在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Montepulciano d'Abruzzo 1957-1969 Valentini

2013-12-20 10:07:44 | Lazio, Abruzzo, Molise ラツィオ他
Montepulciano d'Abruzzo Valentini
1957 +++
1958 +
1960 +++
1965 +
1966 ++++
1967 +(+)
1968 ++++
1969 +



50年以上飛んで今度は1950年代から。それでも古い。なかなかお目にかかれないヴィンテージ。





1957
暗いトーンのガーネット。しかし、すでに茶色系になっていてもいいくらいなのに、まだこの色合いを保っている。きれいな透明感、そして輝きがとてもよい。
アニマルの香りが最初にちょっと出るが、決して強くないし、かなり繊細でエレガント。タロッコオレンジ、腐葉土、ドライフルーツなども含め、熟成香りがそれはきれいに出ている。透き通るような香りでかなりよい。
味にも非常によい熟成が出ている。酸がきれいで、そこに加わる塩味とのバランスがよく、ほのかなアーモンドの香りが味の余韻を占める。とても心地よい。50年以上たったワインだとはとても思えない。というより、50年たってこうなるワインこそが本物のワインだと思う。と言い切ったら、世の中はニセモノのワインだらけになってしまうが・・・

1958
イワシ風の海の香り、アニマル、ドライフルーツ、腐葉土など。
酸がかなり出て、絞ったオレンジの余韻。

1960
たぶんボトルをかなり揺らしたのだと思うが(この辺でサービスする人の緊張も少し解け、だいぶボトルが揺れているのがわかる)澱がかなり出ている。
カフェ、チョコレートが強い。還元臭あり、さび、トマトのコンフィ風、煮詰めた香り、コットもわずか出ている。
味のほうはインパクトが大変よい。味にまだまだパワーがあり、酸が締め、塩味も程よく余韻が長い。
香りはまあまあ、かなり個性的だと思ったが、反して味が非常によい。

1965
オレンジで、わずか濁りが見え、完全に透明ではない。色はかなり薄く、他とは全く違う色合い。
香りの奥にアニマル臭。トースト集がやや強く、線香の香り、キーナ、カフェ、それもややインスタント風といっていいかもしれない感じ。全体にほのかに漂う感じがエレガントといえなくもないが、品質がやや劣り、エレガントより全体的にワインの本質が欠けているという感じ。
酸がきつく、バランスが悪い。繊細だか、痩せている感じで余韻も細い。

1966
打って変わって、ガーネット色がかなり濃い。爪に若干のオレンジ色が見える。大変魅力的な色。
閉じている。そして、だんだんと出てくるが、よい。非常によい。ラバルバロ、キーナ、タロッコオレンジなど、どんどん出てくる。かなり複雑でよい香り。
味のインパクトがよい。最初酸がやや少ないかと思うが、じわっと出てきて、際立つほどではなく、全体の構成のバランスが取れて素晴らしい。余韻も長く、非常によく熟成しているワイン。

1967
66年よりよりガーネットで、濁りが見える。
還元臭、イオウ臭、肉、血の香りに加え、奥にはやや臭みがある。ただし、臭みは不快な香りではないが。
酸が際立ち、これはちょっと気になる。痩せていて、余韻が細い。

1968
かなり濃い目のガーネット。爪がオレンジ。
最初閉じていて、だんだん出てくるが、フルーツに花の香りが混じる。60年代でほのかに花の香りが上がることはたまにあるが、やはりある意味感動的。金属的な香りがエレガントさを与えるし、奥にはほんのり甘い感じも出ている。
当然甘くはないのだが、甘いくらいの心地よいインパクト。アルコールがまろやか、というのとは違う、本能的に感じる甘くやさしい心地よさ。著わが見事に取れている。余韻は長く、非常に魅力的。

1969
ガーネット色、クミン、オリエンタルスパイスの香りが混じり、バランスが悪い。
酸が際立ち、こちらもバランスが悪く、全体の構成がよくない。余韻も短く、強くはないが苦味が残る。
アルコールが非常に高く、酸が多く、雨の多かった年との事。ワインが麻痺して、熟成が止まってしまうのだそうな。

みてわかるが、毎年違う。それもちょっとやそっとの違いではなく、まるで、全く違うワインに感じるほどの違いがある。そして、これが、本当の、農産物としてのワインだといえると思う。よい年は、本当に神の恵みだろう。