感想:あの人が消えた

2024-10-13 08:47:26 | 映画





~あらすじ~

運送業の青年・丸子。
配達を担当している「人が消える」という噂のマンションに入居した女性が、
愛読している「小説家になろう」作品の作者・コミヤチヒロだと知る。
配達を繰り返すうちに丸子は女性に好意を寄せていくが、
同じマンションに住む不気味な男がつきまとっていることに気付く。





この映画は事前情報なしで観たら結構面白かったのだけれど
ネタバレなしだと感想を書けないので
これから観る予定の人は今回はスルーしてください。








普通に一人で暮らしている女性からすれば、
配達員に惚れられるのって結構な恐怖でしかないと思うんだがなあ。
さっさと荷物を渡すべきところをコミュ障っぽく話されたら怖いって。

つきまとっている男よりも、この主人公のほうがストーカーに見えてしまう。
しかも何でもない場面でおどろおどろしい音楽を流して不安をあおったりして
アホなおばちゃんたちが昼に観るドラマみたいな安っぽい演出にイライラ。

ただの配達員なのに、勝手にマンションの住人に聞き込みをするのも不自然。
男が血まみれでベランダでタバコを吸っていたり、
意識のないコミヤを部屋へ運びこんでいたりという情報が出てきて
サスペンスとしても安いTVドラマのようなご都合主義。

すべて主人公の勘違いでしたーってオチだったら怒ろうかと思ってたんだが。





中盤からはガラッと様相が変わる。
コミヤは須藤、男は別府と名乗り、ともに公安のエージェントとして
マンションに潜伏しているテロリストを調査していることが明かされる。

そして前半での数々の謎が回想として再現され、
テロリストを追い詰めていく戦いの日々が描写される。

この突飛で意味不明な展開のギャップがめちゃくちゃ面白い。

公安のエージェントながら仮の姿をパーソナルトレーナーとして過ごし
日夜プロテイン片手に鍛錬にいそしむ別府。
清楚な女性に見えたはずが別府のミスにブチギレてしばき倒す須藤。

公安から支給されたペン型麻酔銃とか、「コナンかよ!」と
観客に突っ込ませてくれるゆとり部分も面白いw
制作が日テレ系なのでそっち方面の小ネタなんだな。

血のように見えた液体が実は奇妙な色のプロテインだったり
適当にかけた電話番号が何故か梅沢富美男(本人)につながったり、
とにかくシュールあふれる謎展開が繰り広げられる。

この笑いの作り方がとにかく上手くて
序盤からずっと別府の不気味な演技を貫いていた染谷将太の転換っぷりが見事。




というわけで。
映画としての予想外のブン投げが超楽しかった。
最初甘く見ていたぶん、伏線の消化の仕方もミステリファンとして満足の出来!!

上映スケジュールのあらすじだけ見ると
安っぽいホラーかサスペンスかという受け取り方しかできなくて、
最初からコメディ映画だと説明しておかないと動員につながらないんじゃないか。

ストーリーラインは超グダグダで普通ならぶっ叩くところだったのに
面倒なことを忘れてとにかく笑いに向かわせるパワーがある。

やっぱりたまにはこういう作品を楽しむ余裕を持たないとだな!!


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感想:スオミの話をしよう

2024-10-08 23:26:42 | 映画




~あらすじ~

詩で財を成した寒川しずおの妻・スオミが誘拐された。
寒川の屋敷に集うかつてのスオミの夫たち。
しかし、それぞれが語るスオミのイメージが噛み合わない。
『器用で料理が上手い』『不器用で料理が苦手』
『淑やかな大和撫子』『極度のツンデレ』『中国語しか話せない』
スオミとは一体何者なのか。





予告編を見た限りだと『キサラギ』っぽいなぁ
……なんて思っていたのだけれど、実際に観たら思った以上に『キサラギ』だったw

凋落著しいフジテレビが、いま一度の栄光を求めて最終兵器である三谷幸喜に
「『キサラギ』みたいな映画を作ってくれ」と頭を下げたのだろうなぁ。

でも予告編で「三谷幸喜最高傑作」と勝手に銘打たれては
本人もさぞかし迷惑に違いない……。




映画のほとんどが寒川の屋敷での会話劇。
もともと舞台の人間である三谷幸喜にはお手の物。

流れるような会話のテンポは気持ちいいし、
会話の最中にも一人ひとりの動きを細かく指定する演劇的な演出も面白い。



ただ、キャスティングが三谷幸喜にしてはあまりにも迂闊じゃなかろうか。

一応の主役である西島秀俊演じる刑事の夫にイケおじ要素を集中させたせいで
延々と冴えないおっさん達の討論会を眺めさせられる映画になってしまってる。
一人の女性に関する話し合いなのだから、もっと映える役者で揃えたほうが
映画としては面白くなったんじゃなかろうか。
三谷にキャスティング権があったのかどうかは知らんけど。

