29日(木).パソコン・プリンターのインク・カートリッジが無くなったので,ブラックと3色カラーの両方を買いました.家電量販店で2つで5千円近くしました プリンターの価格は安くして,インク・カートリッジで稼ぐという経営戦略があからさまです
一度,リサイクルのカートリッジを買ったことがあるのですが,とんでもない粗悪品で,二度と買うまいと思いました
ということで,わが家に来てから今日で731日目を迎え(3年目に突入
),インク・カートリッジの匂いを嗅いで食欲を感じているモコタロです
ブラックより3色カラーの方が美味しそうな匂いがするな
閑話休題
昨夜,上野の東京文化会館大ホールで「西本智美の第九」演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「戴冠式ミサ ハ長調K317」,②ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」です
ソリストは,ソプラノ=熊本佳永,アルト=野上貴子,テノール=二塚直紀,バリトン=田中勉,管弦楽=イルミナートフィルハーモニーオーケストラ,指揮=西本智美です
このコンサートは,西本智美とイルミナートフィルが,11月にヴァチカンで開かれる「ヴァチカン国際音楽祭2016」で「第九」と「戴冠式ミサ曲」を演奏するのに先立って,同じプログラムによるコンサートを兵庫と東京で演奏する「壮行演奏会」です ヴァチカンに招かれて演奏するのは今年で4年連続だそうです.すごい快挙ですね
自席は2階R4列4番,右サイドの2階席です.会場は文字通り満席で,1階の踊り場の通路には補助席まで出ています S席が4,000円,A席が3,000円で「第九」が聴けるという割安感からか,あるいは人気の女性指揮者・西本智美の人気からか,会場全体に熱気を感じます
男女混声合唱団が入場します.男声を真ん中にして左右に女声がスタンバイします.総勢150人弱といったところでしょうか 次いで,オケの面々が登場し配置に着きます.1曲目はモーツアルトなので小編成です.左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという態勢です
男性のコンマスは どこかで見たことのある人ですが,分かりません
「イルミナートフィルハーモニーオーケストラ」は,プログラムの解説によると「芸術監督 西本智美のもと,受賞歴を多く持つ国内外のオーケストラ首席経験者などの奏者で結成され・・・」となっています が,実態がよくわかりません.全体を見渡すと,第1ヴァイオリンに東京藝大の藝大フィルハーモニアの第2ヴァイオリン奏者の女性(名前は不明)がスタンバイしています
彼女は他の奏者より頭一つ抜きん出た背の高い美人なので目立ちます
もう一人,チェロの首席にN響と新日本フィルで首席を務めた木越洋の姿があります
オケに次いでソリストの4人が登場しオケの後方にスタンバイ,合わせて西本智美が指揮台に向かいます ロビーの掲示に,西本智美は腰と背中の痛みのため 座って指揮することをご容赦願いたい,旨のお知らせが貼り出されていたので,大丈夫かな?と思っていたら,椅子なしで立って指揮をすることになったようです
彼女の手にタクトはありません.手で指揮をするようです
モーツアルトの「戴冠式ミサ曲K.317」は,1779年3月にザルツブルクで書かれ,その年の4月4日の復活祭にザルツブルク大聖堂で初演されました この曲は第1曲「キリエ」,第2曲「グローリア」,第3曲「クレド」,第4曲「サンクトゥス」,第5曲「アニュス・デイ」から成っています
西本智美は両手を使ってしなやかに指揮をします 各曲の間は極力空けず,サクサクと音楽を進めます
この曲を聴くと「これはミサ曲ではなく,オペラではないか
」,「こんなに美しいオペラのアリアのようなミサ曲は他の誰にも書けない
」と思います
私が西本智美の指揮を初めて見たのは かれこれ15年以上前,90年代最後あたりのことだったと思います 2000年4月に彼女が日本フィルを振ってチャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」のCDを録音していますが,私はその前から彼女のコンサートを聴いています
