人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ロジェストヴェンスキー+読響でショスタコーヴィチ「交響曲第10番」他を聴く

2016年09月27日 08時01分46秒 | 日記

27日(火).昨日午前,大学院関係の学会に出席するため16日からネパールのカトマンズに行っていた息子が,多種類のお土産と大量の洗濯物と共に帰ってきました 「先週,日本は雨模様で寒い日が続いていたんだよ」と話すと,「へえ~」と驚いていました.現地の方が比較的天気が良かったようです 何より本人が無事に帰ってきて一安心しました 

ということで,わが家に来てから今日で729日目を迎え,お兄ちゃんがカトマンズのお土産に買ってきたネパール産のオーガニック・コーヒーの匂いを嗅いでいるモコタロです

 

          

                     この匂いは きっとうまいべ カト  マンズ思うだよ おら 

 

  閑話休題  

 

11月27日(日)の新国立オペラ「ロッシーニ『セヴィリアの理髪師』」と「クァルテット・エクセルシオ」のコンサートが共に午後2時開演とダブっているので,昨日,新国立劇場ボックス・オフィスに電話して,12月4日(日)午後2時からの部に振り替えてもらいました 新国立オペラのプルミエ(初日公演)会員の振替制度は1年に3回まで利用できるので,あと2回の枠がありますが,毎年のように3回の枠を使い切っています.実に有難い制度です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで読売日響の第562回定期演奏会を聴きました オール・ショスタコーヴィチ・プログラムで,①バレエ組曲「黄金時代」,②ピアノ協奏曲第1番ハ短調,③交響曲第10番ホ短調です ②のピアノ独奏はヴィクトリア・ポスト二コワ,指揮は読響名誉指揮者ゲンナジ―・ロジェストヴェンスキーです

 

          

 

コンマス・小森谷巧以下オケの面々がステージに登場し,配置に着きます.いつもの読響と違ってヴィオラとチェロの位置が入れ替わっています 左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという並びは,24日の東響定期公演でユベール・スダーンが採用したのと同じ編成です

もともとこの編成は,ディズニー映画「ファンタジア」や,ディアナ・ダービン主演の映画「オーケストラの少女」でお馴染みのアメリカの巨匠レオポルド・ストコフスキーが,主にステレオ・レコード録音の技術的な理由によって採用した編成です つまり,ヴァイオリン等の高音楽器は左スピーカーから,チェロやコントラバス等の低音楽器は右スピーカーから音が出てくるように,弦楽器の配置を決めたのです

この日の演奏曲目は,ロジェストヴェンスキーが生前に親交のあったショスタコーヴィチの曲ばかり3曲です

今年85歳のロジェストヴェンスキーが,ゆったりした足取りで,身体を後ろに反り返すようにして舞台中央に向かいます 指揮台がない代わりに柵が設置されています.指揮台を置かないのは上り下りが危険だからでしょう.気のせいか,白い指揮棒が異常に長く見えます

最初に演奏するのはバレエ組曲「黄金時代」です この曲はレニングラード国立劇場が,1929年にバレエ台本のコンクールを開いた時に,映画監督のイヴァノフスキの台本が入賞したのですが,その台本のためにショスタコーヴィチが作曲したのがこの作品だったのです 第1曲「序曲」,第2曲「アダージョ」,第3曲「ポルカ」,第4曲「舞踏」から成ります.聴きどころは,第2楽章のサクソフォンの静かなメロディーと小森谷コンマスのヴァイオリン独奏です ショスタコーヴィチの浪漫的な面がよく出ています また,もう一つの聴きどころは,第3楽章「ポルカ」でのシロフォンのとぼけた音楽です 「これぞショスタコーヴィチのアイロニー」と叫びたくなるような,人をおちょくったような音楽です

グランド・ピアノがセンターに運ばれ,ソリストを迎えます.ロジェストヴェンスキーの伴侶であるヴィクトリア・ポスト二コワが登場,ピアノに向かいます また,トランペットのソリストが指揮者の前にスタンバイします

2曲目の「ピアノ協奏曲第1番ハ短調」の正式な名称は「ピアノとトランペットと弦楽オーケストラのための協奏曲」です したがって,トランペット以外の管楽器は退場しています.ショスタコーヴィチは作曲家としてだけではなく,ピアニストとしても名を馳せていました 彼は,1927年に開かれた第1回ショパン国際コンクールに出場し入賞しています (なお,この時の優勝者は同じソ連のレフ・オボーリンです).

