線量の現場であり、マスクどころかフル装備必要なのに、
この現場作業員たちは確実に内部被曝しているはずだ。
彼らのうち何割かは将来放射能による健康被害が出てくるのではないだろうか。
これってある意味チェルノブイリの時のリクビダートルよりひどいんじゃないか?
日本はいったいどうなってるんだ。

空恐ろしさを感じつつも、やがて下り坂に入り、南相馬市へ。
鹿島区あたりは平均して0.22~0.25μくらい。
他に比べて低いとはいえ、通常値より遥かに高いことには変わりない。
このあたりは放射能の問題もあるが、地震と津波被害も大きな課題。
ゑびす屋さんという古い和菓子屋さんで、3人の女性の話を聞く。
三者三様の話が聞けた。
ゑびす屋のおかみさんは、以前から原発に関して問題意識を持っていて、
地震があった時、原発もヤバいとすぐに思ったらしい。
が、他の二人はまさか原発が南相馬まで影響を及ぼすとは
これっぽっちも考えなかったそうだ。
そうだろうなあ。

それでいいとは言わんが、それが大半であってもおかしくないだろう。
3月12日から17日の間が「空白の5日間」だったと3人は口をそろえる。
12日、水素爆発が起き、「ヤバいんじゃないか」と誰もが思い出した。
原発問題に意識が高い人は、ヨウ素剤の配布が必要では、
とも言いだしていた。
だが、ヨウ素剤は市が管理していて、市長の決済が要る。
市長はその判断を逡巡していた。
そのため、市が原発について南相馬市にも影響を及ぼし危険な状態にある、
と広報するのに、17日まで待たねばならなかったのだ。
ヨウ素剤の配布もそのために手遅れになった。
インタビューを受けてくれたある一人が言う。
「私の知り合いには薬剤師がいて、そこではすぐにヨウ素剤を子どもに飲ませて
即時逃げた」。
予備知識と情報の格差によって、対応が変わってきてしまういい例だ。
結局彼らは、17日の避難指示によって慌てて家を放り出さざるを得なくなる。

しかし、そのころには既に、市内から出ることはできても、
市内に入ることはできなくなっていた。
ガソリンの供給も断たれていたため、ガソリンスタンドには長蛇の列。
5時間、6時間も並んで、給油できたのはわずか10リットル。
車にもよるが、100キロそこらしか走れない。
そこで多くの人が向かったのが米沢市だったというわけだ。
数キロしか離れていないところに避難した人は、その後結局
二次避難をさせられる羽目になる。
このあたり、SPEEDIの情報をさっさと開示していれば、
そんな混乱は起きなかったはずだ。
行政の怠慢によって信じがたいほどの混乱がもたらされたのだ。

話の途中で、ゑびす屋のご主人が現れた。
ほとんど口を開かず、じっと私たちの話を聞いている。
と、おかみさんが説明した。
この間、被災し、逃げ、戻り、補償を受けるために交渉し、受け入れられず、
また交渉し…といった繰り返しで、うつ病を発症したのだ。
病院にもかかっているが、とりあえず休め、気晴らしにでかけたらどうか、
と医者には言われたらしい。

被災地の医療体制が整っていないことは事前知識で知っていたが、
激増しているであろう精神疾患に対するケアが遅れていることが見て取れた。
休めというのはうつ病に対する「はじめの一歩」ではあるのだが、
ほとんどの人が「休み方が分からない」からうつ病になるのだ。
じっとしていれば休まるかというとそうではない。
気晴らしに行くと言っても、その気力がないからうつ病なのだ。
私にも経験があるので、「休めと言われても休み方も分からないし、
じっとしていても頭がぐるぐる回って休まりませんよね」
と声をかけると、初めて自分の病状を理解した人がいたかのように、
表情が和らいで、口を開いて話を始めた。
とりとめのない話ではあったが、ともかく心の中を吐露することができたのは
彼にとってはよかった。
恐らく、被災地には彼のような精神疾患を発症した人がたくさんいる。
そして恐らく、そのケアをどうしていいか、ほとんど分かっていない。
被災地の精神疾患については少しだけ話題になっているが、
実際の対策は全くなされていないのではないだろうか。

109年使い続けた焼き器で作った鯛焼きなどをいただき、ゑびす屋を後に。
途中原町火力発電所を臨む海岸線に立ちよる。
交差点近くに遺棄された、積み上げられた車たち。
フロントドアについた赤い丸の印は、中に遺体があったことを示している。
海岸線に着くと、地盤沈下が見て取れた。
かつて美しい砂浜が続いていたビーチにはもはや砂浜はなく、
コンクリートの護岸壁を波が洗っていた。
原町火力発電所の重油タンクはベコベコにへこんでおり、
被害の大きさをうかがわせる。

さらに南下して原町区、福島第一原発から25kmほどのところで
イタリアンレストランを新規に開業しようとしているOさんを訪ねる。
10日後に控えたオープンに向けて、家族で忙しそうにしていた。
この地域は、計画的避難準備区域を解除されたことで、
逆に補償が受けられなくなるという憂き目に遭っている。
最初は落ち着いた語り口だったが、徐々に熱くなっていく。
弟が10キロ圏内に住み、その息子が福島第一原発で働いていたので、
彼のもとには情報がいち早く伝わった。
12日、弟がOさんのもとにやってきて、「すぐ逃げなきゃヤバい」
という話になる。
10分後には、暖房も切らず、店に鍵もかけずに飛び出し、避難した。
結果、その判断は正解だったことになる。

その後誰もが逃げるタイミングを失ったということは、
鹿島区でも聞いた話だ。
5つの店舗を構えていたOさんだが、自らはおろか従業員も通勤できなくなり、
閉店を余儀なくされる。
多くの従業員は20km圏内に住んでおり、避難してしまった。
それどころか、常磐線を使って福島第一原発の横を通って
通勤していた従業員もおり、新規雇用も望むべくもない。
また、お客さんの6割は原発方面からだったので、
お客さんも激減してしまった。
今後新規開店しても、売上は3分の1程度しか見込めないという。
借金を返せるかどうかすら分からない、綱渡り経営になってしまった。
しかも補償は、利益に対して分配される。
つまり、中小の赤字企業には補償がない。
せめて売上高とその減少額に合わせて補償をするべきだいう
Oさんの訴えには説得力があった。

結局、儲かっている人はいつまでも儲かり、
儲かっていない人たちはいつまでも損をする仕組みになっているのだ。
原発事故はそれをさらに加速することになってしまった。
確かにそれは理不尽である。
あたかも、この際赤字企業をリストラしようとでもしているかの如しだ。
汚染マップとOさんの店を照らし合わせると、この地域における
経済「復興」の難しさがよく分かる。
放射能が南から北西までこの地域を取り囲んでおり、
北にしか逃げ道がない。
お客さんも従業員も、その地域しかこない。
つまりデッドエンドになっているのだ。
福島第一原発周辺は「この世の終わり」だとOさんは言っていたが、
人の流れもモノの流れもカネの流れも、福島第一原発周辺で
全て止まってしまう。
開店後のメニューに並べられるであろうパスタをいただきながら、
この世の終わりと始まりの間に、どこに線を引くべきか、思いを馳せた。

---

30日の模様はまた後ほど。

足立

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明日に向けて(314)自発核分裂性物質で内部被曝するとどうなるのか・・・。

2011年11月05日 12時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111105 12:00)

昨日、自発核分裂が原子炉の外で起こっていること事態が極めて異常で危険な
事態であることを指摘する記事を書きましたが、さらに中性子で被曝すると
どうなるのかを調べました。この際、これまでもたびたび、有益なアドバイス
をしてきてくれた、科学者の友人のAさんに助言を求めたところ、非常に説得
力があり、かつ読みやすい返事をいただけたので、みなさんにご紹介します。

あらかじめポイントを記しておくと、中性子線は、ICRPの報告でも、γ線の
5倍から20倍の人間への打撃力を持っているとされているそうで、危険性が
高い放射線であることは間違いありません。事実、東海村で起きたJCO事故で
作業員の方たちの命を奪ったのも、ウラン燃料の臨界によって発生した中性子
線でした。

しかし実はこうした事故がありながら、中性子線の人体への影響、とくに晩発
性の疾患との関係などは、まったく研究が進んでいないのが実情のようです。
これはAさんの指摘の中にある、放射線医学研究所のレビューを見ればよく分か
ります。レビューを書かれた方は、この状態に危機感を覚え、中性子線の人体
への影響を調べることの重要性を訴えているのですが・・・。


さらにAさんは、自発核分裂をする物質を体内に取り込んでしまった場合、内部
被曝してしまった場合に何が起こるかの推論を書いてくれました。端的に言えば
体内で核分裂が起こってしまうことになります!これは最悪の被曝と言えると
思います。まず核分裂に伴って、体の内側から中性子が放出されます。中性子は
ほかの原子にあたると、それをも放射化してしまうのでそこからも放射線が出る。

また核分裂ですので、当然にもヨウ素やセシウムをはじめ、あらゆる放射性核種
が発生します。それがそれぞれに放射線を出します。またヨウ素は甲状腺に集ま
り、ストロンチウムは骨に集まりと、それぞれに特徴を持った人体への影響を与
えることをこれまでも述べてきましたが、その大元が体内でつくられ続けること
になる。もちろん核分裂で発生するエネルギーも人体へのダメージになる。

つまり自発核分裂をする物質による内部被曝では、二重三重のダメージが人体に
与えられることになります。これは大変な脅威です。その可能性を持った物質が
格納容器の外に出てしまっていること、さらにそれがどこまで拡散しているか
分からないのが私たちをとりまく現状だということです。対処としてはとにかく
放射性物質を含む可能性のあるものを徹底して避けることが大事です。

