29日(日)。昨日の朝日別刷り「be」の「今さら聞けない」コラムに「楽器の音色~倍音や雑音の配合で変わる風合い」という記事が載りました
ピアノのドとギターのドは同じ高さの音なのに、かなり印象が違うのはどうしてか?について解説しています
「楽器の場合、周波数が2倍、3倍、4倍と整数倍に高くなった音が重なっているという特徴がある これらの音を倍音と呼ぶ。楽器によって、この倍音の構成が異なることが音色の違いに効いてくる。例えば、管楽器は筒の形をとるが、クラリネットは片方が閉じていることで、奇数の倍音の方が多く響くという特徴を持っている。このため、暗い音色が作りだされる
逆に、菅が閉じていないフルートなどの管楽器では、奇数と偶数の倍音がそろいやすく、明るい音色になる
同じ楽器でも演奏の仕方で倍音の質が変わってくる。近畿大学の西村教授によると、演奏の下手な人は、その楽器が本来出せるはずの倍音をうまく引き出していないと言う
曲の流れに合わせて、どんな特徴の倍音を出すかをコントロールできる人が、楽器の本当の達人と言えるのかもしれない」
私のようにただ趣味で音楽を聴いているだけで楽器を演奏するわけでもない”素人”には勉強になります
閑話休題
昨日午後3時から文京シビックホールで東京フィル「響きの森クラシック・シリーズ」公演を、午後6時からサントリーホールで東京交響楽団の定期演奏会を聴きました。今日は東京フィルのコンサートの模様を書きます
当日のプログラムは、①ワーグナー「楽劇『トリスタンとイゾルデ』より”前奏曲と愛の死”」、②ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、③ストラヴィンスキー「バレエ音楽”春の祭典”」です。今年生誕200年を迎えたワーグナー、同じく生誕140年を迎えたラフマニノフ、初演100年を迎えた「春祭」に焦点を当てたプログラミングです。②のソリストは中村紘子、大植英次指揮東京フィルです
このシリーズは三浦章宏さんがコンマスを務めることが多いのですが、この日はソロ・コンサートマスターの荒井英治さんの登場ですチューニングが済んで指揮者の大植英次が登場します
黒マントというか、学ランというか、襟が高く裾の長い衣装、胸には赤いチーフが覗いています。かなりキザの類のようです
大植がなぜ1曲目にワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」より”前奏曲と愛の死”を選んだのか、それはプログラムに書かれているプロフィールに答えがありました 「2005年”トリスタンとイゾルデ”で日本人指揮者として初めてバイロイト音楽祭で指揮した」とあります
大植の指揮はかなりアクションが大きく身体全体でオケに指示を出すタイプのようです 気のせいか、いつもより弦の響きが薄いような気がしましたが、気のせいかも知れません
ピアノが舞台右からセンターに運ばれ、2曲目のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」の開始を待ちますピアノの椅子はコンマスの荒井氏の椅子よりも高く調整されています。上から打ち下ろすつもりでしょうか
ピアニストの中村紘子が白を基調とし、ピンクと黒を配した明るいドレスで登場、見るからに貫録です 大植のタクトで第1楽章が開始されます。冒頭から中村の力強い音楽が会場に響き渡ります。男勝りというか、その辺の草食系男子など蹴散らしそうな勢いでグングン音楽を進めます
ソリストがテンポをかなり揺らせるため、指揮者は常にピアニストの方を振り返り”合わせ”ながら指揮をするパターンが多くなります
一言でいえばピアニスト主導のコンチェルトです
日本のピアノ界の大御所をソリストに迎えた若い指揮者(中堅か)にとって、ソリストを最大限引き立てることが求められるのでしょう
ピアノを弾く中村の腕を見ると、筋肉の動きがよく分かります。なるほど、あの逞しい腕から力強い音が出てくるのか、とあらためて感心します 終演後、会場割れんばかりの拍手とブラボーにニコニコ顔で応え、「どう、これが今の中村紘子よ
文句あるんなら言ったんさい。その辺の若い者にはまだまだ負けませんからね
」と言っているように見えました。私一人だけだと思いますが。拍手に応えてアンコールを・・・・・しませんでした。見識です
休憩後はストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」です。この曲は1909年にパリで旗揚げしたロシア・バレエ団の主宰者セルゲイ・ディアギレフの委嘱により作曲された3大バレエ(火の鳥、ペトルーシュカ、春祭)の第3弾に当たります 1913年春に完成し、同年5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場で、ニジンスキーの振付、ピエール・モントゥーの指揮で初演されましたが、当時は理解できない相次ぐ変拍子や反キリスト教的な内容から、会場が賛否両論の大騒ぎになり、音楽史上最も有名な大スキャンダルになりました
今でこそ世界中で演奏され愛される人気曲になっていますが、例えば自分が100年前のシャンゼリゼ劇場にワープして春祭の初演に立ち会ったとしたら、どういう行動を取ったでしょうか?多分、近くにある消火器を舞台めがけて投げつけていたと思います えっ、当時消火器はないって?・・・消化不良でした
大植の指揮はダイナミックかつ繊細で、”一寸先は闇”と言うか、”一寸先も変拍子に次ぐ変拍子”というカオスの状況を見事に打開していきました 東京フィルは管楽器も弦楽器も打楽器も、最大限カラフルかつパワフルに実力を発揮しました
午後6時から東京交響楽団の定期演奏会をハシゴするため、拍手もそこそこに会場を後にしました 幸い次の会場は文京シビックのある地下鉄後楽園駅から南北線一本で行ける六本木1丁目近くのサントリーホールなので助かりました。この続きはまた明日