唯一気に入ったのがスオミの2番目の夫であるYoutuberの松坂桃李。
自分にとっては松坂桃李はいまだにシンケンレッドなのだけれど
俳優としてきっちり地位を確立してるのは嬉しい。
髪を緑に染めてのヒカルっぽい立ち振る舞いが板についてるのが面白かった。



謎の女スオミを演じる長澤まさみはさすがの演技力。

回想シーンでアラフォー女優に女子中学生を演じさせる無茶振りも面白かったし
峰不二子ばりに色々な立場に順応する変身能力は純粋に笑ってしまった。
ただ、長澤まさみありきの役柄だったのは理解できるのだけれど
もっと面白く演じられる女優がいたかもしれない気がするんだよな。
終盤で五人の夫たちを前にしての大立ち回りは普通に寒かった……。



スオミが何者なのか、という命題にもとづいてのストーリーなので、
そこを予想しながら自然と作中に引き込まれるべきところ、
ミステリのように終盤で一気に明かすのではなく
チョロチョロと垂れ流すように明かされるので肝心の謎が楽しめない。
非常に多くの伏線が実に細かく練られているが、
結局大きなサプライズを作れないまま終わってしまった。





作りたかったものは伝わるのだけれど、どうにも痛快さと爽快感に乏しい。
パーツを組み合わせたらデコボコに出来上がってしまったプラモデルのような作品。

結局『キサラギ』は映画としての出来の良さも当然なのだけれど、
あの時代のあのタイミングに様々な偶然が重なって生まれた奇跡なわけで、
それを狙って作ろうとしても無理なんだよな。

三谷幸喜は悪くない。と思いたい。

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感想:帰ってきたあぶない刑事

2024-06-11 00:21:31 | 映画







子供のころからテレビドラマにほとんど興味がなくて
舘ひろしと柴田恭兵がかっこいいのはそりゃあ解っていたけれど
旧作自体は全然知らないわけで。
実際のところ、ほかの映画との時間合わせで観ただけだったんだが。



これがものすごく面白い。

バブルの時代を模したオープニングにノスタルジーを刺激されまくった。
日本が元気だった時代。何をやっても日本が世界から注目された時代。
「あの頃をもう一度体験したい」なんて思わされてしまう極上の演出。


そしてメイン二人の魅力がハンパない。
老いた舘ひろしと柴田恭兵なんて見たくない!! と最初は思ったのに
全盛期と遜色ない立ち振る舞い。本当に70を過ぎたジジイなのか?
カッコよすぎてマジ反則。

アクションもすげえ。
どういう鍛え方を続ければあのキックの足の上がり方ができるんだ……。




ストーリーもいたってシンプル。

ヒロインの土屋太鳳!!
タカとユージのどちらかの娘!!

突如現れる昔の恋人!!

悪いやつがいて、もっと悪いやつが出てきて
警察のコンプライアンスなど関係なしにぶっ殺す!!

リアリティなんてクソくらえの爽快感。



ジジイになっても自分を魅力的に見せるスキルが激高で
それだけで作品そのものが面白くなってしまう。

岸谷五朗の円熟味もとても良かったし
仲村トオルも58歳なのに若造キャラのままの演技が素晴らしかったし
旧作を観ていればもっと楽しめたかと思うと悔しい!!



やはり古い作品をリメイクするにあたって、
余計なことをせずに良い作品をそのまま再現するだけで
劣化することなく面白くなるんだよなあ。

老化を自虐するネタが時折入るのは悲しいが
まったく無視するのも逆に不自然だしなw
「下半身は二十代!」というセリフがハードボイルドすぎて最高。

二人とも女たらしなのにコンビとして恋人以上の絆を見せてくれるのが
究極にシビれる!!




