人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

読響アンサンブルでモーツアルト「ディヴェルティメントK563」,ベートーヴェン「第7交響曲」を聴く

2016年09月21日 08時29分24秒 | 日記

21日(水).わが家に来てから723日目を迎え,リビングの片隅で白ウサちゃんと過ぎ去っていった台風を振り返るモコタロです

 

          

                 この辺(豊島区)は大したことなくて良かったよ

 

  閑話休題  

 

昨夕,よみうり大手町ホールで「読響アンサンブル・シリーズ第11回~長原幸太ら読響メンバーの室内楽」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメント 変ホ長調K.563」,②ベートーヴェン「交響曲第7番イ長調」(弦楽五重奏版)です 出演はコンサートマスターの長原幸太,第2ヴァイオリン首席・瀧村依里,ソロ・ヴィオラ・鈴木康浩,同・柳瀬省太,チェロ首席代行・高木慶太です

 

          

 

7時半からの公演に先立って,7時からコンマスの長原幸太を迎えてプレトークがありました 長原はマイクを持って人前で話すのが苦手なようで,ナビゲーターの鈴木美潮(読売新聞)さんが,「それじゃ,ヴァイオリンを持ってお話しいただきましょうか」と提案すると,舞台袖にヴァオイリンを取りに行き,ヴァイオリン片手に「ああ,これで落ち着きました」と安堵の表情を見せました インタビューによると,彼は母親がピアノの先生をやっていた関係で,最初は母親からピアノを習っていたそうですが,途中でヴァイオリンに転向したそうです.その一方で,小学低学年の時はサッカーをやり,その後は野球のピッチャーをやったそうです その間,2度も腕を骨折したそうです 

「あの松坂投手と同じ歳なんですが,ヴァイオリニストにならなかったら今頃はヤンキースで投げていたかもしれません

と法螺を吹いていました 広島県の出身ということで,プロ野球は今シーズン25年ぶりのセリーグ優勝を決めた広島カープのファンとのことです 本人曰く

「読売のオケに居ながら,読売のホールで演奏しながら,すみません

と,親会社に配慮して心にもない謝罪を述べていました.本当は嬉しくてしようがないのです

今回のプログラミングについて聞かれると

「最初にメンバーを決めました.そして,このメンバーなら難しい曲にもチャレンジできるかなと思って,モーツアルトの弦楽三重奏によるディヴェルティメントと,ベートーヴェンの交響曲第7番の弦楽五重奏曲版を選びました

と答えていました

「よみうり大手町ホール」について聞かれると

「まだ出来て年数も経っていないこともあって,舞台の近くで聴くと音が突き刺さる様な印象があると思います これは演奏が悪いのではなくて,ホールの特性です(会場) 本当はもっと客席に近い所で演奏したいのですが,後ろに下がって演奏します また,今回は弦楽だけの演奏ですが,これにピアノが加わると,ピアノの音が一番良く響く位置はどこか,と考えるので,それに合わせて弦楽奏者の位置も変わってきます.そういう意味で,難しいホールです

と答えていました 私はこれまで,このシリーズのインタビューで何人かのアーティストが語るこのホールに対する印象を聞いてきましたが,これほど率直な感想を聞いたのは初めてです ほとんどは「素晴らしい音響のホールで,ここで演奏するのは光栄です」的な感想が多かったように思います.今回の発言で,長原幸太に対する評価が一層高まりました 天下の読売日響のコンサートマスターとしての自覚と自信があるからこその発言だったのだと思います

 

          

 

さて本番です.ヴァイオリンの長原幸太,チェロの高木慶太,ヴィオラの鈴木康治が登場します 3人揃ったところで,パッと見の共通点は①年齢が近いのではないか,②メガネをかけている,ということです 早速1曲目のモーツアルト「ディヴェルティメント変ホ長調K.563」の演奏に入ります

この曲は,1788年9月27日に.モーツアルトが晩年に手紙で何度も借金を申し入れていたウィーンの織物商人プフベルクのために書かれました この人がいなかったらモーツアルトの晩年の傑作は日の目を見なかったかもしれません

