人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「新交響楽団」第215回演奏会でマーラーの交響曲第5番を聴く

2011年10月31日 06時44分23秒 | 日記

31日(月).昨日,すみだトリフォニーホールで新交響楽団の第215回演奏会を聴いてきました.新交響楽団は1956年創立のアマチュア・オーケストラで,アマオケの老舗的な存在です.今回の指揮は高関健です.高関=新響のコンビでマーラーの交響曲シリーズを展開していますが,最近では第9番,第6番,第7番と聴いてきました.マーラー・イヤーの今年(没後100年)の最後を飾る曲として,最も人気がある第5番が選ばれました

プログラムは①シェーンベルク「5つの管弦楽曲〈1949年改訂版〉」,②マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」の2曲です.苦手なシェーンベルクがあるので,少し早めに会場近くに行ってコーヒーを飲みました.眠気覚ましです.結局だめでしたが

会場に開演20分前に着きました.ロビーの隅に「花束受付」があり,たくさんの紙袋(多分,花束やプレゼントが入っている)が置かれていました.出演者のご家族,知人・友人が多く来られているのでしょう.会場はほぼ満席です.自席は1階16列12番,中央やや左の通路側です

オーケストラの配置は,舞台に向かって左から第1ヴァイオリン,その後ろにコントラバス,中央にチェロとヴィオラ,右に第2ヴァイオリンという「対向配置」です.高関健が指揮するときは必ずこの配置を採ります.コンマスは女性です(したがってコンミスというのが正しいのでしょう).舞台いっぱいにスタンバイするのは約90人の演奏者です

高関健が登壇して,1曲目のシェーンベルクが始まります.最初の出だしを聴いた瞬間から「これはダメだ!ついていけない」と思いました.コーヒーを飲んで覚悟を決めて臨んだのですが,どうしてもシェーンベルクは馴染めません.結局,終始目をつぶって寝ていました.演奏者の皆様ごめんなさい

さて,何を隠そう私はマーラーの第5番を聴きにきたのです.コンマスが別の女性に代わって,高関のタクトによりトランペットが高らかに「葬送行進曲」のファンファーレを奏でます 失礼ながら高齢の奏者だったので”大丈夫かな”と心配していたのですが,なんの,素晴らしい演奏です 上々の滑り出しといってもいいでしょう.「激情的,荒れ狂った」旋律と「哀愁を帯びた」旋律が交互に奏でられ,最後は低弦のピッツィカートでとどめがさされます

ところで,この冒頭のトランペットが奏でるファンファーレはメンデルスゾーンの「結婚行進曲」のパロディだと言われています.”結婚”のテーマが,マーラーにかかると”葬送”に変わってしまうのです.恐ろしい人です

第2楽章は「嵐のように荒々しく動きをもって」と指定されているように,激しい音楽が続きます.この楽章が終わると,ホルン奏者が自席から降りてきてコンマスの前にスタンバイしました.これはどういうことかと思案しているうちに第3楽章「スケルツォ」が始まりました.

ところで,この公演のプログラムがすごく充実していて,曲目の解説とともに指揮者・高関健へのインタビューが載っているのですが,彼の発言の中に次のようなくだりがあります.

「例えば第3楽章のオブリガート・ホルンが前に出てくる話についても,新全集版では校訂報告の中で,どの演奏会で舞台のどこで吹いたのかを検証した記事があります.マーラーの発想は他のホルンとはっきり分離して立体的に聴こえること,つまりオペラ的な遠近感の獲得にあります.マーラーと交流の深かった指揮者メンゲルベルクが使ったスコアが残っています.マーラーは第5番を1906年3月にコンセルトヘボウで振っていますが,メンゲルベルクは事前の練習を買って出て,マーラーの練習にも出席,作曲者の指示を細かくメモしています.このスコアにはマーラー本人も赤いインクで多数書き込んでいます.その中に”(第3楽章の)ホルン・ソロはいつもはっきりと,そのためにソリストのようにコンサートマスターの前に位置すること”と書き込まれています」

演奏終了後に,この文面に接して初めて納得しました これまで何度もこの曲を生で聴いてきましたが,ホルン奏者がソリストのように前に出てきて演奏するのを見たのは今回が初めてでした.マーラーの曲の演奏解釈も時代とともに変わってきているのだと理解しました

ホルン奏者が自席に戻り,さて,次はいよいよこの曲の聴かせどころ,第4楽章「アダージェット」です.2台のハープと弦楽器によって美しいメロディーが奏でられます.残念なことに途中,どの楽器かに何かトラブルがあったのか,すごい音がしました.気のせいかも知れません

切れ目なく第5楽章に入ります.ここに来て,さすがに金管は疲れが出てきたようで調子を崩す奏者もありましたが,最後はテンポを上げて圧倒的なフィナーレを飾りました

この曲については,高関が前掲のインタビューで次のように解説しています.実にわかりやすい解説です

「1901年から翌年夏にかけて第5番を書いているわけですが,この頃がマーラーの人生の絶頂期ですね.王立歌劇場での仕事も好調で,11月にアルマ・シントラーと出会い,翌3月には結婚しています.こうした経緯が第5番にすべて反映している.本当に不思議な曲ですね.第1楽章では葬送行進曲を書いているわけでしょう.もう俺は死ぬか,というような.第2楽章でこれからどうやって生きていこう,と悩み抜いているところに,突然彼女が現れ第3楽章で有頂天になって,第4楽章で「大好き!」って告白して,第5楽章で結婚できました,と報告している(笑).第5楽章のスコアを見て驚くのは,1回も短調にならない!」

プログラムに掲載された「新交響楽団」のメンバー表を見ると,いろいろな職業の方々の集まりだということがわかります.仕事の合間に練習を重ね,年4回の公演に全力を傾注する.しかも,マーラーのような大曲に真正面から挑戦する.年齢を超え,性別を超え,職業を超え,心から音楽を愛するからこそ,そういうことが可能なのでしょう.そういう皆さんの心意気に最大限の敬意を表します.これからもいい音楽を聴かせてください

 

           

 

ところで,アマチュア・オーケストラの演奏会に行くと,入り口で配っているチラシの束の中にプロの演奏会に混じってアマ・オケのチラシが沢山入っています.この日に入っていたのは,藝大フィルハーモニア,東京シンフォニエッタ,東京アカデミー・オーケストラ,武蔵野音楽大学ウインドアンサンブル,シンフォニック・ウインド・アンサンブル,葛飾フィルハーモニー管弦楽団,シンフォニア・ズブロッカ,東京アカデミッシェカペレ,湘南弦楽合奏団,中央大学管弦楽団,ル スコアール管弦楽団,新交響吹奏楽団,東京学芸大学管弦楽団,法政大学交響楽団,新日本交響楽団,首都大学東京管弦楽団,上野浅草フィルハーモニー管弦楽団でした.ほかにも多数あるのでしょうが,音楽の好きな人はたくさんいらっしゃるのですね

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