またそのためには、もっと大規模で徹底したモニタリング、超ウラン元素の飛散
の現状の把握が必要です。東電の今回の騒ぎから、私たちはこの結論をこそ、
引き出さなくてはならないのではないでしょうか。自発核分裂がどれほど恐ろし
いものであるか、そのようなものを環境中に出してしまった政府と東電の責任と
ともに、さらに徹底して追及していきたいと思います。

以下、Aさんからの提言を貼り付けます。

***************

中性子線の人体への影響と自発核分裂物質による内部被曝について

Aです。
自発核分裂とか、中性子線の話題が出てきたので、
いよいよ本題に入ってきたなという感じがしています。

まず、基本として、いちおうICRP(1990)による放射線荷重係数を示します。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040202/01.gif

中性子線の荷重係数は、γ線1に対して5-20倍という感じで、
エネルギー帯域に対する分布関数として得られています。
たいていの人が、中性子線の被ばくに関する考察をここで止めています。

では、中性子線の低線量被ばくの影響はどのくらい調べられているのでしょう。

オーソドックスなところで、放医研の2001年くらいにおけるレビュー記事として、
「中性子線の生態影響に関する研究」
http://www.nirs.go.jp/news/event/2001/program_12/pro14.htm

というのがあります。これは、一読をお勧めします。
これを読むと、中性子線の被ばくに関しては重要性が認識されながらも、
先行研究が非常に乏しいことが分かります。


中性子そのものは荷電粒子ではないので、透過だけしてくれれば問題は無いが、
実際には物質に含まれる安定な原子核(軽元素・・・水素、酸素、窒素など)
と反応して、これを放射化したり、衝突してγ線やX線などの放射線を発生させ
ますから、決して無視できません。

中性子線は、もっとも注意すべき放射線です。
まず、透過性が抜群に優れている。
かなり厚い鉛板か、水の層、水を含むコンクリートでないと防げません。

したがって、普通の防護服では身が持たない。
今回の事故の初期に、吉田所長が一時、作業員全員を休憩所に
総員退避させましたが、おそらく中性子線が出ていたため
(あるいは出る恐れがあったため)でしょう。

JCO臨界事故で防護服を着ていた作業員が浴びたのはほとんど中性子線ですし、
古くは、マンハッタン計画でのプルトニウム「デーモン・コア」の事故があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%A2
広島・長崎の原爆でも、中性子線は出ているはずです。

いずれも膨大な線量を浴びたことによる事故なので例外的として扱われ、
中性子の低線量被ばくの実態はよく分かっていない・・・ことになっています。

でも、冷戦期には中性子爆弾の研究が盛んに行われ、
中性子の威力は、軍事面ではよく理解されていたでしょう。
その内部被ばくについても認識されていたでしょう。


■自発核分裂について

さて、もろもろの放射性同位体の基礎データについては、下記のウェブサイトを
ブックマークしてください。
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/

これで核種ごとのページに移動して、
Page Two 
Nuclides/ Isotopes
というリンクに移動すれば、全放射性同位体の基礎データが得られます。

プルトニウムについてはこちら
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/Pu-pg2.html#Nuclides

キュリウムについては、こちら
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/Cm-pg2.html

キュリウムの同位体と半減期(Half life)、崩壊(DM=decay mode)のところに、
SFとあるのが自発核分裂(SF=spontaneous fission)で、
BR(BR=Born Ratio)が、半減期サイクルに占めるSFモードの割合です。

ちょっと分かりにくい感じもありますが、Cm-240やCm-242は、
比較的に半減期が短いんですね(27日、約160日)。
Pu-240が個数にしてCm-240やCm-242の20000~100000倍くらいの量あれば、
Pu-240による自発核分裂も無視できないのですが、
キュリウムの生成量を計算しないと、ちょっとよく分からんですね。

それに、自発核分裂由来の連鎖反応を全く考慮に入れないというのも解せない。
一回で吸収されるよりも、核燃料の組成と存在形態によって、いろいろなケースが
ありえると考えた方が自然な気がしますし、
6月、8月、9月などに散発的に起きていた線量の上昇なども、
それで説明できるんじゃないかと思いますがね。


さて、閑話休題。
自発核分裂が内部被ばくに与える影響を考えてみました。


Pu240の自発核分裂で生じる中性子の数は、
1グラムあたり1秒間に約1000個です。けっこう多い。
(参考URL http://en.wikipedia.org/wiki/Spontaneous_fission#Spontaneous_fission_rates
まあ、Pu240の量が1グラムもあるわけ無いから大丈夫?いやいやいや。

Pu240を1マイクログラム(0.000001グラム)、体内に取り込んだときに、
この粒子が1年に何個中性子を放出するかを考えてみると・・・
一年は365日、一日は24時間、一時間は3600秒なので、

0.000001*1000*365*24*3600=31536

というわけで、年間、30000個の中性子が生成され、
さらに30000個のFP(核分裂生成物)が新たに創出されることになります。
もちろん、このFPは、ストロンチウムにも、ヨウ素にも、セシウムにも、
なんにでもなり得ます。

