先日もPEN-W・PEN-Sブラックと精力的に活動されている自称「遅れて来たPENマニア」さんからジョンブリアン2台が来ています。頑張りますね。私だって持ってませんよ。ジョンブリアンは昔から珍重されていた関係で、程度の良い個体が多いのですが、今回はダメですよ。2台共、同時期の個体で、手前が#1992XX、後ろが#1973XXですが、どちらも各部に難があって、どちらをメインとして仕上げるか難しい判断です。パッと見、手前の1992XXが良さそうに見えたので、こちらを基本としようかと・・
しかし、ダイカスト本体の塗装は両方とも手遅れ状態だよなぁ。。
裏蓋のモルトと接触をする先端部は腐植が進んでいます。
本体はリペイントをすることにして分解をしていきましたが、過去の分解が下手くそで状態が良くありません。この頃は駒数ギヤに組立用の2孔が開いていないので、リール軸と分離するのが困難なのですが、軸の上部をペンチなどで銜えたのか? ギヤにも噛みキズが付いています。
頭は生きているうちに使うものです。このように分離しましたが、リール軸は交換の必要がありますし、他の部分のコンディションも悪いと判断して、もう一台#1973XXの方をメインに作ることに変更します。
しかし、当初、除外をした理由がこれなんですね。トップカバーのクロームメッキの劣化が激しいのです。再メッキという手もありますが、今回磨いてみます。
磨き出しをしたところ。上面と前面は、まぁまぁ見られるように光って来ましたね。
問題の裏面。銅下まで露出している部分があります。#1992XXのカバーの方が光り方は良いのですが、角にアタリがありますし、なるべく戸籍は守って仕上げたいのでこちらを選択しています。
貴重なジョンブリアン色のシボ革なので、慎重に剥離をしていきます。塗装面と内部の腐食は進んでいます。
塗料の劣化(風化)もあって、最悪の状態です。
グレーの塗装部分を荒研磨したところ。腐食が進行していて、もう少し研磨をする必要があります。
全国的な寒波の影響で、関東地方も冷え込んでいますが、よりによって、そんな時に塗装作業はつらいです。私が言うペングレーという色も、時期によって変化をしていて、初期のものは後期のものに比較して濃いグレーです。しかも単純なグレーではない。また、ダイカスト本体と裏蓋では微妙に色が異なってて、たぶん同一行程では塗装をされていないと思います。それに加えて、塗装面の磨滅による色彩の変化と塗料の劣化もあって、果たして、今見ている色が、当時の新品の色とは限らない。まぁ、その辺りを考慮した妥協の調色になります。当初は、裏蓋も塗装をするつもりでしたが、磨いてみるとそれほど悪くはない。工数としては1個も2個も大差はありませんが、なるべくオリジナルは残したいという判断でリペイントはしないことにしました。しかし、色が合わないので、調色に苦労をすることになりますけど・・ダイカストの腐食が激しく、塗装と研磨を繰り返して、きれいな面を作っています。
シャッターユニットですが、1961-4月の製造ですから53年前になりますね。大体このようなコンディションになっています。しかし、ピントリングを留めるイモネジの1本が緩みません。観察すると、周辺の黒アルマイトが剥げています。これは、ネジがバカになったか、イモネジを紛失したため、別規格のネジを無理に締め込んであるのです。相手がアルミですから、締め込みは出来ても噛み込んでいて緩めることができません。よって、もう一台の個体のユニットを使うことにします。
ユニットを組み直してレンズの清掃を終えたところ。保管状態がよろしくないこの頃の個体は、後玉のコーティングはまずダメですね。
シャツターのハウジング、シャッターリング、ピントリングの研磨もしてあります。この頃のピントリングの彫刻文字は赤文字のみ色入れで、他は彫刻のままです。
ダイカスト本体にシャッターユニットを組み込みます。前カバーはご覧のとおり本体への密着をさせるために曲げて取り付けてあります。まだ、修正しながらの生産だったようです。
ファインダーブロックは樹脂製のため劣化をしていましたので、これも交換してあります。但し、どちらも1961-4月生産分と同一ロットにより部品の仕様は全く同じですが、そのまま組み立てると孔位置の関係で、シューが斜めに付いてしまいます。よって孔位置を修正してあります。当然、当時の生産現場でも同じことが起きていたはずです。レリーズボタンのリターンスプリングも錆びていますので交換して組み立てます。
裏蓋は洗浄、圧板研磨、モルト交換をしていますが画像は省略。トップカバーの彫刻文字の色入れ、駒数ガラスの研磨をしてやっと完成です。中々きれいに出来上がりましたね。オーナーさんは、別に完全オリジナル(今回はボディー部リペイント)の個体を探すんだとおっしゃっていましたが、これでいいんじゃないでしょうかね?
微妙な色ですので、画像では良く分かりませんね。ダイカストの荒れた肌は修正されていると思います。手間は掛かりましたけどね。
当時のカタログは折り畳んだ短冊状のものが多かったですね。
出来上がりが楽しみです。
私は、S800などをレストアしていましたので、古い機械などを再生させることは大きな自動車でも小さなカメラや腕時計でも基本は一緒だということを学んでいます。あとは、何とか元の姿に戻したとい情熱ですね。