在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Suburra di Stefano Sollima イタリア映画 スブッラ

2016-02-11 12:37:41 | 何故か突然イタリア映画
Suburra スブッラ
監督 ステファノ・ソッリーマ



原作本のあるものの映画化は難しいと思うが、これは成功例に入ると思う。原作は結構売れている。私は読んでいないが、上映会出席のジャーナリストで何人か読んだと言う人がいた。

さて、今回の映画に関連があるイタリア映画が二つある。
一つはマテオ・ガッローネ氏による「ゴモラGomorra」(正確にはゴモッラ)で、これは原作はベストセラー、映画も大成功を収めた。
(マッテオ・ガッローネ氏に関しては、人柄がかなり良いこともあるが、昨年の作品「童話の中の童話il racconto dei racconti」は日本でもぜひ公開して欲しい。。。)
もう一つは「ロマンゾ・クリミナーレ(犯罪のロマン小説)」で、スブッラと原作者が同じである。
関連が強い理由は、ゴモッラはナポリ、ロマンゾ・クリミナーレとスブッラはローマが舞台になっている点が違うのだが、三作ともイタリアヤクザの内情を暴いたものであることと、ロマンゾ・クリミナーレとゴモッラのテレビシリーズを手掛けたのがスブッラの監督ソッリーマ氏であるということである。

日本では、シチリアのマフィアはゴッドファーザーの影響も強いと思うが、よく知られているし関心も強いと思う。
しかし、イタリアでもっと「お騒がせ」なのが、ナポリの組織カモッラであり、また、意外にもローマ郊外のオスティアにこれだけの悪がはびこっていた(多分今も?)とは。
映画を見て全てを知った気になってはいけないが、知らない世界に関心を持つきっかけになる。

さて、ゴモッラに関しては別に述べることとして、スブッラ。
ちなみにスブッラとは、古代ローマ時代に存在していた貧民街のことで、コロッセオ近く、フォロの北側に位置していた。
こういう悪やら抗争やらが古代ローマ時代から変わらず続いているということでつけたタイトルらしいが、ローマ時代もこんなだったのか、とちょっと愕然。
しかし、スブッラはタイトルだけで、映画の舞台は市内中心部と、ローマの空港(フィウミチーノ空港)近くにある海辺の町オスティアである。
オスティアのヤクザに関しては、「ロマンゾ・クリミナーレ」意外にも何本か見ていて、ローマから一番近い海であるため、夏には市民が大挙していく海辺の町というイメージの裏はこうなんだぁ、と改めて愕然。
そういえば、かの有名映画監督パゾリーニ(「ソドムの市」がもっとも有名)が殺されたのもオスティアだった。。。と思ったりして。(ヤクザに殺されたわけではないが)

さて、前置きが長くなってしまったが、この映画の一番の印象は、とにかくすごいお金をかけている!ということ。
このところ質素な映画が多い中、すごい。もちろん映画村チネチッタも使っていると思うが、ローマ市内でのロケがすこい。ショッピングセンターでの大規模なロケもある。(いったいいくら払ったの~??)
と、すごいの連発であるが、ソッリーマ氏はそれなりの作品を作り成功しているし、お父さんも映画監督で、子供の頃からロケの中で育ったそう。(お金を使える監督は違う!)

さて、ストーリーは政界の大荒れ、前法王(ベネディクト16世)の引退、そして、オスティアのヤクザ、ジプシーヤクザの抗争をかけて、かなり複雑であるが、実は全部繋がっているということの示唆の上にできている。
法王の引退の決定の苦悩の場面から始まるが、有能政治家、ヘロイン、愛人(まだ未成年)、ヘロイン中毒で偶然ではあるが死んでしまう若い娼婦、政治家の家族も登場、オスティアのボス、実は凄腕のボスの女、オスティアの隠れ大ボス(名前はサムライ)、ジプシーのボス、ジプシーのボスのファミリーとそのすごい暮らしぶり(かなりの大所帯)などなどありとあらゆる人物が出てくる。(原作にはまだまだ登場し、登場人物の半分は削ったとのこと。)
政界破局の決議、大ボス二人が殺される日を「黙示録」の日として、その7日前から日ごとに追っていくやり方も面白く、話がどこまで来たかがよくわかり、退屈しない要因の一つでもあったと思う。

ちょっと笑わせたのが、次から次によくまあ人が殺されるわ、ということと、都合良い時は死にそうで死なない、人物同士が偶然にしては繋がりすぎ、オスティアのボスの女がピストルの使い方が若いのに上手すぎ~、なんだか毎日雨、雨、雨、などであるが、ストーリーは実によくできている。
130分というかなり長い作品でも退屈しない、とは聞いていたが、確かに退屈する場面は全くなかった。
役者も良く、演技派中心、見ていて違和感がない。

大ボス、サムライの名言。
なんで奴を殺してしまったんだ、との質問に「ローマが殺したのだよ。」

こういう映画が日本に配給されるということはないと思うが、イタリアヤクザ、ローマの裏側を描いたものとして紹介されるのは面白いと思う。

なお、監督のインタビューには、ピストルの使い方が上手すぎのボスの女の役の女優グレタも出席。本物の方がかわいかった。
かなりオススメ。


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