うむ。実にいいものを観た。
仕事で疲れた脳を弾けさせてくれるエンタメ映画。
カリスマ俳優のオーラは劇場のスクリーンだと一層際立つな。

オススメ。


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感想:映画 からかい上手の高木さん

2024-06-02 08:42:19 | 映画





正直なところ、原作はきちんと完結してくれて
寂しいというよりも安心したという気持ちのほうが大きかった。

そしてその最終回も序盤でフラグだけ立てておいて
それ以降はすべてが引き延ばしだったことが判明してとても悲しかった。

良い作品が大人のマネタイズの都合で捻じ曲げられてしまうのは
どんな状況であれ非常に気分が悪いよね。



そしてその極北ともいえる実写映画の『高木さん』が公開。
見えてる地雷を踏みに行く!!




パリから帰ってきたあと東京で暮らしていた高木さんが
地元の中学教師になった西片のもとへ教育実習生として訪れる。

パリってなんだよ!! と思ったがドラマ版の続きってことなのか。
ドラマ版は面白そうだったが放送に気づかないまま終わってたんだよなー。



そして10年ぶりの再会。
西片を驚かせるためだけに掃除用具入れから飛び出してくる24歳の女。
こいつキチガイじゃねーの……。

精神年齢と恋愛観がなにひとつアップデートされないまま
年齢だけ重ねたやばいやつらの話。
化粧でケバい高木さんなんて見たくなかったよ!!!!

高木さんは思春期女子の少し大人びた物の考え方をしながらも、
子供から抜けきらないまま純粋に遊びを楽しむところが魅力だったのに。



中学生のピュアな恋愛というノスタルジーすらスポイルされ、
幼稚な大人たちを動物園のように眺めさせられる最悪な映画。

それでいて学校の生徒同士の恋愛にスポットをあてて
ダラダラと時間を消化させるクソ展開。
そんなもんが見たかったわけじゃない!!




原作の同級生たちが同窓会で酒を飲んでるのもなんだかショックだったし、

それならそれで原作通りのキャラにすればいいものの
浜口北条ペアが10年で5回も別れてるという謎設定が追加されてるし、

中井と真野の結婚式で、新郎新婦を差し置いてそれ以上に目立つという
祝い事におけるタブーを平然とやらかすし

脚本作成でやっちゃいけないことを全部盛りで見せられてしまった。



そもそも、脚本にまるで気持ちがこもっていないせいで
役者たちも演技に乗れていない。
どういう人生を送るとこんな空っぽの言葉の応酬になるんだよ……。

ラストの告白シーンはどうでもいい会話が体感で15分以上続いて地獄。
イライラが募りすぎて劇場で叫びそうになったわ。

しかも付き合って最初のからかいが「今日で別れようか」とかいうセリフ。
リアルの女にこれをやられたら、たとえ冗談だとわかっていても
グーパンで手が出るかもしれん……。




小豆島の空気はとても良くて、
作品の内容さえよければ最高のロケ―ションだったはずなのに
結局キャストありきで高木さんのタイトルだけ借りた原作レイプ。


日本の映画界はいつまでこんなこと続けんの。

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感想:ゴジラ-1.0

2023-12-24 09:50:27 | 映画




戦時中。特攻から逃げて出撃できなかった青年、敷島。
特攻隊の拠点である大戸島に現れたゴジラもまた恐れて攻撃することができず、
残っていた整備兵まで全滅させてしまう。
戦争が終結し、敷島は自分だけが生き残ったことに大きな自責の念を抱きながらも、
東京へ戻り少しずつ人生を軌道に乗せていく。
そんななか、逃したゴジラがさらに巨大化して現れ、破壊の限りを尽くしはじめる。




というわけで。

令和になってから観る昭和ゴジラの懐古ロマンも実に素晴らしいのだが
それよりさらに前の時代。戦後すぐを舞台にしたゴジラ。

東京に舞台が移ってからの戦後の人間ドラマとしても面白い。

俳優がみんな古き良き特撮の演技ができていてポイント高い。
ヒロイン役の浜辺美波がめちゃくちゃ可愛くて見惚れてしまった。
すげえいい女優に育ったなぁ……。

貧しい戦後の描写もリアルで、身につまされる。
「パンパンにでもなれって言うの!?」というセリフがとても良かった!!
怪獣映画を観に来た親子連れのあいだで
「お父さんパンパンって何?」という会話が各地で聞かれたかと思うと胸熱!!

