27日(金)。わが家に来てから152日目を迎え、読者に挑戦するモコタロです
たまには読者のみなさんがキャプションつけてね
閑話休題
昨日の日経朝刊・文化欄に日本モーツアルト協会副理事長の日和崎一郎氏が「嗚呼、モーツアルト生の喜び」というテーマでエッセイを書いていました。書き出しは
「大学時代は喫茶店『モーツアルト』でモーツアルトの音楽を聴いた 東京の水道橋と神保町の間にあった素朴な風情の小さな店だ。・・・・1950年代後半の昔にしては珍しく店に流れるのはモーツアルトのレコードばかり
」
私も時代の違いこそあれ、70年代の中頃の学生時代、水道橋と神保町の間を毎日のように歩いていましたが、残念ながら『モーツアルト』という名前の喫茶店はすでにありませんでした その代り『白十字』という喫茶店があり、バッハなどが流れていました
お店は今でもまだあると思います。さらに日和崎氏は次のように語ります
「昔は若い人ばかりだったが、今は55歳以上が全会員の90%以上と、高齢化が進んだ」
日本モーツアルト協会は、会員になると会員番号が与えられるようですが、その番号はモーツアルトの作品に付けられたケッヘル番号だということです したがってケッヘル1番からケッヘル626番まで626人の正会員がいるはず。昔からケッヘル番号を持った会員がそのまま高齢化して55歳以上になったのでしょう
これは何も日本モーツアルト協会に限った話ではなく、ほとんどのオーケストラの定期会員にも共通した問題です
いかに若い聴衆を増やすか、そのためにはどうすればよいか、オケの事務局の皆さんは日々そういう悩みを抱えているはずです
そうそう、日本モーツアルト協会副理事長の日和崎氏は、最後にしっかり「モーツアルト交響曲全45曲演奏会」のPRを書いていました
閑話休題
昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第627回定期演奏会を聴きました プログラムは①V.ウィリアムス「グリーンスリーヴスの主題による幻想曲」、②サラ=サーテ「スコットランドの歌」、③ブリテン「ピアノ協奏曲」、④エルガー「交響曲第1番変イ長調」です。指揮は指揮者生活50周年を迎えた秋山和慶、③のピアノ独奏はキット・アームストロングです
コンマス水谷晃のもとチューニングが行われます。拍手の中、ロマンス・グレイの秋山和慶が登場します 最初の曲はン十年前に私がフルート教室の発表会で冷や汗をかいた「グリーンスリーヴス」です
もともとはイングランド民謡ですが、V.ウィリアムズが幻想曲に仕立てたのです。曲の冒頭、ハープに乗せてフルートが懐かしいメロディーを奏でます。甲藤さちの演奏はいつ聴いても素晴らしいですね
次いで弦楽器がお馴染みのメロディーを演奏します
次の曲はサラサーテの「スコットランドの歌」です。この曲は、ヴァイオリンを主役として6つのスコットランド民謡が展開されます ソロ・コンマスの大谷康子が明るいブルーのドレスで登場します
秋山和慶のシュアなサポートのもと、時に超絶技巧を要する民謡を鮮やかに演奏します
ピアノがステージ左サイドからセンターに運ばれ、ソリストの登場を待ちます。秋山和慶に伴われて中学生が出てきました おっと、中学生ではなく、きっとアームストロングです
プロフィールによるとロンドンの王立音楽院から音楽の学位を、パリ大学から数学の学位を授与されています。数学ですよ、奥さん
しかも13歳から、かのアルフレッド・ブレンデルに師事しているといいますから只者ではありません
ブリテンの「ピアノ協奏曲 作品13」は1938年夏のBBCプロムナード・コンサートで初演されましたが、その時、ソリストを務めたのはブリテンその人でした
第1楽章「トッカータ」の冒頭、速いパッセージを弾くアームストロングの演奏を見て唖然としました 中学生を撤回します。プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番の有名なパッセージを、ものすごく速くしたような曲想ですが、彼は何の苦も無くあっけらかんと弾き切ります
第2楽章は「ワルツ」と題されていますが、そういう感じはしませんでした。第3楽章は「アンプロンプチュ(即興曲)」、第4楽章は「マーチ」と題されています
これについてブリテンは「この作品は、ピアノの様々な重要な特徴を探求しようというアイディアをもって構想された。例えば幅広い音域、打楽器的な特性、装飾への適合性など。したがって、ピアノ付交響曲では全くない、むしろ管弦楽伴奏付きの華麗な協奏曲だ」と述べています
とにかく、アームストロングの演奏は凄いの一言です 久々の大型新人の登場と言ったところです。彼はアンコールにウィリアム・バードの「森はこんなに荒れて」をリズミカルに演奏しました
休憩後はオケの規模が拡大し、フル・オーケストラでエルガーの「交響曲第1番」に臨みます この曲は、英国軍のチャールズ・ゴードン将軍の姿に感銘を受けて構想し、純音楽として完成したものです
第1楽章「アンダンテ~アレグロ」、第2楽章「アレグロ・モルト」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「レントーアレグロ」の4つの楽章から成りますが、第1楽章冒頭に奏でられる英雄的で勇壮なテーマが第3楽章、第4楽章にも回想されるところに大きな特徴があります
秋山和慶は折り目正しい、まったく無駄な動きのない引き締まった指揮でオーケストラをコントロールします
楽員から大きな信頼を受けている様子が窺えます
ところで東京交響楽団の1/2月号のプログラムの巻頭に、小澤征爾が「秋山和慶 指揮者生活50周年」を迎えてメッセージを寄せています。超訳すると、
「秋山さんは斎藤先生の一番理想的な弟子だと今でも思っています 斎藤先生は、亡くなるまで一番信頼されていたのが秋山さんでしたし、先生を一番幸せにしたのが秋山さんだと思います
そして、斎藤先生に一番迷惑をかけたのが、山本直純と私だったと思っています
これからも、斎藤指揮法を継承する中心者として、世界中の指揮者に良い影響を与えてください
」
秋山和慶さん 指揮者生活50周年 おめでとうございます これからも お元気で素晴らしい音楽を聴かせてください