人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

上岡敏之+アンヌ・ケフェレック+新日本フィルでモーツアルト「ピアノ協奏曲第27番K.595」他を聴く

2016年09月18日 08時19分08秒 | 日記

18日(日).わが家に来てから720日目を迎え,築地市場の豊洲への移転問題に関連して,移転先の主な建物下に土壌汚染対策の盛土(もりど)がないことについて考えを巡らすモコタロです

 

          

             盛土って湯桶(ゆとう)読みだよね 反対は重箱読みだし ぼくってインテリ?

 

  閑話休題  

 

昨日,すみだトリフォニーホールで新日本フィル第562回トパーズ定期演奏会を聴きました 新シーズン第1回目のプログラムは①モーツアルト「交響曲第33番変ロ長調K.319」,②同「ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595」,③ブラームス(シェーンベルク編)「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」(管弦楽版)です ②のピアノ独奏はアンヌ・ケフェレック,指揮は今月 新日本フィル音楽監督に就任した上岡敏之です

 

          

 

前シーズンはサントリー会員だったので,トリフォニー会員は久方ぶりです ロビーの受付で定期会員継続特典CDをいただきました

 

          

          

 

収録されているのはラヴェル,シャブリエ,ビゼー,リムスキー・コルサコフの管弦楽曲ですが,ラヴェルを除く3曲は,今年7月25日の「フェスタサマーミューザ2016」でのライブ録音です 後でゆっくり聴いて当日の演奏を振り返りたいと思います

新日本フィル第4代音楽監督に就任して初めてのトリフォニー・シリーズ(トパーズ)のプログラムとして上岡敏之が選んだのは,モーツアルトとブラームス(シェーンベルク編)というドイツ・オーストリア系の”正統派”をいく3曲でした これまでヘッセン州立歌劇場,北西ドイツ・フィル,ヴッパータール市立歌劇場などドイツのオケの音楽監督や首席指揮者を務めてきた上岡らしい選曲と言えるでしょう とくにモーツアルト(1756-1791)を2曲選んだのは,今年がモーツアルト生誕260年に当たる記念すべき年であることを考慮しているかもしれません

オケの”上岡シフト”は,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスといったオーソドックスな編成です コンマスはチェ・ムンス.ホルンには1年間の留学から復帰した藤田麻理絵の姿も見えます.おかえりなさい ヴィオラには首席・篠崎友美の隣に,8月から正団員となったフォアシュピーラー・脇屋冴子がスタンバイしています.正団員おめでとう ステージ上には収録マイクが数本立っています.上岡敏之・新音楽監督就任第1回目のコンサートということで記録しておこうということでしょうか

上岡敏之がタクトを持って登場します.さっそく1曲目のモーツアルト「交響曲第33番変ロ長調K.319」の演奏に入ります この曲は,モーツアルトがコロレド大司教の支配する故郷ザルツブルクにいる時に作曲されたものです.4つの楽章から成りますが,第2楽章,第3楽章は極めて短く,あっという間に終わってしまいます どうやらコロレド大司教が断行した宮廷音楽会の時間短縮が背景にあるようです.こういうことが重なったからでしょう.それから2年後にモーツアルトは故郷ザルツブルクを捨ててウィーンに出ていきます

第1楽章を聴いていて感じたのは,何と柔らかい音だろうかということです 上岡のしなやかな指揮を見ていると肩の力が抜けていてリラックスしていることが覗えます この人の大きな特徴でしょう

グランド・ピアノがステージ中央に移動し,ソリストを迎えます.2曲目はモーツアルト最後のピアノ協奏曲である第27番変ロ長調K.595です アンヌ・ケフェレックが白のブラウス,黒のスカートといったシンプルな衣装で登場します この人はいつも「シンプル・イズ・ベスト」を地でいくような人で,シンプルでいながらエレガントです

この曲は1791年1月に完成されましたが,いつ初演されたのかは不明です.上岡の指揮で第1楽章に入ります.この曲でも,上岡はオケから柔らかい音を紡ぎ出します そしてケフェレックのピアノが入ってきます.自席からは,彼女の姿を斜め後ろから見る感じになりますが,ピアノを弾くケフェレックは まるで少女のように見えます あまり女性の年齢を詮索すべきではありませんが,実際には60代後半です.彼女の演奏を何度か見て聴いていますが,そのたびに同じ印象を受けます.この魅力はいったい何なんでしょうか

ケフェレックは,第2楽章では,モーツアルトが演奏したであろうように,時に装飾音を加えて演奏し,聴衆の興味を引きます 第3楽章は,モーツアルトの歌曲「春へのあこがれ」の旋律を引用していますが,このメロディーを弾くケフェレックの演奏を聴いていると,明るい曲なのに,なぜか哀しくなってきます モーツアルトは懸命に明るい表情を作っているように思えます.この年の12月5日,彼は天に召されました

鳴り止まない拍手とブラボーに,ケフェレックはヘンデルの「メヌエット」をしみじみと演奏し,クールダウンを図りました この曲は下のCDアルバムの最後に収録されています(2010年11月17日・王子ホールでのリサイタルでサインをもらいました)