戦後のどん底から這い上がる人々の生命力の描写に
「まるで朝ドラを観ているようだ!!」と思ったんだが
神木隆之介&浜辺美波って朝ドラでも共演してたのかよ……。




劇場でゴジラを見たのは『ゴジラvsデストロイア』以来な気がするが
約30年ぶりに映画館で観たゴジラの迫力がものすごい。
今のフルCGのゴジラでもしっかりゴジラ。戦後の銀座を蹂躙する描写が実に痛快。
昭和ゴジラより前の時代のはずなのに凶悪さが格段に上なのはなんでだよって思うがw

光線を溜めてから吐くタイミングがこれ以上ないほど完璧で感動した。
仕事が忙しくてレイトショーでしか観れなかったが
これは是非imaxでもう一度観たい……。

昭和世代からするとゴジラは着ぐるみだからこそ愛嬌も感じられて
子供たちのヒーローたりえる、とも思うのだけれど、それは単なる老害の意見。
ここまでしっかり作られたら年寄りの小言なんか封殺されるわ。



ストーリーはご都合主義で「なんでやねん」の連続だったけれど、
終盤でのストレスをとことん撤廃した姿勢は評価できる。
すごいゴジラを見て、スカッとまとまったラストを見て、
笑顔で気持ち良く帰れるのが優良娯楽映画の条件だろうしな。



この作品の監督である山崎貴は名前はよく聞いていたけれど、
wikipediaで他の監督作品一覧を見たら
『ヤマト』『ドラえもん』『寄生獣』『ドラゴンクエスト』『ルパン三世』
という錚々たるメンツが並んでいてオエエェェとなった……。

思い入れのある作品を完全CG化されたらオールドファンは
拒否反応が出るのは仕方ないw

でも『海賊とよばれた男』はすごく良かった。
画面構成の良さだけでなく、流れるようなストーリーラインが共通してたな。

今回のゴジラで一気に株を上げたと思うので、ここは是非次回作にも期待!

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感想:首

2023-12-14 20:59:09 | 映画





観てきました!!

いやーすっげー面白かった!!


予告を見た感じ、「戦国版アウトレイジ」なのかなーと思ったら
その予想を上回るレベルでアウトレイジだったw


もうキャスティングを見るだけで悶えまくるほど面白い!!


実質的な主人公は西島秀俊演じる明智光秀。
狂った周囲に翻弄される芯の通った生真面目っぷりを演技で表現していて
たまらなく熱い!!

そして加瀬亮演じる信長のサイコパスぶりがインパクト激高。
脇を固める役者たちの重厚感のなか、一人だけ名古屋弁で喚き立てる尻の軽さが
信長の解釈として面白い!!


作中でかなり重要なポジションである抜け忍の曽呂利新左衛門が
なぜか木村祐一。
むかし『ゆれる』で検事役をやっていてその演技に頭を抱えたが
演技力自体はそんなに変わってないのに、存在感がすごい。
このキャスティングには一本取られた。

千利休が北野映画1作目にも出演していた岸部一徳だったり、
その付き人が長年TVタックルで組んできた大竹まことだったり
「北野映画」というジャンルとして見てもとにかく胸熱!!

全員が戦国を生きる男たちとしてガッチリとハマって
それでいてエンタメ映画にしっかり振った演技ができてる。



それなのに。

たけし演じる秀吉だけはテレビと同じノリw
ことあるごとに「秀長この野郎!」を連呼するし
秀長、官兵衛と三人で遠くから合戦を眺めながら笑うところは
完全に「風雲!たけし城」のコピーw

たけし自身最後とも言われているこの映画で
なんでこんなメタ演出を入れたのかがわからんなぁ。
ずっと「殿」として生きてきた自身の人生を
コメディアンの視点から顧みるネタってことなのかなぁ。

なんだかんだで何箇所も笑わされてしまったのでこれはこれでアリだけどなw





シナリオは実にテンポよく進むし理解もしやすい。

戦国ドキュメンタリーなどという野暮ったい構成にはせず、
「みんな知ってて当たり前」の部分の説明をオミットすることで
ひたすらエンターテイメントに振り切る手法が実にたけしらしい。

逃げ延びた荒木村重(ホモ)が光秀(ホモ)を信長(ホモ)に
取られたくないがために本能寺の変をそそのかすという地獄のような内容w

いまだに研究されている本能寺の変の契機が案外これかもしれない、
と考えてみるのも戦国ロマンのひとつとして面白いw



タイトルが『首』であるとおり、作中で多くの人間が首を刎ねられて死ぬ。

裏切りありきの日本の戦国を体現している斬首もあれば
妙にコミカルな演出の斬首もあったりで、なかなかカオス。

すべての男が野心をもって成り上がろうともがき苦しみ
大志実らず散っていく姿が一様にドラマティック。
そこに加えてたけし映画ならではのシニカルなペーソスを散りばめて
戦国の無常観を表現していく。