なので、プルトニウムを吸い込むというのは、アルファ線の放出のみならず、
自発核分裂性の場合は、中性子線と、体内でのさらなる放射性物質の創出による
内部被ばくの危険性にさらされるので、二重にも三重にも厳しい。


それに、
核燃料集合体の場合、プルトニウム240のみが単独で存在するような系よりも、
Pu239やU235などの核分裂性の元素が混合した粉末状固体として存在しているわけで、
体内細胞の水環境に、この粉末が入ると、
いわば体内にナノパーティクル・サイズの原子炉が出来てしまい・・・
自発核分裂で生成された中性子に起因して、
或る程度の回数の核分裂連鎖反応が起きるのではないかと。
これが、この間、私がもっとも恐れているシナリオです。

倍倍ゲームで増えるから、単純に考えれば、
自発核分裂一回あたり連鎖反応がたった5,6回続いただけでも、
50個くらいのFPが新たに生成されるわけです。
それが年間に30000回とすると、軽く1,500,000個のFPが体内で生成される。
それがまた崩壊して放射線を発する・・・
しかも、半減期が極端に短いものが出て来たら、高ベクレル数になるうえ、
安定同位体になるまで何回もβ崩壊を続けるので、とても厄介なことになる。


こういうわけで、超ウラン元素を含む核燃料の飛散というのは、
K-40のような自然界に普遍的に存在するα崩壊核種とは
全然違う危険性を孕み持つと、シロウトなりに考えるものです。


しかし、いまだに(公的には)原因不明とされる
ロッキー・フラッツのプルトニウム被害や、
ドイツの原子炉周辺での発ガン率の問題などを考える際には、
ICRPの各種放射線の線量当量方式で説明できない、
超ウラン元素の内部被ばくの特異性に目を向けざるを得ないと思うのです。


私がひところ、核分裂反応が起きる最小サイズの核燃料について、
血眼になって実験データを探していたのは、そのためです。



ーーーーー

最近は、ちらほらと、旧作の反核映画を見てます。

「風が吹くとき」は、やや教条主義的な感じもあるが、力作のアニメでした。
「Dark Circle」は傑作で、ロッキーフラッツの歴史を認識する上で必見です。
同じ頃に作られたドキュメンタリーで「Atomic Cafe」もよかったです。
これは、マイケルムーアの「Bowling For Colonvine」に影響を与えたとか。
あと、新藤兼人監督の「第五福竜丸」も、面白かった。

今の20代以下の若い世代には、
冷戦時代の感覚というのがピンと来ない人が多いと思うので、
あえて旧作映画を見せることで、歴史感覚を養ってもらいたいんですよね。

冷戦下の当時は核戦争が日常の一部に溶け込んでいた時代だったので、
狂気の質が現在と違ってて、「面白い」。
現代は、市場経済万能主義の狂気が横溢していて、
これもまた30年くらいたてば、異様な時代として顧みられるのでしょう。
まあ、すでにかなり異様なのですけれども。
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明日に向けて(313)自発核分裂が起こっていることそのものが危険!

2011年11月05日 01時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111105 01:30)

明日に向けて(312)の推論に続いて、ここでは自発的核分裂が原子炉の外で起こっ
ていることそのものの危険性について指摘していきたいと思います。

そもそも自発核分裂とは何か。原子が、中性子の衝突などを経ないで、自分で
勝手に分裂してしまうことです。原子が放射線を出して、違う物質に変わっていく崩
壊現象と同じように、ある確率に基づいて起こってくる現象です。理論的にはウ
ラン以降の原子番号の原子=超ウラン元素のすべてが、自発核分裂を起こしうると
されますが、実際にはプルトニウム240、242など偶数番号の原子に起こりやすい。

この自発核分裂を起こす核種のうち、重要な位置を持っているのがプルトニウム
240です。というのは、原子炉はそもそも核分裂しないウラン238に中性子をあて
て、核分裂性のプルトニウム239を生み出すために作られた装置ですが、このとき
中性子が二ついっぺんにあたるとプルトニウム240ができてしまうのです。それは
プルトニウム239と混在しやすい。

これは核兵器を作るときに、重大なネックとなります。プルトニウム240は自発
核分裂する。当然そのときに中性子が出てくるので、それが核分裂しやすいプル
トニウム239にぶつかると、核分裂反応を惹起させかねない。勝手に核爆発が始
まってしまうのです。そのため核兵器級のプルトニウムは、Pu239の比率が93%以
上でないといけない、Pu240は7%以下でないとされています。

では商業用の軽水炉の中ではどうなのか。この点は政府や文部科学省、東電など
が強調することなのですが、生成されるプルトニウムのうち、30%もPu240が含ま
れているのです。「だから核兵器には使用できません」というのが、決まり文句
として言われることです。しかしそれは長く運転した結果で、運転をごく初期に
やめてしまえばPu240はそれほど発生しない。実は軽水炉でも核兵器は作れるのです。

