昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[舟のない港](十五)

2016-03-17 09:05:53 | 小説
 その夜、部屋の灯りの下で二人の名刺を交互に見ながら、「ミドリ、ミドリ」と呟いてみた。 学生時代に思い浮かべていた平井ミドリとは違い、意外な子供っぽさに男は半ば酔いしれた。 青年時代に戻ったような気持ちだった。  時計は十時半を指している。 ベッドに寝転がりながら、窓に目をやった。 全くの闇夜だった。 そろそろ小降りになったらしく、雨音が小さくなっている。 明日には晴れそうな気配だ。  傍らの . . . 本文を読む

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