しかし。
それを監督自らぶっ壊すかのごとく、秀吉たけしの空気の読めなさが
シリアスなドラマにギャグをぶち込むタイプのコントに変貌させ
終盤には信長以上のサイコパスにw


真面目な戦国モノを期待した人は当然ガッカリするだろうし
たけしが嫌いな人だと絶対楽しめない映画だけれど、
自分にとってはすっげー面白かった。



終盤、渦中から離れた場所にいる新左衛門が「みんなアホか」とつぶやくのも
最後の最後に秀吉が「(ネタバレのため拒否)」と叫ぶのも
まさにたけし作品ならではの全力アイロニー。

やっぱりたけし大好きだ。


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感想:ミセス・ノイズィ

2023-11-05 10:08:57 | 映画






「引っ越しおばさん」「騒音おばさん」といえば
一定以上の年代の人は必ず知ってる人物。

そのおばさんをめぐる一連の騒動を元にフィクションとして再構成したのがこの映画。

公開当時は近場の映画館でやってなかったので
コロナにやられて動けなかったときにアマプラで有料で観た。




まずは現実のおばさん騒動まとめ。

「引っ越し! 引っ越し! さっさと引っ越し!」というリズムを刻み
ラジカセで大音量を流しながらベランダで布団を叩きまくるおばさんが
ある時期からテレビのニュースで流れ始める。

その強烈なキャラクターとテレビ映えする行動の数々により
ワイドショーで連日おばさんの映像が放送され続け国民全員のオモチャとなった。
映像を提供しているのは騒音の被害者である隣人夫婦。

隣人夫婦とのいざこざによるおばさんの嫌がらせということだったが
実際に流される映像はおばさん側ばかりのため、
どうしても一方的に悪者に見えてしまう。



結果的には隣人が騒音で眠れなくなり体調不良となったことを理由に
傷害罪が適用されて逮捕・懲役の実刑に至ってしまい
それはさすがにやりすぎだとネットではおばさん側に同情する流れが出来上がる。

そこからは被害者であったはずの隣人夫婦にあることないことの
誹謗中傷が繰り返されていく。

とはいえ、コンテンツとしてのおばさんが不在となった以上
あらたに面白い映像が提供されることもなくなり
ネット民からも飽きられて忘れ去られていった。



結局のところ、何が本当で何が嘘なのかがまったく検証されずに
無責任に囃し立てられてそのままフェードアウトしたこの事件。

いったいどのようにエンターテイメントとして再構成されたのか。






映画のあらすじ。



主人公はスランプに苦しむ作家の真紀。
夫と娘とともにアパートに引っ越してきたものの、
朝早くに布団を叩くおばさんのせいで執筆がはかどらない。

そして、勝手に部屋から外へ遊びに出た娘を夜遅くになってから
おばさんが連れて帰ってきたことで怒りに火が点く。

騒音の被害を受け続けた真紀はその怒りの矛先を執筆に向ける。
おばさんを元にした小説を出版社へ持ち込んだところ大ヒットに。

さらには二人の諍いがネットにアップされ、
小説で誇張されたおばさんの異常性が現実と重なって面白がられ
連日アパートにはマスコミと野次馬が押し掛けることとなる。

ある程度物語が進んだところで時間が巻き戻り、おばさん視点に切り替わる。
何故おばさんが布団を叩くのか、子供に対して何をしたのか、
過去にどのようなことがあったのか。
様々に同情すべき点が観客へ提示されていく。

そして加熱していくおばさんブームの中、
ある出来事をきっかけに真紀が叩かれる側になってしまう。

終盤は世間をも巻き込んだドタバタになるが
ご都合主義的におさまって静かに綺麗にまとめて終わり。




なんとも日本映画としてのテンプレートのような展開だったが。

まあなんというか。
「ネットでの憶測で作り上げられたイメージ」をそのまま映画にしたわけだな。
映画は映画で良く出来ていたのだけれど
映画より現実のほうが面白かったのがヤバい。



これだけ現実に即していると、映画を作るにあたって
おばさん本人に許可をとらないとまずいレベルのような気がするんだが
まあとってないだろうなあ。

しばらく前に「あの人は今」的な感じでネットニュースの記事になっていて
おばさん本人に取材しようとしたら警察を呼ばれたとのこと。そりゃそうだ。


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感想:Gメン

2023-09-20 18:19:26 | 映画




チャンピオン信者としてこれは押さえねば!!
原作もすごく面白かったし!!