 

          

 

ケフェレックの弾くモーツアルトは,下のCDアルバムで聴けます ロンド・イ短調K.511,ソナタ・ハ短調K.457,幻想曲ニ短調K.397などが収録されています (2009年3月12日,浜離宮朝日ホールでのリサイタルでサインをもらいました)

 

          

 

休憩後はブラームス作曲シェーンベルク編曲による「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」の管弦楽版です ブラームスが「ピアノ四重奏曲第1番」の作曲に取り掛かったのは1855年頃のことで,1859年までに概ね完成させています.シェーンベルクはこの作品を編曲した理由を「この作品を愛していたこと」「それにも関わらず演奏される機会が少なく,演奏されてもピアノと弦のバランスが難しく良い演奏効果が挙げられなかったこと」を挙げています そして,編曲に当たってはブラームスのオリジナルを尊重することを第一にしたようです

上岡敏之が登場し指揮台に上がります.1曲目のモーツアルトの時と同様,譜面台には楽譜がありません.上岡のタクトで第1楽章が開始されます オリジナル版では冒頭,ピアノが第1主題を奏でますが,編曲版では木管が中心になって不安定な音楽を奏でます.冒頭からブラームスと決別している,と感じさせます しかし,その後は,曲想としてはブラームスが活かされたまま管弦楽による色彩感豊かな音楽が展開します 第1楽章冒頭の動機が曲全体の展開に影響を及ぼします.これを後世の人は「動機労作」と呼んでいますが,シェーンベルクはブラームスの動機労作を基に,編曲によって,動機労作を上塗りしたのかも知れません 聴いているうちに,これはブラームスの名前を借りたシェーンベルクの曲ではないか,と思うようになりました シェーンベルクは「この曲は,演奏される機会が少ないから編曲して演奏されるようにしたい」と考えたようですが,果たして演奏される機会が増えたのでしょうか?私には,むしろ,オリジナルの作品の方がよほど演奏される機会が多いように思えます もっとも,これは現代だから言える結果論で,当時としては,シェーンベルクの主張する通りの傾向だったのかも知れません

第4楽章のロンドは「ジプシー風」です この楽章はオリジナルで聴いてもエキサイティングですが,管弦楽版だと楽器の数に比例してエネルギーが拡大し爆発します 圧倒的なフィナーレでした.拍手とブラボーの嵐です

上岡はセクションごとに楽員を立たせ,称賛の握手を浴びせさせます 鳴り止まない拍手とブラボ―に,振り返りざまにタクトを降ろし,ブラームスの「ハンガリー舞曲第1番」をアンコールに演奏,熱狂的な聴衆の拍手と歓声に迎えられました

オーケストラの定期演奏会でアンコールを演奏するのは珍しいことだと思いますが,今回の”就任祝い”に限ったことなのか,これからも続けるのか,次回の定期公演を楽しみにしたいと思います

かくして,音楽監督・上岡敏之+新日本フィルによるトリフォニーホールでの初コンサートは熱狂的な雰囲気の中で成功裏に終わりました

 

          

 

新シーズン初めてのコンサートということで,座る席も新しい席ということで気分も一新というところだったのですが,ブラームスの第1楽章が始まってすぐのところで,隣席の高齢女性が,おもむろに飴の包みを出してカサカサと音を立てています それだけなら良かったのですが,飴をつかみ損なったらしく床に落としてしまい,飴がコロコロと転がる音が響き渡りました 私にはこういう人の神経が理解できません.休憩時間があったのですから,なぜ,演奏前に口に入れることをしなかったのでしょうか 考えがアメーと思います.もし,この人が定期会員だとすれば,毎回隣の席で聴くことになるわけで,先が思いやられます それにしても,コンサートに行くたびに,どうして私の周囲はトラブル・メーカーばかりが集まるのでしょうか ぼく,それほど悪いことした? これって試練? なぜ自分だけ? 誰かおせーて

なお,サントリー・シリーズからトリフォニー・シリーズ(トパーズ)に移って良かったと思ったことがあります それは かつてトリフォニー・シリーズのプログラム・ノートを書いていた音楽評論家のA氏の解説を読まなくて済むことです A氏の”文学”を追求した解説には辟易していました.これは結果論ですが,A氏はサントリー・シリーズの解説に移ったのです.代わってトリフォニー・シリーズの解説を書いているのは 関野さとみ という人ですが,この人の解説は非常に分かり易く,コンサートを聴く側が,どういうことを知りたいのかを十分理解した上で,必要かつ十分な情報を私のような音楽素人にも分かる言葉で書いています 解説者としては理想的です

ところで,4,5月号のプログラムを見ていたら,広報・宣伝を担当されていたNさんの名前がありません 退職されたのでしょうか?Nさんとは,第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんの室内楽コンサートの打ち上げでご一緒したことがあります 新シーズンを迎えて事務局にも人事異動があったのでしょうか

コメント (2)
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