この曲はショスタコーヴィチ自身のピアノ独奏で初演されましたが,大成功を納めたと言われています 4つの楽章から成りますが,切れ目なく演奏されます.演奏を聴く前は,「読響は夫婦セットで出演するという条件で押し切られたな」と思っていましたが,実際に演奏を聴いてみると,それは誤解であることが分かりました ポスト二コワのピアノは,ショスタコーヴィチ特有のアイロニーが見事に演奏に反映されていました

なお,「黄金時代」と「ピアノ協奏曲第1番」の予習のために聴いたCDは下のNAXOS盤です

 

          

 

休憩時間に,ホワイエで当ブログの読者ゆえさんとコーヒーを飲みながら歓談しました 実は,同じく当ブログの読者Nさんがこの日の演奏会に来られなくなり,チケットをゆえさんに譲ったのでした ちょうど良い機会だったので,新日本フィルと読響の会員特典CDを何枚か引き取ってもらいました 今や新しいCDは枕元に積み上げているほどCDの置き場所に困っているのです ゆえさんからは映画の招待券をいただきました.期限内に観に行こうと思います.ゆえさん,ありがとうございました 

ゆえさんは10月2日のサントリーホール30周年記念ガラ・コンサート(正装コンサート)に”参加する”ということで,迷いに迷って決めた当日の衣装姿をスマホ画面で見せてくれました.彼女の名前(本名)にピッタリの素敵な衣装でした ひと言で言うと「大胆素敵」です.女性にはおしゃれの楽しみがありますね その点,男は・・・・皆まで言うまい

 

          

 

休憩後は交響曲第10番ホ短調です この曲は1953年夏から秋にかけて,第9番(1945年作曲)以来8年ぶりに書かれた交響曲です ショスタコーヴィチは第1番(1924-25年),第2番(27年),第3番(29年)と2年に1作というペースで作曲,その後,力作オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(30-32年)を経て,第4番(35-36年),第5番(37年),第6番(39年),第7番(41年),第8番(43年),第9番(45年)と再び2年に1作のペースに戻っています このペースから見て,第9番から第10番までの8年間というブランクは異常な長さです これは,明らかに第9番が,第2次世界大戦後のソ連のイデオロギー統制を目的とした1948年の「ジダーノフ批判」の標的とされたことが大きな後遺症として残っていたことを意味しています

この曲は4つの楽章から成りますが,演奏時間にして約1時間を要する大曲です 1953年3月5日に「諸民族の偉大な統領」であるスターリンが死去しましたが,この曲はその年の夏から秋にかけて作曲されています その意味で,この曲はスターリンの死と,その後の「雪解け」ムードが直接的な契機になっているとみなす見方が有力です

第2楽章「アレグロ」はスケルツォですが,狂暴な嵐のような音楽は,ヴォルコフ編「ショスタコーヴィチの証言」によると,スターリンの肖像を表しているとしています

この楽章に限らず,ロジェストヴェンスキーは読響からとんでもないエネルギーを表出させ,会場を圧倒します この85歳の老人のどこにそんな力があるのか,と疑問に思うほどです 第4楽章のフィナーレは,スターリン亡き後の自由な芸術界の勝利を宣言しているかのようです

最後の音が鳴り終わると,しばしの しじまの後,会場割れんばかりの拍手とブラボーの嵐がステージを取り囲みました 拍手を受けたロジェストヴェンスキーは,しばらく楽員の方を向いたままの姿勢でいますが,急に後ろを振り返り,こちらに向き直ります 芝居気たっぷりの役者・ロジェヴェンに あらためて大きな拍手が送られます 演奏を終えたばかりの楽員たちも大きな拍手を送っています 笑顔で拍手を送る楽員たちを見ていると,彼らにとってロジェストヴィンスキーは「愛すべきおじいちゃん」的な指揮者なのでしょう

初めてロジェストヴェンスキーの指揮で聴きましたが,さすがはロシアの,というか,ソ連の大指揮者だと思いました ちまちましたところが微塵もなく,豪快に音楽を鳴らし切ります 素晴らしい演奏というのは,もう一度聴いてみたいと思わせる演奏を言いますが,その意味で,この日のコンサートはもう一度聴きたいと思った公演でした

 

          

 

なお,予習のために下のCDを何度か聞きました それでもこの曲は手ごわい相手でした

 

          

コメント (3)
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