アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎
2003年作品
【絶対に読みたい】おすすめ面白ミステリー小説 20選【日本・最高傑作ランキング(自薦)】
↑からのチョイス3冊目。
同じ伊坂原作の映画「グラスホッパー」面白かったです。
大学進学のためにアパートに引っ越してきた椎名は
唐突に知り合った隣人・河崎にそそのかされ
わけもわからないうちに本屋強盗の片棒をかつぐことに。
狙ったものは広辞苑一冊。
強盗は首尾良く成功し、罪悪感を抱えつつも
いつしか日常へと戻っていく。
それと交互に語られるのが二年前に遡っての
琴美とその彼氏であるブータン人ドルジの視点。
世間を騒がせるペット殺しの犯人である若者グループを突き止めるが、
身元がバレたことにより逆に危険に晒されてしまう。
理知的で正義感の強い琴美。
全ての女性にリスペクトを持つ河崎。
泰然自若の純朴さと実直さを備えたドルジ。
三者三様の思想が気高くて美しく
特にブータンという日本人には馴染みのない国の
思想と宗教観を持ち込むことで
エキセントリックに作品全体が引き締まっている。
こんなに頭が良くて世の中に達観しきった若者どもがいるか!!
と思わんでもないけどw
「頭のいい人間」を誤魔化し抜きできっちり創れる作家は
やっぱ憧れますわ。
作品の後半に、椎名に対しての
「君は、彼らの物語に飛び入り参加している」
という台詞が出てくる。
強盗という犯罪に巻き込まれたにもかかわらず
椎名はあくまでストーリーの見届け人で
琴美、河崎、ドルジの3人を軸とした物語。
話の先が気になって熱心に読みすすめたせいで
基本的なトリックを見落としていた。
本来ならばミステリ読みとして致命的なレベルのミス。
しかし、それを抜きにしても非常に面白いストーリーだった。
この一冊だけでも瀟洒でスタイリッシュで洋楽かぶれな
伊坂の作風が充分に理解できた。
美男美女主演でたくさん映画化されてるのも納得の作品群。
誰でも気持ちよく読める小説を書ける能力ってのはやはり重要。
もう何冊か読んでみたくなったので近いうちに買い込む予定。
さて。
冒頭のサイトの推理小説一覧なのだけれど
自分が過去に読んだ『ロートレック荘』『十角館』『葉桜の季節』
が入っている時点で気づくべきだったが
特定の共通項があるんだよな…。
この一覧をもとに読んだ3冊はすべて素晴らしい作品だったけれど
「推理小説」の「最高傑作」として連ねたくはないので
感想は今回で打ち止め。好きな作品を読むスタイルに戻ります。