人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ベートーヴェン「スプリング・ソナタ」を新イイノホールで聴く~オープニング・コンサートから

2011年10月26日 06時52分08秒 | 日記

26日(水).昨夕,装い新たにオープンした内幸町イイノホールに,オープニング公演「深沢亮子と若きアーティストたち」を聴きに行ってきました職場が3つ隣のビルなので,あまりにも近すぎて開場まで時間を潰すのに苦労するほどでしたが,6時15分ごろ新しい飯野ビルの長いエスカレーターで4階の「イイノホール」フロアに上がると,すでに長蛇の列ができていました全自由席ですから無理もありません.6時半の開場とともに左サイドの席から埋まっていきます.ピアノ曲があるからです.自席は1-M-9で,前から13列目の左サイド通路側です

会場を見渡すと,ほぼ満席ですが,私がいつも行っているコンサートと比べ客層が大分違う印象を受けました.ひと言でいうと,女性の高齢者の割合が多いということです.これは昨年暮れに銀座の王子ホールでピアニストの遠山慶子がウィーン・フィルの元コンマスのウェルナー・ヒンクと組んでモーツアルトのヴァイオリン・ソナタを弾いたときとほぼ同じ客層ではないか,と感じました つまり,演奏者とほぼ同世代の女性が聴いている,という印象です.これはあくまでも”印象”ですので,事実かどうかは分かりません

演奏のトップバッターは2002年ソフィア国際コンクール優勝の小沢麻由子(ピアノ)で,演奏曲目は①ショパン前奏曲「雨だれ」,②同ノクターン作品27-2,③マズルカ作品59-1,④リスト「愛の夢・第3番」の4曲です.

スタインウェイの豊かな響きが会場の隅々まで広がり,楽器としてのホールは申し分ありません.残響1.5秒は,500人規模のホールとしては最適ではないかと思いました ただ,演奏の方は,やや平板な印象を受けました.淡々と弾いても訴えてくる演奏もありますが,残念ながら私には彼女の”主張”が届いてきませんでした.これは人それぞれなので,違う印象を持った方も当然いらっしゃるでしょう.リストに至ってやっと本領発揮といった感じを受けました

2番手は東京シティフィル,関西フィルなどで首席客員チェロ奏者としても活躍している海野幹雄で,J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」を演奏しました.冒頭からチェロ特有のつややかな深い響きが会場を満たします.彼の人柄が演奏に現れているのではないか,と思いました.本人とは面識がありませんが,きっと人当たりのいい,心優しい人ではないかと思います

3番目は,チェロの海野幹雄,ハープの千田悦子が演奏するサン=サーンス「動物の謝肉祭」の”白鳥”を,谷桃子バレエ団プリマの佐々木和葉がバレエで踊りました.薄暗い中,チェロとハープの”白鳥”のメロディーに乗って,バレリーナが舞台下手から登場します.手の動きが,まるで白鳥が羽ばたいているようで,その表現力には素晴らしいものがありました パフォーマンスが終わって照明が落ちると,会場後方から”ブラボー”の声がかかりました.さては,関係者が・・・・と思いましたが,”ブラボー”がかかっても不自然ではない程素晴らしい演奏,バレエでした

休憩時間になったので,会場後方にあるホワイエに出て,招待券をくださったKさんを見つけ,ホールについての率直な感想をお伝えしました.「ピアノもチェロもハープも会場いっぱい豊かに響き,音響効果は申し分がありません.バレエも素晴らしかったです.今回のようなハープ,チェロ,バレエのコラボは面白い企画だと思いました

休憩後の最初は,ハープの千田悦子による①リスト「夜鳴きうぐいす」②ゴドフロア「ヴェニスの謝肉祭」の2曲です.両曲ともハープの特性が生かされた佳曲で,とくに「ヴェニスの謝肉祭」は,聴いていて,まるでゴンドラに乗ってヴェニスの街を巡っているような気分になるような気持ちのいい曲で,千田の演奏はそういう雰囲気を見事に描き出していました

さてこの日の”とり”は深沢亮子のピアノ,永井公美子のヴァイオリンによるベートーヴェンの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ”春”」です.深沢亮子は1959年にウィーン国立音楽大学を首席で卒業,1961年ジュネーブ国際コンクールで最高位入賞(1位なしの2位)という経歴の持ち主.萩原麻未の大先輩ですね.永井公美子はハノーファー音楽演劇大学を首席で卒業した経歴をもっています

ところで,モーツアルトのヴァイオリン・ソナタとベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタとは位置づけがまったく違います.モーツアルトのヴァイオリン・ソナタは,正確には「ヴァイオリンの伴奏を伴ったピアノ・ソナタ」で,あくまでもピアノが主役です それに対してベートーヴェンのそれは,「ピアノとヴァイオリンのための~」というように,ピアノとヴァイオリンが対等の立場で演奏されます

深沢亮子と永井公美子によるコラボは,まさに対等の立場で演奏されました.ヴァイオリンが伸びやかにメロディーを奏でると,ピアノがそれを受けてやさしく繰り返します.そして,ときにフォルテで曲を引き締めます.その意味では,実質的には深沢のピアノがリード役になっていたのかもしれません

演奏後,出場者全員が舞台に登場しましたが,バレエを踊った佐々木和葉が普段着に着替えて出てきました.周りの人たちの声が聞こえます「あら,かわいい人なのねえ」.おっしゃる通りの印象です 来年1月8日新国立劇場中劇場で谷桃子バレエ団新春公演「シンデレラ」に主演予定とのこと.行ってみようかな

最後に深沢が,拍手を制して「このホールには旧ホールのときからお世話になっている.新しいホールになって本当に喜ばしい」とあいさつ,「アンコールを演奏します」と言ったのですが,マイクでなく地声なので作曲者名と曲名が聞こえません.多くの人がそうだったのではないかと思います.「アンコール曲」が弾かれ,拍手で締めくくられましたが,ロマン派の曲だったように思ったものの,誰の何の曲か分かりません

多くのホールでは,出口近くに「本日のアンコール曲」という掲示が出されていますが,見かけませんでした.あるいは見落としていたのかもしれませんが,もし掲示が出されていなかったとしたら,今後は是非掲示してほしいと思います.こうした小さな努力の積み重ねがリピーターを作る基礎になると思いますので

前述のとおり,新イイノホールは音響が非常に優れており,500人収容のホールで残響時間1.5秒は最適です.音響の良さにとどまらず,このホールにはいくつかの特徴があります 会場の後方から舞台方向を見ると,客席の椅子のつながりが,まるで波のように見えます.また,ホワイエの天井を見上げると,壁から天井にかけて船底のように湾曲しており,まるで自分が海の底にいるような印象を受けます.このように,ビルの持ち主である飯野海運の船会社としてのこだわりを随所に見ることができます

一度ご自分の目で見て耳で確かめてみてはいかがでしょうか.8月27日付のブログでも紹介しましたが,12月18日(日)午後1:30から「江副育成会コンサート」があります.ピアノの北村朋幹,田村響,チェロの宮田大など若手の有望株が出演します.500席しかないので,早い者勝ちです.売り切れの場合はごめんなさい

 

        

 

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