それはともあれ、こうした点からも、プルトニウム240は、全プルトニウムのうち
30%近くを占めることが、・・・核兵器用のプルトニウムを作っていない証として
・・・求められるのであり、だから当然にもある程度使われた核燃料の中には、
プルトニウム240がそれなりの量、生成されていることは、常識に属することがらな
のです。そのため自発核分裂というのなら、Pu240のことが言及されて不思議はない。

ところがなぜかキュリウムと仮定すると・・・という記述が出てくる。なぜだろう
か。プルトニウムが自発核分裂することに言及したくないのではないか。どうして
かといえば、すでに9月30日に、プルトニウムが原発から45キロ地点の飯舘村で検出
されたことが報道されているからではないかと僕には思えます。このときもPu239と
並んでPu240が検出されたと書かれている。

そうなるとどうなるか。検出された地点で、Pu240の自発核分裂が当然にも起こり
うるわけです。というより過去形としてすでに起こっていると思います。ということ
はその周辺に中性子が飛んだことになる。α線、β線、γ線だけでなく、中性子線
が環境を、したがってまた人を襲ってしまった可能性が高いといわざるを得ない。
重大で深刻なこの問題がここから浮かび上がってきます。

「重いから飛ばない」とされてきたストロンチウムが横浜から検出されたように、
プルトニウムがより原発から遠い地点で検出されることも近いうちにありうると
思うのですが、その可能性が高いからこそ、東電はプルトニウム240が、原子炉の
外で、環境中で、自発核分裂を起こしていることに言及したくなかったのでは
ないだろうか。なぜかといえばそれが重大な危険性を意味するのだからです。

もっともキュリウム自身も、原発から3キロの大熊町で計測されたことが6月時点で
明らかになっています。当然、このときもキュリウムの自発核分裂は起こっていた
はずで、周囲の方々が中性子線に襲われてしまった可能性が高い。今回の東電の
発表からはこうしたことも演繹される。要するに、そもそも原子炉の外で、自発核分裂
が起こるなどということが大変な事態なのです。

では実際に、原子炉の周辺はどうなっているのでしょうか。とてもではないが近づ
けない状態であることは間違いない。もともと放射線値が高い上に、中性子が常に
飛び交っている。それを知るからこそ、常に現場では臨界の可能性を感じるのだし、
中性子はあたったものを放射化してしまうので、それはさらに放射線値をあげる
結果を生み出す。危険で近寄れず、対処ができないどころか現状も把握できない。

それが今あることなのだと思います。つまり問題は、自発核分裂なんぞをする物質
が、原子炉と格納容器という閉じ込め機能の外に出てしまっていること自体にある
のです。それそのものがきわめて危険なのです。再臨界の可能性を云々するよりも、
この点を重視し、だからこそ、超ウラン元素がどのように、どれだけ外に飛び出し
ているのか、早急に計測することが必要です。

これらに踏まえて、超ウラン元素の拡散の実態に関する分析を深めていきたいと
思います・・・。

なおキュリウムが観測されたことに言及した、「明日に向けて」の記事のアドレス
を記しておきます!

明日に向けて(149)キュリウム・アメリシウム・ストロンチウムが検出された!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/29360d5be7cccc6d875fbd108858455c
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明日に向けて(312)東電、「臨界」の可能性を自発核分裂によって否定・・・しかし解せない。。。

2011年11月04日 23時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111104 23:30)

2日から3日にかけて、福島第一原発2号機で核分裂が起きているのではない
かという東電発表のニュースがかけめぐり、一時は、一時的に臨界がおきた
可能性があるとされたものの、最終的に臨界の可能性の根拠とされたキセノ
ンが、キュリウム242、244の自発核分裂によって発生したものと思われ、
臨界が起きた可能性はないという結論が東電より出されました。

その後の報道を見ていても、このまま臨界はなかったという方向で話が流れ
る可能性が強いように思われます。しかし僕にはどうも腑に落ちないところ
がある。臨界の可能性があるといいたいのではないのですが、何かが強く
ひっかかるのです。全体として発表があまりに不自然だからです。夕べから
これを解こうとチャレンジしてきて、現段階で推測できることを述べます。


まず非常に解せないのは、自発核分裂の可能性があることなど、初めから
わかっていることなのに、なぜ東電が、当初、再臨界の可能性があると判断
したのかという点と、自発核分裂をした放射線核種を、なぜキュリウムと
「仮定」したのかです。なぜ量的にはよりたくさんあるはずのプルトニウム
は問題にせずに、キュリウムを仮定に持ち出したのか・・・。

ネットを検索してみると、「陰謀説」的な見解がいくつか見られました。そ
のひとつは、細野大臣が新聞記者を12日に原発サイトに招くと発表したこと
に対し、東電が嫌がって、「臨界」を演出したなどというものもありました。
しかし僕にはとてもそうは見えない。そんな情報操作を演出するほどに、東
電に余裕があるようには見えないのです。

そうではなくて、一時は本当に臨界の可能性を疑ったのではないか。それで
あわてて核分裂反応をとめるホウ酸水を投入したのではないかと思えます。
この点で印象的なのは、その後の細野大臣の談話です。彼は自分も一時期は
核分裂していると思ったと述べつつ、「臨界が起きていないことを確認する
方法を検討する」と赤裸々な重大発言をしています。

4日のNHKWEBNEWSが報道していますが、これだと政府も東電も、実は臨界が
起こった際、それを把握する術を現段階では持っていないことが浮かびあが
ってきます。少なくとも、臨界と自発核分裂の違いを即座に知る手段がない
のだと思います。今はただ、核分裂生成物の量をみるしかない。そこから
連鎖反応があるのかないのかを判断するしかないのだと思います。

こう考えると、やはり東電も、細野大臣も、当初は核分裂反応が起きたので
はと相当に泡をくったことが推測されます。しかしその後に次第に量が明ら
かになった。正確には当初、観測されたものがすべてで、それ以上、大規模
な核分裂が進行していないことが判明し、臨界は起こってないと胸をなでお
ろした。その上で、では何が起こったのかの理由付けを考えたのだと思います。

そこで出てくるのは自発核分裂説ですが、この際、自然に考えれば、プルトニ
ウムの中で自発核分裂の起こる頻度の高いプルトニウム240の分裂を考えるの
が順当だと思うのですが、しかしプルトニウムの核分裂という表現はショッ
キングにとられかねないので避けたかった。それで同じく自発核分裂に至る
確率が相対的に高いキュリウムを持ち出したのではと思えます。

つまりこの過程には、東電も細野大臣も、本当に核分裂が起こったと一時は
思ったこと、ないしはそれを本当に恐れたことが介在しています。そしてそ
れがなぜかといえば、端的には、圧力容器を突き破り、格納容器をも破って
外に出てしまっていると思われる核燃料の状態を、東電がまったく把握でき
ていないからだと思います。だから相当に焦ったのではないか。


実際には、核分裂が起こる可能性、正確には核分裂が連鎖状態を維持する
「臨界」にいたる可能性について、たとえば、京大原子炉実験所の小出さん
は、きわめて少ないのではないかと指摘しています。核分裂のしやすい形状
の圧力容器が壊れてしまったので、きわめてしにくい状態なのではないかと
いう推論に基づいていです。

おそらく可能性としてはそうなのだと思います。しかし現場にいるものの
立場としては、確率論では考えられない。現状が把握できない・・・つまり
核燃料がどういう形状になっているかわからないので、ひょっとして臨界
しやすいように集まっているのではという不安が払拭できないのだと思いま
す。だから自発核分裂ではなくて、臨界を疑わざるをえなかった・・・。

つまりこのドタバタ劇ともいえる一連の過程の中から見えてくるのは、一つ
には、政府も東電も、実は燃料棒の現状をまったく把握できておらず、だら
ら臨界が起こる可能性も否定できずにいること、つまり臨界はありうること
と考えていることです。それほどに現状が分からない。分からないからこそ
さまざまな危機が考えられてしまう。それが実情なのではないか。

そして今、私たちの前にある危機はそこにこそあるのではないでしょうか。
どうなるか分からないのです。もちろん、論理的可能性でつめていって、
臨界は起こらないだろうと推論することは可能です。しかし少なくとも東電
と細野大臣はそうは考えていない。だから臨界ではないことを知る手段が必
要だと言っている。これが彼らの把握の実態なのは間違いないです。

・・・長くなったのでいったん、ここで文章を切り、続便で、自発核分裂を
キュリウムと仮定していることの不自然性について述べたいと思います。

この一連の過程の報道を貼り付けておきます・・・。

******************************

原発事故相 再臨界確認方法を検討
NHKWEBNWES 11月4日 12時52分

細野原発事故担当大臣は、閣議のあとの記者会見で、東京電力福島第一原子
力発電所の2号機内の気体から放射性物質のキセノンが検出された問題に関
連して、原子炉で再臨界が起きていないことを確認する方法を検討する考え
を示しました。

この中で、細野原発事故担当大臣は「2号機のキセノンについては、新たな
ことが起きたというよりは、これまで測れていなかったものが、正確に測れ
るようになって顕在化したということで、きのう東京電力が発表したが、私
も部分的な核分裂があったということだと考えている」と述べました。その
うえで、細野大臣は「冷温停止状態を目指すステップ2の終了の大きな前提
の1つは、事故がこれ以上、エスカレートしないことを確認することで、そ
れには再臨界も含まれている。キセノンの存在が明確になったのを契機に、
再臨界が起こらないことを確認する方法を検討する必要がある」と述べ、
原子炉で再臨界が起きていないことを確認する方法を検討する考えを示しま
した。そして、細野大臣は、国と東京電力が事故の収束に向けた工程表を月
に一度、見直すのに合わせて、今月中旬にもそうした方法を説明したいとい
う考えを示しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111104/t10013730391000.html

