昭和16年夏の敗戦 (中公文庫) | |
猪瀬 直樹 | |
中央公論新社 |
内容紹介
緒戦、奇襲攻撃で勝利するが、国力の差から劣勢となり敗戦に至る…。
日米開戦直前の夏、総力戦研究所の若手エリートたちがシミュレーションを重ねて出した戦争の経過は、実際とほぼ同じだった!
知られざる実話をもとに日本が“無謀な戦争"に突入したプロセスを描き、意思決定のあるべき姿を示す。
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読了。
知らない話のオンパレード。
あまりにも何も知らなかったので、読み始め「窪田総理大臣」というのを見て、え?これ小説?架空の話なの?と思ったほど。
小説ではありません。
日米開戦前夜、「総力戦研究所」に官民から集められた若い当時のエリートたちが、日米開戦になったらどうなるか。、をシミュレートしたことがあったらしく、そのことを1980年代に若き猪瀬直樹氏が徹底取材をしてルポしているのです。
唖然としてしまったのは、これに参加した人参加していない人も皆が、日米開戦になれば「敗戦必至」と分かっていたということ。わかっていたのに、開戦に至ってしまった。この事実。
私はなんとなく、当時の日本指導者の中には「日米開戦になったら負けるのは当たり前、何としても避けなければ!」と思っていた人も多かっただろうけれど、それよりも「勝てるかもしれない。やるべきだ、賭けるべきだ!」という声が強くて、開戦にいたったのだろうと思っていました。あの東條英機ですら、勝てると思っておらず開戦するべきでないと思っていたなんて。
冒頭の「窪田総理大臣」というのは、「総力戦研究所」でのシミュレーション(演習)のために作られた模擬内閣の一人だったのでした。
日本的意思決定の方法。
失敗に学ばない姿勢。
ああ、何も変わっていない。
これはきっとまた同じことになったら繰り返す。背筋がぞっとする。なにより問題なのは、だれも責任をとりたくなくて「なんとなく」その場の空気に流されていくそのありかただろう。今周りを見ても、容易にそうなることがわかる。
おススメの本です。
ちょっとくせがあって読みにくいけど、事実の重みがそれをしのぐ面白さです。