実は,この曲をあらかじめCDを聴いて予習しようと思ったのですが,恥ずかしながら,1枚あるはずのCDがどうしても見つからなかったのです 多分700枚以上所有しているモーツアルトのCDは,交響曲,協奏曲,管弦楽曲,独奏曲,オペラ,宗教曲とジャンル別に分類してCDラックに収めてあるのですが,とうとう見つかりませんでした.一生の不覚です

この曲は6つの楽章から成ります.演奏を聴いていて,プレトークで長原が話していた「この曲は,モーツアルトが本当に言いたいことが音楽として表れている」とコメントしていたのは第2楽章の「アダージョ」ではないか,と思いました 私には窮地を救ってくれたプフベルクに対する感謝の気持ちの表明に聞こえました

第3楽章の「メヌエット」は3人の奏者の掛け合いが楽しめました 第5楽章のもう一つの「メヌエット」ではヴィオラの鈴木の演奏が冴えわたりました 第6楽章の「アレグロ」の心地よさをどのように表現すれば良いでしょうか

全楽章を通じて3人の息はピッタリで,モーツアルトの音楽の魅力である「光と影」を浮き彫りにしていました

ところで,3人は各楽章間にチューニングを入れていましたが,外は台風の影響で雨模様 ホール内の湿度の変化が弦に影響を与えていると思われます.弦楽器は湿度に敏感ですから演奏する側は大変ですね

休憩後はベートーヴェンの「交響曲第7番イ長調」の弦楽五重奏版です 5人の演奏者が登場します.左からヴァイオリンの長原,瀧村,チェロの高木,ヴィオラの鈴木,柳瀬という編成です.この曲は1812年に作曲されましたが,音楽の3要素=リズム,メロディー,ハーモニーのうちリズムを主体とした曲です 比較的新しいところでは「のだめカンタービレ」のテーマ音楽として使われていました 「のだめ」と言えば,コンマスの長原幸太は,あの「のだめ」のオケのコンマスの奏でる音楽を陰で弾いた人だとのことです.知ってた?

早速第1楽章に入ります.冒頭はソフトに入りましたが,これはホンのあいさつ代わりで,その後は弦楽器だけの五重奏で演奏しているとは思えないほど色彩感豊かに演奏が展開します 主に第2ヴァイオリンの瀧村依里がクラリネットを始めとする管楽器のパートを演奏していました 面白かったのは第3楽章「プレスト」での5人の奏者の掛け合いです.見ていて楽しそうでした

そして第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」を迎えます.この楽章こそワーグナーが名付けた「舞踏の聖化」です 5人の演奏者はフル・オーケストラさながらに,全力でリズムの饗宴を繰り広げます.5人のうち誰が良いとかいった問題を超越しています.5人がそれぞれのパートを全力で演奏している姿が感動を呼びます

演奏が終わるや否や,会場いっぱいの拍手とブラボーがステージを囲みました 何度目かのカーテンコールの後 長原幸太が,

「今日は台風が近づく中,ようこそお越しいただきありがとうございました 台風が近づいているので短めのアンコールを演奏します

とアナウンスして,ベートーヴェンの「交響曲第8番ヘ長調」から第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」を演奏,拍手喝さいを浴びました

正直言って,心の底から楽しめるコンサートは1年に何回もあるものではありません.その意味では,この日のコンサートは心の底から素晴らしかったと言える貴重なコンサートでした 「読響アンサンブル」はコンマス及び首席クラスだけを惜しげもなく投入します 年6回が年4回に縮小されたのは非常に残念です 「このメンバーがいる限り,読売日響の定期会員を継続しよう」と思わせます

最後に付け加えれば,この日は半径1メートル以内にトラブルメーカーがいなかったので,終始落ち着いて演奏に耳を傾けることができました 本当はこれが普通なのですが その意味も含めて,本当に素晴らしいコンサートでした

コメント (2)
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