『カイゴのゴカイ』…written by Black・vigo(この物語はあくまでもフィクションです)
ガチャ……玄関のドアが開く音がした。
母の徘徊が始まったのだ
私は慌てて後を追う
鍵と携帯をもって。
今日はこれで何度目だろう?
今度はどれくらいで帰れるかな?30分?一時間?
「お茶を一杯どうですか?」などといって気をそらせば徘徊は止められます…って、どんな本にも書いてあったが、母をそれで止められたことはない。
マニュアルなんてみんな嘘じゃーん…と、私は思う
結局、行き着いた答えは
…スキに歩かせて後を追い、タイミングを見計らって声をかけ家に誘導する。単純。
なんのかんのいってもこれが一番安全、確実、平和な方法なのだ
お茶一杯程度の誘いにはのってこない認知症者もいると、なんで書かないんだ?
この怒り、どこにぶつければいいんだか…
誰が書いた知らないけど、もっと現実に即したものを書いてほしいもんだ。
認知症ってのは複雑なもので、一筋縄ではいかないんだから。
私に書かせろ~
ぶつぶつ思いながら母の後を歩く私。忍耐だ。
そろそろイイかな…
母に近づいてみる。
「あら、カルル子、いたの」
「うん、どこ行くの?」
「買い物」
「じゃ、あそのこスーパー行こう」
どうやら、母の頭はきりかわっていたようだ。
このままスーパーで買い物をして帰れば一件落着
ホッ…とする私
家に戻った母は何もなかったように落ち着いていた。
【今日の外歩きは、これで打ち止めならいいな】
外歩き=徘徊のことだ。
言葉にこだわっても仕方ないけど、なんとなく「徘徊」とは言いたくなかった
この言葉には悪意を感じる。
誰がつけたんだ?
徘徊には、無目的にウロウロと歩き回るイメージがある。
でも、母は、お出かけ用の服に着替え、鞄の中身も自分で揃え、「これで帰らせていただきます。お世話になりました」と、ご丁寧に挨拶までして出て行く。
少なくともこの時点では、けして無目的でなく、「○○へ帰る」とか「××へ行く」とか目的がある。
何かを求めて…
失った記憶を求めて…
母は西へ歩く確率が高い。
西へ行けば、やがて、確かに、昔住んでいた街に着く。
本能的に知っているのだろうか。
しかし、母の頭の中で何がおこっていようとも、世間的には困った徘徊者なのである。
ひどいときには一日に7回の外歩きをした。
キツイ…
夜が更けても、雨が降っていても、真夏の太陽ががんがに照りつけてもそれは止まらない
「だれか助けてよ!」
道の真ん中でしゃがみ込んだら、そのままうごけなくなりそうだった。
でも、止まっているわけにはいかない。
母を見失ったら、また警察の世話にならなくてはならない。
警察はイヤだ。
街のおまわりさんは結構冷たいのだ
家族に説教するのが大好きなんだから。
なんで上から目線?
徘徊は犯罪なの?
二度と警察の世話にはなりたくない。
もう頭を下げるのはイヤだ
「どうか明日は徘徊がありませんように」
祈ってみる。
でも、私、神も仏もいるなんてコレぽっちも思ってないからさ、御利益なんてあるわけない
明日も自力で、外歩きと向き合うさ
つづく。
この間、アンさんのケアマネとその話をしていたら
以前と何もかわってませんでした。
相変わらず、家族に説教するらしいわ。
たまに優しい警官もいるんたけどね。
うちは一時、ココセコムに入ってみたけど、手のひらサイズ程度の端末を母に持たせることが出来なくて、すぐに解約しました。
鞄の中身は自分で入れ替えるし、服も着替えるから、こっそりどこかに入れておくっていうのも出来なくて。
体に埋め込みたい…と冗談半分、思ってました。
家は仕事から帰ってきたらいなかったのでGPS携帯に大変お世話になりました。
介護ってお金かかりますよね・・・。
あくまでフィクションと断っているので、毒舌吐くには便利です。
絵心のある人がいたら、挿絵を描いてもらいたいワ
フィクション小説 笑 うんうんそうだね
体験者の真実の声が大反映です
作者の観察力と愛情がたっぷりの小説
次々とアイデアあふれる作者の
今後にたくさん期待します。