19日(水).昨日の日経夕刊に「謎多きピアニスト研究進む~天才グールド,その素顔は」という記事が載りました
グレン・グールドは真夏でも手袋とマフラーを手放さず,異様に低い椅子に座り,歌いながら鍵盤を叩いていました バーンスタインとの共演後,31歳の1964年以降コンサートは開かず,レコードのみを発表,50歳という若さで死去した天才ピアニストです
記事は,カナダの新聞記者マイケル・クラークスン著「グレン・グールド シークレット・ライフ」を紹介,「かかわりのあった女性らの証言をもとに,数々のロマンスからその実像に迫っている」としています.青柳いづみこ著「グレン・グールド」は未発表のライブ音源なども取り上げ,これまであまり顧みられなかったステージ演奏家時代に光を当てている,とのことです
また10月29日から銀座テアトルシネマほかで公開される「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」を紹介,かつての恋人たちの口から彼の素顔が語られる,としています.
彼の演奏の特徴は一音一音を区切る独特の奏法で,楽曲をバラバラに分解して全く違うものに組み立てるような解釈です.また,作曲家の指定を無視して,ゆっくりと弾いたりするのも彼の演奏の大きな特徴です
グールドといえば2つのゴールドベルク変奏曲が有名です.最初の演奏は1955年のモノラル録音で,2番目の演奏はその27年後の1982年のステレオ録音です.最初の演奏は”とんがって”いますが,2番目のはゆったりとしたテンポで音楽が進みます 個人的には最初の演奏の方が何とも言えない味があって引き込まれます
〔写真左はバッハ「ゴールドベルク変奏曲1955年盤」,同右は「同変奏曲1982年盤」〕
グールドのLP,CDは,モーツアルトのピアノ・ソナタ全集,バッハのインヴェンションとシンフォニア,フランス組曲,イギリス組曲,ピアノ協奏曲集,ブラームスの間奏曲などなどを持っていますが,彼の演奏の中で一番気に入っているのはシベリウスの「ピアノ小品集」です.ソナチネ第1番,第2番,3番とキュッリッキ(ピアノのための3つの抒情的小品)が収録されています.とくにソナチネ第1番がお気に入りです 北欧の厳しい自然のなかの”静寂の音楽”を感じます
グールドは1982年没ということなので,来年,没後30年を迎えます.ますます注目される偉大なアーティストです
〔写真左はシベリウスのCD,右は映画のチラシ〕