セイコー・ワールドタイム6217-7000は1964年の東京オリンピック開催を記念して発売をしたモデルですね。裏蓋には聖火のマークが入っています。機械はCal6217Aと普及機クラスですが、個体数が少なく、現在では希少となっていて高価です。で、パッと見て変ですね。ダイヤルリングは回転式ですが、風防の内側に本来は無いはずのOリングが見えます。
自動巻きの効率が悪く、マジックレバーと伝エ車が摩耗しているようです。
風防を分解してみました。内側にOリングが入っています。これは純正風防ではなく、別モデル用を流用するためにダイヤルリングを抑えるために入れられているようです。
SSケースは年代相応のキズが多いですね。軽く研磨をすることにします。
発売当時からコレクション用とされた個体やデッドストックではない通常の実用品ですから深いキズや打痕があって、完全に研磨をするとオリジナルのカットやデザインが崩れてしまいますから、軽く研磨をするに留めるようにしています。当時、新品を購入されたオーナーさんも、まさか後年に希少価値が出るなどと思いもしなかったことでしょう。
長期間の使用によって、裏蓋にあるはずの聖火のマークも、光線の角度によって辛うじて「なにかあったんだろうなぁ」と思わせる程度に残っています。この部分は研磨をしないことにします。透明の保護シールでも貼っておかれた方がよいですね。
内緒で専門書の画像を拝借して・・このようなデザインが描かれていたのです。元々、凹凸の少ない加工方法が採られたため、使用されたものできれいに残っているものは少ないのでしょう。見本の製造時期は1964年3月で、今回の個体は1964年5月の製造のようです。東京オリンピックは1964年10月10日です。
書き忘れましたが、機械の状態はフラフラとやって動く状態で測定が出来きません。さて、ちゃんと動くようになりますか? 24時間針を駆動するために筒車がダブルになっています。
正常に作動しない原因の1つにゼンマイがあるようです。香箱の内周は摩耗が進んで、ゼンマイのスリップを止めるためか自動巻きゼンマイ特有のスリッピングアタッチメント(尻尾)が極端に曲げられています。汚れがひどいので、きれいに洗浄をして注油、ゼンマイをセットします。
香箱真の受けが摩耗拡大したためにポンチで修正をしてあります。地板を交換したいところ。
輪列の組立は割愛。ダイヤショックのバネを専用工具で外して注油をします。
日ノ裏側。日車を制御する日制レバーを取り付けます。カンヌキバネを飛ばさないように・・
辛うじて、デッドストックの純正風防が手に入りました。ダイヤルリングを清掃してケースにセット。風防を研磨しておいたベゼルで取り付けます。
自動巻きのマジックレバーが摩耗のため、他の62系から調達して使います。
機械をケースにセットして、竜頭でダイヤルリングが回転するかを見ます。
回転錘を取付けて組立は完成。
何とか普通のデータになって来ましたね。
長期間、普通に使われた個体ですから状態が悪くて当然ですね。役目を果たしてくれたのです。それだけに修復は困難ですが、まぁまぁのコンディションにはなったと思います。私も機会があれば欲しいモデルの一つです。