*****

福島第1原発:東電、一時的「臨界」の可能性否定
毎日新聞 2011年11月3日 21時09分(最終更新 11月3日 22時59分)

キセノンが生じる自発核分裂と臨界の違い 東京電力福島第1原発2号機の
原子炉格納容器内で、核分裂によって生じる放射性のキセノン135などが
ごく微量検出された問題で、東電は3日、中性子が当たらなくても単発で起
きる「自発核分裂」でキセノンが生じたとする見解を明らかにした。継続的
な核分裂が起きる「臨界」が一時的に生じた可能性は否定した。東電が分析
したところ、検出されたキセノンの濃度は、臨界になっていたと仮定した
場合よりかなり低かったという。

東電は、検出されたキセノン135が、損傷した核燃料などにあるキュリウ
ム242とキュリウム244の自発核分裂で生じたと仮定し、容器内のキュ
リウムの量を推計。核分裂で生じるキセノンの濃度を試算したところ、今回
検出されたキセノンの濃度(1立方センチあたり約10万分の1ベクレル)
とおおむね一致したという。一方、臨界が起きていたと仮定した場合、キセ
ノンは今回検出された濃度の約1万倍に達するという結果になった。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「容器内の中性子が臨界の必要量
を維持していない点からも、一時的な臨界はない」と説明。2日の会見で
臨界の可能性に触れた点について「詳細な分析ができていない中、可能性が
あったので言及した。『臨界』は一般の方が危険な状態と考えやすい言葉で、
不安を与えたのは申し訳ない」と陳謝した。

東電によると、キュリウムはウランやプルトニウムが中性子を吸収して生成
され、通常運転時や定期検査中でも自発核分裂が起きる。健全な炉内では、
キセノンは燃料棒の被覆管内に閉じ込められているが、今回は事故で被覆管
も溶けたため検出された。1、3号機についても、2号機と大きく変わらな
い状態だという。

経済産業省原子力安全・保安院は「東電からの正式な報告がなく、現時点で
『局所的な臨界が起きた可能性は否定できない』との見解は変わらない」と
している。【奥山智己、岡田英】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111104k0000m040054000c.html

*****

福島第1原発:2号機でキセノン検出確認 
毎日新聞 2011年11月2日 22時00分(最終更新 11月3日 3時55分)

◇1、3号機でも核分裂の可能性
東京電力福島第1原発2号機の原子炉格納容器内で、核分裂によって生じる
放射性のキセノン133やキセノン135とみられる気体がごく微量検出さ
れた問題で、経済産業省原子力安全・保安院は2日、検出されたのはキセノ
ン133と135だったと発表した。東電も同日、気体を再度測定した結果、
同濃度のキセノンとみられる気体を検出したと発表。保安院は「核分裂反応
が起き、キセノンが発生した可能性は高い」と話している。

東電は、日本原子力研究開発機構に気体の詳細分析を依頼。同機構がキセノ
ンの検出を確認し、保安院が公表した。保安院は「1、3号機でも同様に核
分裂が起きている可能性がある」としている。

東電は、格納容器内の気体を浄化して外部に放出する「格納容器ガス管理シ
ステム」(10月28日稼働)を使って1日午後に採取して測定した物質を
再び調べた。その結果、キセノン133とキセノン135がそれぞれ1立方
センチあたり10万分の1ベクレル程度含まれるデータが得られた。

さらに、2日昼にも物質を採取して測定し、同濃度のキセノン135を検出
した。キセノン133は検出されなかった。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は会見で「(1日午後に採取した)
同じ気体から2回検出されたので核分裂が起きた可能性は高い。ただ、核分
裂が起きていたとしても小さいレベルで、大量のエネルギーを出している
状況ではないので問題はない」と説明。圧力容器の温度や圧力のデータに
大きな変化はなく、核分裂が繰り返し起こる臨界が続いた可能性を否定した。

2号機の格納容器内では、8月にも今回と異なる方法で調査を実施。2種類
のキセノンが発生していた可能性があったが、ごく微量で検出できなかった
上、再臨界の可能性は低いとして詳しい測定をしていなかった。

保安院の森山善範原子力災害対策監は「今後、連続的な核分裂で局所的な
臨界が起きたかも含め、専門家の意見も聞きながら確定していきたい」と
述べた。【奥山智己、関東晋慈、久野華代】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111103k0000m040089000c.html
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明日に向けて(311)原発検査の手抜き実態を毎日新聞が暴露

2011年11月02日 12時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111102 12:00)

福島第一原発2号機で、核分裂反応が起こっている可能性が高い中、毎日
新聞が、原発検査の手抜きの実態を暴露する記事を出しました。こういう
記事を出してくれるのはありがたい。毎日新聞は、10月31日にも、福島
第一原発作業現場での被曝実態の暴露も行うなど、いい記事を連発して
います。現場の記者さんたちの努力に感謝です。

記事の核心は次の点です。「原発関連施設の唯一の法定検査機関で独立行
政法人の「原子力安全基盤機構」(東京都港区)が、対象の事業者に検査
内容の原案を事前に作成させ、それを丸写しした資料を基に検査している」
ようするにほとんどやらせの検査が横行しているということです。「チェッ
クの形骸化に専門家から厳しい批判の声が上がっている」とありますが、
検査など行われていないに等しいと言えます。

例えば東北電力東通原発1号機(青森県東通村)に納入予定の沸騰水型
軽水炉用核燃料を検査する際に、「同社が検査内容の原案で燃料棒の長さ
(約4メートル)を、事前に国に届け出た規定値の範囲より3~5センチ
短く誤って記載したため、機構も要領書の値を間違えた。検査員は結局、
要領書さえ見ず、同社が作成した別の文書と照合し、燃料棒の長さを妥当
として合格判定を出した」ことなどが起こっています。

こんないい加減な手抜き検査が横行しているのですから、これだけでも
日本のすべての原発に安全性がないことが明らかであり、一刻も早く残り
の原発も止めるべきです。にもかかわらず昨夜、抜き打ちで玄海原発の再
稼働が強行されていますが、あまりにも人々を愚弄した行為だと言わざる
を得ません。

注目すべきことは、こうした手抜き検査の実態と、核分裂が起こる状態が
まったく排除できていないのに、「冷温停止状態」を云々する福島第一
原発の現状とがリンクしていることです。同じ手抜き、安全性無視、情報
隠蔽の体質を持った人々が、携っているからです。ここに私たちの前に
ある危機の本質がある。

僕は原発はかりに、きちんとした管理体制を行っても安全運転は不可能だ
と思っています。きちんと管理・点検したら、危険個所が次々と発見され
るはずだからです。にもかかわらず危機を直視せず、安易に「安全」を語
る体質が、このような杜撰な検査体制に反映しているのです。これが構造
的に危機を抱える原発の危険性をさらに大きくしています。

私たちは再度、全ての原発を止めよとの声を高めていかなければなりません。

************************

原発検査:内容、業者が原案を作成 丸写しが常態化
毎日新聞 2011年11月2日 2時30分(最終更新 11月2日 2時42分)

原発関連施設の唯一の法定検査機関で独立行政法人の「原子力安全基盤
機構」(東京都港区)が、対象の事業者に検査内容の原案を事前に作成さ
せ、それを丸写しした資料を基に検査していることが毎日新聞が情報公開
で入手した文書で分かった。丸写しは常態化しており、中には国に「合格」
と報告した後にミスが判明した例もある。チェックの形骸化に専門家から
厳しい批判の声が上がっている。所管官庁の経済産業省原子力安全・保安
院は来春、規制強化を目指し「原子力安全庁」(仮称)に改組されるが、
機構の検査についても改善を迫られそうだ。

機構の法定検査は、検査項目や合格判定基準などを記載した「要領書」と
呼ばれる資料を基に行われる。毎日新聞は機構の検査実態を調べる中で、
東北電力東通原発1号機(青森県東通村)に納入予定の沸騰水型軽水炉用
核燃料を検査するための要領書と、検査内容の原案を入手した。

原案は、燃料を加工・製造した「グローバル・ニュークリア・フュエル・
ジャパン」(神奈川県横須賀市)が作成し、表紙を含めA4判61ページ。
検査目的▽項目▽サンプル検査の対象となる燃料ロット(燃料棒の束)の
抽出法▽燃料棒の寸法(規定値)--などが記載されている。一方、機構
の要領書はA4判62ページ。表紙は差し替え、2ページ目を除く3ペー
ジ目以降は書式や活字のフォントも含め一言一句原案と同じだった。

機構によると、原案は08年9月、電子データの形でグローバル社から無償
で受け取った。機構の検査員は同12月18日、原案を丸写しした要領書を
持参して検査に臨んだ。

この際、同社が検査内容の原案で燃料棒の長さ(約4メートル)を、事前に
国に届け出た規定値の範囲より3~5センチ短く誤って記載したため、機構
も要領書の値を間違えた。検査員は結局、要領書さえ見ず、同社が作成した
別の文書と照合し、燃料棒の長さを妥当として合格判定を出した。

検査員は国に合格判定を報告(合格通知)する前の09年2月、誤りに気づ
いた。その後の内部調査で、08年10~12月に行われた同社に対する3
回の検査でも同じミスが判明。これら3回については、いずれも国に合格
通知していた。機構の工藤雅春・検査業務部次長は取材に、丸写しが常態化
していることを認めた。しかし「事業者も内部で同様の検査をしているので、
原案を作ってもらっても問題ない。原案の誤りに気づけば修正している」と
説明している。【川辺康広、酒造唯】
http://mainichi.jp/select/science/news/20111102k0000m040168000c.html
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