まず漫画の実写化において気になるのが

「キャラが似ているかどうか」

実写化がバカにされるのは大抵がコスプレに成り下がるからで
個人的には「似た雰囲気」さえ出せていれば
見た目を近づける必要なんてないと思ってる。

しかしこの映画は「見た目」も「雰囲気」も両方とも出来が良くて
メイクのおかげもあるのだろうけれど
期待してなかったキンプリ岸がしっかりと勝太になってた!!

まあ「なんで薙がりんたろー。なんだよ」という
鑑賞前のあまり良くないほうの予感は当たってたけれどw
なんだかんだで面白かったので良し!

オタクキャラは寄せるのが割と簡単とはいえ、
肝田のノリが原作まんまで腹がよじれたw

みんな結構な歳の役者に高校生役をやらせてるけれど、
それが逆に功を奏して「リアル」ではない「演技」に対する
理解と真摯さがうかがえて良かった!!





開始5分で原作を知らない観客にも設定をバッチリ説明できてるし
たたみかけるようなボケツッコミや
リアルさよりも爽快感に大きく振ったアクションシーンが満載で
まさに漫画を読んでいるようなスピード感。


前半はゲイである伊達とのロマンスや
モテまくりの瀬名がEDに悩まされているエピソードといった
原作のオイシイところを詰め込んで
お気楽ヤンキー物としての完成度が抜群。


そして後半はガチでヤバい半グレ天王会とのトラブルに巻き込まれていく。
終盤における派手なバトルの連続は実にメリハリが効いていて見応えがあった!!





最後まで駆け抜けるような勢いとバカバカしさにあふれ、
ずっとアドレナリンを分泌しながら楽しめた。

こんなにしっかり原作の良さを再現できるなんて
この監督ものすごく優秀だな。
浦安鉄筋家族のドラマの監督もやってたのか。あれも本当に良かったわ。

自分も少年チャンピオンを数十年にわたり愛してるが
愛を作品に昇華できる人は本当に偉大で心から尊敬している。
今後も良い実写化に期待!!




ちなみに観客は若い女性がほとんどで非常に居心地が悪かった!!
ヤンキー物が好きそうなその筋の人は一人もいないし
原作のファンっぽいオタクも自分だけ。
結局みんな岸くんを見るために来てたってことなのかな。
なんだかんだでジャニーズ強ぇわ……。

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感想:名探偵ポアロ ベネチアの亡霊

2023-09-18 11:20:41 | 映画





1年前に愛する娘を亡くしたドレイク夫人が
ハロウィンのパーティで霊媒師を呼んで娘の降霊会を開く。
そこで起こった奇妙な出来事の数々を暴くべく
ポアロは灰色の脳細胞を駆使するが真相は見えてこない。
そして降霊会が終わったあとの深夜、霊媒師の死体が発見される。





ケネス・ブラナーの足の長いイケおじポアロ3作目!!

といっても2作目は見逃してしまったのでずいぶん久しぶり。

歳を取ったら海外古典ミステリを積極的に読む気力がどうしても起きなくて
映画化でこういう作品に触れる機会ができるのはありがたい。




ベネチアの河の上に立つ屋敷が舞台で
ゴンドラボートに乗らないと出入りができない。
事件の起こる日は強い嵐のため、全員が屋敷に閉じ込められてしまう。


1年前の娘の死が事故だったのか殺人だったのか。
ポアロの捜査によって降霊会に呼ばれた客たちと
1年前の事件との関わりが少しずつ見えてきて観る側の気分も上がる。



亡霊というオカルトがテーマだけあって、作品全編がホラーテイスト。

霊を一切信じることのないポアロが屋敷で体験するいくつもの怪奇現象は、
まんまホラー映画の手法が使われていてビビらされまくり。

個人的には「どこかから聴こえる子供の歌」の正体がずっと気になっていたので
それが明かされたときは一本取られたと思った。
まさに映画としての演出の勝利。



ネタバレを避けると何も書けなくなってしまうが、
「この謎の答えは?」「この謎の答えは?」と
ひとつずつに対して説明が欲しかったのに
一括で答えを出されてしまったのが残念だった点。



そんなわけで。
ミステリ作品としてはけっこう正道から外れている感じだったけれど。

クライマックスの華麗な推理と、意外な事件の真相。
登場人物それぞれの役回りと事件後に歩む人生も含めて
非常に綺麗にまとまって、気持ち良く鑑賞を終えることができた。


まさにクリスティ作品のいいところをまるっとくり抜いた脚本。
たまにはこういう地味だけど骨太な映画も補給しないとな!!

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感想:ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

2023-05-20 08:03:50 | 映画





観てきました!!

自分はファミコン世代のおっさんなので
例に漏れず初めてスーパーマリオを遊んだ時の衝撃はすごかった。

カメがゆっくり歩いてくる。
ジャンプして踏むと頭と足を引っ込める。
蹴ると他の敵を蹴散らしながら高速で滑っていく。
土管に当たると跳ね返る。
それにぶつかると自分も死ぬ。

これを面白いと思わない子供がはたして世界に存在するのだろうか。


カートゥーンをゲームでやろうというのが発想の原点なのだろうけれど
それを最初からとんでもないレベルのクオリティで実現させたのが
まさに天才宮本茂の仕事。


そんなわけで当時公開されたスーパーマリオのアニメ映画を
大変ワクワクしながら観に行ったのだが
スポンサーが永谷園だったこともあり、
マリオが映画のなかでお茶漬けを食ったりカップラーメンを食ったりという
地獄のような内容で夢を粉々に砕かれた。


実写版映画に至ってはテレビの予告CMを見ただけで
全身の水分が抜けてシワシワにならざるを得ない出来。
あれをよく任天堂が許したな。





そこから数十年を経て今回の映画。
文句なしに面白かった!!


スーパーじゃないマリオの配管工としての普段の生活が見れたのも嬉しいし
マリオの実家のピザ屋にパンチアウトのキャラたちの写真が飾ってあって
その時点でオールドゲーマーの心を鷲掴みw

BGMも歴代のマリオシリーズ曲のアレンジがめっちゃ胸に染みた。
歳をとるとゲーム音楽が自分の人生経験と重なって泣けてくる!!




さらわれたルイージを救うために一緒に戦う
ピーチ姫のキャラデザが凛々しく活動的な感じなのが
今の時代に求められる女性像なのも上手い。

予告編で見たリトルマーメイドのアリエルがブサイクになっていたが
そうじゃねえんだよなあ。
ディズニーはアーノルド坊やの時代からやり直せ。





サイドビューのステージもド派手なマリオカートのステージも
ゲームのとおりに盛り込みながらも、よりダイナミックな演出で最高。
ゲームの時点で面白いのだから、そのまま見せるだけでも当然面白いのに
そこからさらに進歩させた映像演出の気持ち良さが桁違い。

ゲームそのままの画面を映画に組み込むのって相当な勇気が必要なはずなんだが
やはりファンの視点に立って、見たいと思うものをしっかり見せてくる。
この判断力たるや!!




操作によって成功と失敗が分かれるゲームと違って
一本道の映画ではミスの場面を取り入れるのが難しい。
けれどマリオシリーズはミスしたときのコミカルさも面白さのひとつ。

そこでこの映画が取った手法は、「序盤の特訓でとことんミスをさせる」。
ボニータイラーの曲にあわせて特訓するシーンを盛り込んで
マリオシリーズならではの様々なミスの場面を見せながら
普通のおっさんだったマリオがスーパーマリオとしての覚醒を見せる。
マリオの人間らしさとヒーローとしての強さをともに描写できる神演出。
この予想を裏切り期待を裏切らない発想に脱帽。




いつもどおり、ラスボスのクッパも悪いやつなのに憎めない。
ピーチ姫に片恋慕しながらメランコリックにピアノを弾くシーンが最高w

にもかかわらず、当然ながらゲームのとおりに悪くて強い。
クッパの強大さを表現しながらも、ひるむことなく一直線に突き進むヒロイズム!!

ネタバレは避けるがラストの展開も最高にワクワクさせられた。




子供の頃に砕かれた夢を数十年越しに取り戻せた!!

ファンが見たいと思うものを全て見せてくれた神作品!!!
世界的ヒットのおかげで株価も爆上げ!!
次の映画も楽しみだ!!!!




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