長編小説を読み切ったのは、ほんとに久しぶりです。
ひょっとして、40年以上前になるかも‥‥。
カズオ・イシグロ という作家さん、ご存知ですか?
英国在住の、日本人です。
1982年、28歳の長編デビュー作「遠い山なみの光」で、王立文学協会賞を受賞されました。
1986年、「浮き世の画家」でウィットブレット賞を受賞です。
そしていよいよ1989年、「日の名残り」にて、最も栄誉ある「ブッカー賞」を受賞です。 . . . 本文を読む
「実は、交際中の女性が実家に帰っているんです。
で、手紙が届いていないか、気になりまして。
彼女のお父さんが倒れられまして、看護疲れからかお母さんも体調を崩されたんです。
そんな訳で、彼女はお正月を実家で送る羽目になったんです。
三日と空けずに、手紙が来るものですから」
「そうですか。それは、淋しいですなあ。で? その女性とは長いのですかな」
「お父さん、そんな立ち入ったことを」
黙って聞いてい . . . 本文を読む
由香里のそんな大胆な行動は、正直彼には迷惑だった。
好意を抱いてるくれることは嬉しいのだが、一人っ娘のせいかストレートな感情表現には弱った。
彼自身、由香里を好ましく思ってはいる。
可愛らしいとも、思っている。
唯、恋愛の対象とはならないのだ。
特に、父親の存在が大きい。大げさに言えば、彼の将来を左右しかねない存在なのだ。
蛍子の言葉が、耳から離れない。
「コネは、大事になさい」
二時間ほど . . . 本文を読む
「そんなの、あたりまえよ。由香里が好きになったせんせえだよ。
でも、いいの。由香里、お母さんみたいに、ステキな女性になるから。
待っててね、せんせえ」
「あらあら、素敵な女性だなんて。ありがとう、由香里ちゃん。さっ、じゃあ出発しますよ」 . . . 本文を読む