人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイング、レハール「メリー・ウィドウ」を観る~まるでミュージカル!

2015年02月26日 07時01分10秒 | 日記

26日(木)。わが家に来てから151日目を迎え、耳を後ろに向けて警戒モードのモコタロです 

 

          

            いつも後ろを警戒しているんだ 逃げる時は脱兎のごとく!

 

   閑話休題  

 

有給休暇が15日も残っていることが判ったので、昨日休暇を取って、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、レハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」を観ました これは今年1月17日に米ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で上演された公演のライブ録画映像です        

キャストはハンナ・クラヴァリにルネ・フレミング(ソプラノ)、ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵にネイサン・ガン(バリトン)、ヴァランシエンヌにケリー・オハラ(ソプラノ)、カミーユ・ド・ロシヨンにアレック・シュレイダー(テノール)、ツェータ男爵にトーマス・アレン(バリトン)、二ェグシュにカーソン・エルロッド、バックを務めるのはアンドリュー・デイヴィス指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、スーザン・ストローマンによる新演出です

 

          

 

ポンテヴェドロ(架空の国)のツェータ男爵は未亡人になったハンナがパリの男に言い寄られ莫大な遺産が国外に流失するのを恐れ、書記官のダニロ(昔ハンナと恋人同士だった)に『国の財政危機を避けるためハンナと結婚せよ』と指令を出す 一方、ツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌはパリの伊達男カミーユから熱烈な求愛を受けているが、夫は気が付かない(以上第1幕)。ヴァランシエンヌはカミーユの誘惑に負け、庭の小屋で忍び合いをするが、その様子を覗き見た男爵は腰を抜かす しかし、ハンナがヴァランシエンヌと入れ替わってうまく危機を救う 成り行きから、ハンナはカミーユと婚約するのだと公言するのでダニロは動揺する(以上第2幕)。ダニロはハンナの結婚を阻止しようとするので、ハンナはダニロが自分を愛していることを確信する しかし、ダニロは財産目当てだと思われたくないので意地になって求婚しない。最後に、身代わりの誤解が解けると、ハンナは「再婚すれば自分は全財産を失う」という夫の遺言を読み上げる。するとダニロは即座に求婚する これを受けたハンナは「自分の失った財産は再婚相手に与えられる」と遺言の続きを読み上げ、ハッピーエンドで幕を閉じる(以上第3幕)

 

          

                   ルネ・フレミングとネイサン・ガン

 

ウィークデーの昼間というのに新宿ピカデリーはかなりの観客が詰めかけています いつものように左ブロックの後方、右通路側席に座ります

大画面に映し出されたオーケストラ・ピットを見ると、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置をとっていることが窺えます イギリスの指揮者アンドリュー・デイヴィスが登場、タクトを持たずに第1幕イントロダクションの指揮を始めます このオペレッタの主要なメロディーが次々と現われてきます。ハンナが第2幕で歌う「ヴィリアの歌」、男たちが勢ぞろいして歌う「女、女、女のマーチ」そして「メリー・ウィドウのワルツ」など、このオペレッタのエッセンスがメドレーで登場します

今回の公演を観て、一番感じるのは「まるでミュージカルじゃん」ということです。特にヴァランシエンヌを演じるケリー・オハラはブロードウェイで活躍するミュージカル界のトップスターなのです 他の歌手が歌う時にはオペラ、あるいはオペレッタを感じるのですが、オハラが歌う時には、「これって、ジュリー・アンドリュースが歌っているみたい」と感じてしまうのです。歌い方がミュージカルなのです。ちなみに彼女は大学の時オペラを専攻していたそうで、当時はコロラチューラ・ソプラノを歌っていたそうです。基礎が出来ているということですね

もう一つ「まるでミュージカルじゃん」と思わせるのは、今回の演出がブロードウェイで活躍するスーザン・ストローマンだからです 彼女は幕間のインタビューでジョイス・ディドナートから「ミュージカルとオペラの演出上の違いは?」と質問され、「今回の演出はあくまでも”歌が第一”と考えました。ミュージカルはマイクを使うので歌いながら激しい踊りもこなせますが、オペラは生の声を会場の隅々まで届かせなければならないので、歌手が無理なく歌える範囲でダンスなどの演出をしました」と答えていました

さらに「まるでミュージカルじゃん」と思わせる決定的な要因は、今回のプロダクションがドイツ語でもフランス語でもなく英語で歌われているということです オペラやオペレッタをドイツ語やフランス語で聴くのに慣れてるので、英語はやはり違和感があります。歴史から見ればヨーロッパからアメリカに渡ったオペレッタはミュージカルの原型となり、20世紀を代表するエンターテインメントになったのです

さて、このオペラのヒロインは言うまでもなくハンナですが、ハンナを歌ったルネ・フレミングの魅力をどのような言葉で表現すればいいのか・・・・とにかくビロードのような美しい声で何の苦もなくウィーンの歌を歌い上げます 「ヴィリアの歌」の何と素晴らしかったことか METの誇るトップスターと言っても過言ではありません

そのお相手を務めるダニロ役のネイサン・ガンは堂々たる体格でセクシーで歌も上手いといった魅力あふれるバリトンです

ヴァランシエンヌを歌ったケリー・オハラは先に書いたように、まるでミュージカルを歌い演じているようで、本人がこの役を楽しんでいる様子がよく分かりました 第3幕のキャバレー・マクシムの場面では合唱と一緒に歌う「グりセットの歌」を歌いながら、踊り子たちと一緒にダンスを踊ります。さすがはブロードウェイのトップスターです このシーンは本当に感激しました。プロのダンサーによるカンカンも見事でした

そのお相手を務めるカミーユ役のアレック・シュレイダーは輝くテノールです。身も軽く演技も上手です。そして、オペレッタとしてのいい味を出していたのがツェータ男爵を演じたベテラン、トーマス・アレンです。シブいバリトンを聴かせてくれました

もう一人、狂言回し役のニェグシュを演じたカーソン・エルロッドは、一度も歌う場面がないのですが、この人がいないとこのオペレッタが成り立たないほど重要な役割を見事に演じ笑わせてくれました

演出面で気が付いたことを挙げるとすれば、パーティーで女性談義に花を咲かせる男たちが踊りながら歌う「女、女、女のマーチ」のシーンも、まさにブロードウェイばりの振り付けではないか、と思うほどミュージカル的な演出でした

また、2幕から3幕への転換は見事でした 通常は休憩が入るところですが、郊外のシーンにカンカン・ダンサーが踊りながら出てきて、いつの間にかキャバレー・マキシムの世界に導きます。ブロードウェイ演出家スーザン・ストローマンの面目躍如といったところです

「オペレッタ」は日本語で言えば「小さなオペラ」の意味ですが、基本的には喜劇です。したがって「喜歌劇」とも呼ばれます。オペラからミュージカルまでの脈絡をたどると、「オペラ」⇒「小さなオペラ(小オペラ)」⇒「小劇」⇒「笑劇」⇒「ショウ劇」となりませんか?なりませんね。失礼しました

ウィーンのオペレッタは本場のプロダクションでなければ、という人もいらっしゃるでしょうが、アメリカのMETのプロダクションも大したものです。こんなにゴージャスで楽しいオペレッタ公演は滅多にありません。超お薦めです

上映時間は休憩、歌手等へのインタビューを含めて2時間53分。都心では新宿ピカデリー、東銀座の東劇で27日(金)まで上映中です

 

コメント (2)
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