手元に残っているコンサート・プログラムを見ると,2002年9月にロシア・ボリショイ交響楽団”ミレニウム”を率いて凱旋公演を行った時に聴いています
その後だと思いますが,ロシア・シンフォニー・オーケストラを率いてコンサートを行っています(プログラムに日時の表記がない)
彼女の指揮を一番最初に見たとき,「まるで宝塚のスターが指揮をしているみたいだ」と驚きました.まだ一度も彼女の指揮を見たことのない人のために分かり易く書くと,「『ベルサイユの薔薇』のオスカルがタクトを振ってオーケストラを指揮しているような感じ
」つまり「超カッコいい!」のです
彼女は 男性はもちろんのこと,女性のファンが少なくありません
と言うか,女性のファンの方が多いかも知れません.それは「宝塚」がキーワードです
その西本智美は1994年 大阪音楽大学を卒業,1996年 ロシア国立サンクト・ぺテルベルク音楽院オペラ・シンフォニー指揮科研究課程へ奨学金給付生として留学,イリヤ・ムーシン,ビクトール・フェドートフに師事し,同時にロシア国立キーロフ・マリインスキー劇場に籍を置き,指揮研究員として約90公演の副指揮者を務めました そして1998年 京都市交響楽団でチャイコフスキーの「悲愴交響曲」を指揮して日本デビューを飾っています
この経歴からも分かるように,彼女は他の多くの日本人指揮者が国際的な指揮者コンクール(ブザンソン,トスカニーニなど)に入賞してからデビューし 活躍しているのに対し,コンクール経験なしに,言わば「ロシアの現場のたたき上げ」でデビューを飾っているのが大きく違うところです これが,「西本智美は他の指揮者とはちょっと違うな
」と思わせるアイデンティティーになっています
さて,休憩後はオケの編成が拡大します.コンマスは女性に変わり,良く見るとチェロとヴィオラの位置が入れ替わっています 西本智美は,今度はタクトを持って登場します.オケの編成といい,タクトの扱いといい,モーツアルトとベートーヴェンに対するアプローチは異なるようです.彼女なりのこだわりがあるのでしょう
西本のタクトで第1楽章が始まります.モーツアルトでもベートーヴェンでも彼女の指揮は華麗です この曲でもテンポ感よくサクサクと進めますが,彼女の指揮はどこで切り取っても”絵”になります
第1楽章が終わると,彼女は後ろの柵に寄りかかります.やはり腰がきついのでしょう
第2楽章が終わると合唱団とソリストが登場します.その間,西本は身体を捻って軽いストレッチをやっていました
私が大好きな第3楽章「アダージョ」を経て,いよいよ第4楽章が間断なく始まります さて,個人的に気になるのは,歓喜のテーマが様々に変奏され,トルコ行進曲風の音楽になった時に打たれるトライアングルの音が聴こえるかどうかです
いよいよ,その時がやってきました.聴こえました
やったー,4000ヘルツをゲット
トライアングルはステージの左サイドなのに対し,私の席は2階の右サイドなので遠く離れています.それでも聴こえたので良かったと思います
それとも今回は強く叩いたのか?まあいいや.聴こえたんだから
ということで,いつの間にかフィナーレを迎えて熱狂的に曲が閉じられました.言うまでもなく拍手とブラボーの嵐です 何度かカーテンコールがありましたが,西本智美のゆっくりした足取りが気になります
指揮台を降りる時もゆっくり慎重に降りていました.相当つらいのでしょう
この日演奏した西本智美+イルミナートフィル+合唱団は,11月16日にサン ピエトロ大聖堂で開かれる「ローマ教皇代理ミサ」でモーツアルト『戴冠式ミサ』,オラショ『グレゴリオ聖歌』を,翌17日にサン パオロ大聖堂で開かれる「ヴァチカン国際音楽祭2016」でベートーヴェン『第9交響曲』を演奏します
プログラムに挟まれたチラシの中に「ヴァチカン国際音楽祭2016 合唱団員・ツアー(一般参加者)募集」のチラシが入っていました しっかりしてますね
今回の「壮行演奏会」は,募集に応募した人たちの練習の成果が披露されたのでしょうか