人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ノルマ・ファンティーニの「トスカ」にブラボー~プラハ国立歌劇場の公演を観る

2011年10月17日 06時29分19秒 | 日記

17日(月).昨日、東京文化会館で、プラハ国立歌劇場によるプッチーニのオペラ「トスカ」を観てきました ノルマ・ファンティー二がタイトル・ロールのトスカを歌う待望の公演です.自席は1階13列13番.中央のやや左・通路側です.

プラハ国立歌劇場は1887年に創設されたチェコ随一のオペラ専門の歌劇場です。マーラー、ジョージ・セル、クレンぺラ―など錚々たる指揮者を迎えて公演を挙行してきました。今回の公演は同歌劇場来日15周年とのことですが,舞台は1947年当時の舞台構成を復元したものということです.舞台はシンプルでオーソドックスが一番です

ノルマ・ファンティーニのトスカ以外のキャストは,カヴァラドッシ=ピエロ・ジュリアッチ,スカルピア=ミゲランジェロ・カヴァルカンティ,アンジェロッティ=ルカーシ・ヒネック=クレーマーほかです.バックはジョルジュ・クローチ指揮プラハ国立歌劇場管弦楽団,同合唱団が務めます.

この日のファンティーニには一つ不安がありました というのは,前日歌う予定だったエヴァ・マルトンが来日不能になり,急きょファンティーニが2日連続でトスカを歌うことになったからです.ただ,その心配は結果的には杞憂に終わりました

よく言われることですが,このオペラの特徴は「劇と音楽の一体化」です.物語と音楽が常に一体となって進み,台詞のみの場面や,劇を中断させる挿入音楽はほとんどなく,終始弛緩することがなく進みます もう一つの特徴は,主人公役の一人だけのアリアが極めて少ないということです.第1幕のカヴァラドッシのアリア「妙なる調和」,スカルピアのアリア「行け,トスカ」,第2幕のトスカのアリア「歌に生き,恋に生き」,第3幕のカヴァラドッシのアリア「星は光りぬ」くらいしかないのです.あとはトスカとカヴァラドッシ,トスカとスカルピアというように,二重唱が多いのです.それはそれで素晴らしい音楽なのですが

カヴァラドッシ役のピエロ・ジュリアッチは第1幕の「妙なる調和」で素晴らしいテノールを聴かせ観衆の心をつかみました.声は申し分ないのですが,ちょっと太りすぎでは?と思いました.もちろん第3幕の「星は光りぬ」も素晴らしかったですが

アンジェロッティ役のクレーマーは,最初舞台に登場したときに「イエス・キリスト」が出てきたのかと勘違いするほど,似ていました こちらは,ちょっと痩せすぎでは?と思いました.世の中うまくいかないものです.

スカルピア役のカヴァルカンティは第1幕を締めくくる「行け,トスカ」を見事なバリトンで歌い盛んな拍手を受けました.ただ,容姿が全然悪人に見えないのが玉にキズです.もっと”えげつなさ”や”いやらしさ”が欲しいと思いました 私はスカルピアの独白から,途中でテ・デウムが加わって第1幕が荘厳に締めくくられるこのシーンが大好きです.この演出ではオーケストラの音楽に,時々大砲の音が混じり,緊張感を高めていました.その意味では十分楽しめました

さて,最初から最後まで出ずっぱりのトスカ役ノルマ・ファンティーニの素晴らしさを,どのように表現すればいいのでしょうか 第1幕のカヴァラドッシとの二重唱「二人の愛の家へ」ではのびやかな美しい歌声を聴かせてくれました.このオペラのハイライト,第2幕のアリア「歌に生き,恋に生き」では,あまりの感動で背筋が寒くなり,涙がチョチョギレそうになりました しばらく会場の拍手喝采,ブラボーが止みませんでした

今回の公演を観るに当たって,どういう演出をするのか楽しみにしていたのが,最後にトスカが城壁から身を投げるシーンです.通常のオペラの演出では,トスカが,足から”どっこいしょ”という感じで飛び降りるのですが,新国立オペラでファンティーニがトスカを演じた時には,直立のまま”倒れ込み”ました.それが感動的で今でも忘れられないのです

今回も同じ演出でやってくれました新国立の時はどうだったか思い出せないのですが,彼女は右手にスカーフを高く掲げて,そのまま城壁から直立のまま倒れ込んでいきました.なんと迫真の演技感動的なフィナーレ ここでも背筋が寒くなりました.

終演後,会場は割れんばかりのとブラボー,ブラビーの嵐です.会場のあちこちでスタンディング・オーベーションが見られました.とくにノルマ・ファンティーニが舞台に登場した時の騒ぎは尋常ではなく,ファンティー二も何度も会場に向けて投げキッスをして応えていました 最後に大きく手を振って舞台袖に引き上げていきました.とても名残惜しかったです

ひと言でノルマ・ファンティーニの魅力を語るのは難しいのですが,トスカに関して言えば,彼女は”トスカを演じている”というよりは”トスカに成り切っている”と言った方が相応しいと思います.トスカへの感情移入が激しいように思います

最後に忘れてはならないのはクローチの指揮と,プラハ国立歌劇場管弦楽団の演奏です.ソリストたちの歌をしっかり支え,ある時は自ら”歌って”このオペラを盛り上げていました

プログラムの中の,ファンティーニのインタビュー記事が載っているのですが,今後の予定として来年,新国立劇場で「トスカ」を歌うとのことです.また一つ楽しみが増えました

 

       〔プログラム表紙と中面掲載のノルマ・ファンティーニ〕

        

 

この公演が今年100回目です.一応目標達成ですが,まだまだ続きます.また,今年2月15日に始めたこのブログが今回300回を迎えました.こちらも,まだまだ続きます

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする